46.尿酸とは
「日本人に痛風なし」といわれたのは明治時代。現在、痛風の患者数は50〜60万人、予備軍の高尿酸血症は数百万人ものぼります。その現状を、東京慈恵会医科大学の細谷龍男教授に聞きました。まず、尿酸とはどんなものですか
「私たちの体は60兆個もの細胞から構成され、細胞の核には“核酸”という成分があります。この核酸は、細胞が新陳代謝を繰り返したり、エネルギーを使ったりしたときに、“プリン体”へと分解され、最終的にはこれ以上分解されない老廃物“尿酸”として尿中に排泄されています。また、プリン体は食べ物からも体に取り入れられ、同様に尿酸に分解されています」
高尿酸血症とは、どんな状態ですか
「健康な人の場合、体内の尿酸の量はほぼ一定で、毎日半分が作られては排泄され、バランスをとっています。ところが、食べ物からの量が多くて尿酸が作られ過ぎたり、腎臓の機能が落ちて排泄される量が少なくなったりすると、体の中にたまります。体にたまる量が多くなればなるほど血液中に増え、その値が7mg/dL以上になった状態を高尿酸血症といいます」
なぜ患者数が増えたのですか
「高尿酸血症には3種類あり、食事からのプリン体が多く、尿酸が作られ過ぎる“尿酸産生過剰型”、腎臓の尿酸排泄能力が弱くなった“尿酸排泄低下型”。そして2つを合わせた“混合型”が増えています。プリン体の多いレバーや白子などを食べ過ぎたり、日常的な過食で尿酸が増え、その分の排泄が間に合わないタイプです」
患者の95%以上が男性で、若年化が進んでいるということですが…
「40年前は“ぜいたく病”といわれ、50代の美食家に多かったのですが、今のピークは30代。若いころからおいしい物を食べ、社会人になれば毎日お酒を飲み、運動不足、肥満が重なると、20代からでも発症します。放っておくと痛風になるので、早目に尿酸値を下げることが重要です」
男性だけの病気ですか
「女性ホルモンに尿酸排泄作用があるので、閉経前の女性は尿酸値が低く、高尿酸血症になりにくいといえます。ただ最近、若い女性がむくみや肥満を気にして利尿剤ややせ薬を飲み、尿酸の排泄が悪くなっていることがあります。高尿酸血症の原因になるので、気をつけてください」
2004年03月 公開
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