日本生活習慣病予防協会 JPALD
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生活習慣病

肥満症/メタボリックシンドローム

どんな病気?

 肥満症とメタボリックシンドロームは、どちらも肥満、とくに内臓脂肪蓄積のために起こる病気なので、重なり合う部分が多いのですが、少し異なります。まずは両者の共通点である「肥満」について解説しましょう。

 肥満とは、からだに余分な脂肪がついている状態を指します。医学的には「BMI」という尺度を使い、肥満かどうかを判定します。そのBMIは、体重(kg)を、メートルで表した身長で2回割り算して計算します。この答が18.5以上25未満になれば普通体重、18.5未満なら低体重(やせ過ぎ)で、25以上の場合が肥満です。例えば、身長160cmで体重65kgの人を例にとると、65÷1.6÷1.6=25.39。この人はBMIが25.4なので、肥満に該当します。

 さて、それでは「肥満症」「メタボリックシンドローム」とはどういう病気かという話に進めます。

●肥満症

 肥満症は、肥満に該当する状態(BMIが25以上)で、その結果、肥満に起因するあるいは関連する健康障害を有する状態を指します。健康障害の主なものは以下の11の障害で、減量を要するとされています。

肥満症の診断に必要な健康障害
1) 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)、2) 脂質異常症、3) 高血圧、4) 高尿酸血症・痛風、5) 冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)、6) 脳梗塞・一過性脳虚血発作、7) 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、8) 月経異常・女性不妊、9) 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(SAS)・肥満低喚起症候群、10) 運動器疾患〔変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節・変形性脊椎症、11) 肥満関連腎臓病(「肥満症診療ガイドライン2022」より)

●メタボリックシンドローム

 近年注目されているのは、腹腔内の腸周囲に脂肪が過剰に蓄積する内臓脂肪型肥満です。たとえBMIが高くなくても、内臓脂肪から多くの種類の悪玉の生理活性物質が多量に分泌されることで、高血圧、糖尿病などが生じます。内臓脂肪型肥満とは、へその高さでの腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上の場合です。内臓脂肪型肥満に高血圧や脂質異常、高血糖などが合併した状態を「メタボリックシンドローム」と言います。

 メタボリックシンドロームでは、心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわる動脈硬化性疾患を引き起こすリスクが高くなります。動脈硬化の予防を目的として、特にリスクの高い人を絞り込む目的でつくられた疾患の概念がメタボリックシンドロームです。具体的には、BMIが低くとも内臓脂肪型肥満に該当し、かつ、血圧や血糖値、血中脂質という'軽度'の異常が二つ以上重なっていると、メタボリックシンドロームと診断されます。

 異常の程度が'軽度'でも診断する理由は、軽度であっても異常が複数重なると動脈硬化の進行が相乗的に速くなってしまうためです。肥満症では、メタボリックシンドローム関連疾患に加えて、体重そのものが体に負担のかかる結果生じる変形性関節症などが生じます。つまり、肥満症もメタボリックシンドロームも医学的には疾患(病気)に該当します。つまり、単に'太っている'では済まされずに、治療が必要な状態です。

●発見・診断の検査
 検査項目解説
スクリーニング身長、体重、腹囲(へそ周り)。血圧、血糖検査、脂質検査 肥満の程度を判定するBMI算出として身長、体重。内臓脂肪蓄積程度の判定として腹囲(メタボリックシンドロームの有無に必要)
詳しい検査CT検査による内臓脂肪面積。脂肪肝(腹部超音波検査)、高尿酸血症(血清尿酸)、冠動脈疾患(心電図)など内臓脂肪の蓄積をより正確に評価する(11種類の肥満症の同定)

検査はかかりつけ医で実施できます。そのほか、定期健康診断(職域)、特定健康診査、人間ドックでも行われます。

数字で見る肥満症/メタボリックシンドローム

肥満症/メタボリックシンドロームの予防と治療

 肥満症やメタボリックシンドロームの予防や治療は、肥満を解消すること、つまり減量が基本です。それには、寝る前に食べない、食事はよく噛んでゆっくり食べる、菓子の間食やアルコール飲料を控える、よくからだを動かす、といった、どれも当たり前のように思えることを、実直に実践することがカギを握ります。

 また、肥満の解消と並行して、肥満による健康への悪影響(前記した病気)なくすための治療も必要です。具体的には、肥満でかつ血糖値が高いという状態では、減量が成功すると血糖値も下がることが多いのですが、血糖値が十分に下がらない場合にはそれを下げる治療を行います。

 なお、高度肥満の場合には、超低エネルギー食療法、胃の内部を狭くする手術(肥満の外科療法)や、食欲抑制剤などによる抗肥満薬療法(医師の処方による)で治療する場合もあります。

関連する生活習慣病

の数が多いほど関連が強いことを意味します。

★★★
脂質異常症(高脂血症)脂肪肝/NAFLD/NASH変形性関節症、睡眠時無呼吸症候群(SAS)
これらの病気の主要な危険因子が肥満症/メタボリックシンドロームです。
★★☆
肥満症/メタボリックシンドロームの人には、これらの病気を合併していることが多くみられます。
★☆☆
月経異常、妊娠合併症
女性の肥満症/メタボリックシンドロームは、月経異常や妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などの妊娠合併症の危険因子です。
★☆☆
肥満症/メタボリックシンドロームに対処せずにいると、これらの病気になる危険性が高まります

さらに詳しく

メタボリックシンドローム撲滅運動 協賛連載

2015年12月 公開
2024年10月 更新

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「肥満症/メタボリックシンドローム」の調査・統計

2024年12月02日
野菜摂取量の平均値は、256.0g(男性262.2g、女性250.6g)。野菜摂取量は有意に減少 令和5年(2023)「国民健康・栄養調査」結果より
2024年12月02日
糖尿病が強く疑われる人は、男性16.8%、女性8.9% 令和5年(2023) 「国民健康・栄養調査」の結果より
2024年12月02日
肥満の人は、男性31.5%、女性21.1%。やせの人は、男性4.4%、女性12.0%(20歳代女性20.2%) 令和5年(2023)「国民健康・栄養調査」の結果より
2024年10月16日
特定健診(40~74歳)受診者約3,017万人のうち、メタボリックシンドローム該当者は16.6%(男性13.3%、女性3.2%)、予備群該当者は、12.3%(男性 9.7%、女性2.6%)  令和4年(2022)「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」の結果より
2024年10月15日
メタボリックシンドロームが強く疑われる人は、男性 4.3%、女性11.3%。予備群の人は、男性 4.3%、女性11.3% 令和1年(2019)「国民健康・栄養調査」の結果より
2024年09月06日
肥満の人は、男性 31.7%、女性21.0%。やせの人は、男性 4.3%、女性11.3%(20 歳代女性19.1%) 令和4年(2022)「国民健康・栄養調査」の結果より
2023年06月01日
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2020年12月14日
「糖尿病が強く疑われる人」の割合は男性 19.7%、女性 10.8% 令和1年(2019)「国民健康・栄養調査」より
2020年12月14日
肥満の人は男性 33.0%、女性 22.3%。やせの人は男性 3.9%、女性11.5%(20 歳代女性20.7%)。65 歳以上の低栄養の人は男性 12.4%、女性 20.7% 令和1年(2019)「国民健康・栄養調査」より
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