31.危険因子
「狭心症」と「心筋梗塞」、いわゆる虚血性心疾患の原因とその危険因子について、国立循環器病センターの宮武邦夫副院長に聞きました。まず、虚血性心疾患の原因を教えてください
「まだ、完全にはわかっていませんが、冠状動脈の動脈硬化が原因だと考えられています。血管の内皮にコレステロールなどがたまって動脈硬化になり、狭くなって虚血が起こると狭心症になります。また、動脈硬化の内皮細胞が何らかの原因で傷ついて破れると、血の塊(血栓)を作って、破れを修復しようとします。ところが、その血栓が大きすぎて、冠状動脈を完全に塞いでしまうと、急性心筋梗塞を起こすのです」
その危険因子は?
「高血圧、高脂血症、喫煙が3大危険因子といわれています。高血圧は、細い動脈だけでなく、太い動脈の硬化も進める重大な危険因子。特に収縮期血圧が140(mmHg)以上、拡張期血圧が90以上だと心臓病になりやすく、血圧が高いほどそのリスクは増えます。そして高脂血症は、総コレステロール値が220(mg/dl )以上、悪玉のLDLコレステロール値が140以上、善玉のHDLコレステロール値が40以下の場合は、動脈硬化を促し、狭心症や心筋梗塞のリスクが増えます」
たばこの影響は?
「1日20本以上の喫煙者では、虚血性心疾患の発症が50〜60%も高くなります。たばこが悪いのは、ほかの危険因子にも影響をもたらす点で、血圧を上げる、悪玉のLDLコレステロールを増やす、善玉のHDLコレステロールを減らすなどが挙げられます。さらに、ニコチンによって交感神経系ホルモンのカテコールアミンの分泌が増加し、内皮細胞がダメージを受け、血管が収縮したり、血液を固まらせ、冠状動脈を塞ぐ原因にもなります。喫煙は本人ばかりか、周りで煙を吸わされる『受動喫煙者』にも健康被害を与えていることを忘れないでください。これらのリスクも禁煙すれば減少するので、1日も早い禁煙を勧めます」
ほかにも危険因子はありますか?
「糖尿病と肥満です。どちらも高血圧や高脂血症を起こしやすく、糖尿病予備軍でも同じなので気をつけましょう。また、危険因子は相互に関係し、増えれば雪ダルマ式にリスクが高まります。逆に一つでも減らせばよい影響も広がるので、できるだけ減らすように心掛けてください」
2003年11月 公開
※記事内容、肩書、所属等は公開当時のものです。ご留意ください。