日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
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生活習慣病

ロコモティブシンドローム/サルコペニア/フレイル

どんな病気?

●ロコモティブシンドローム
 ロコモティブシンドロームとは、「運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態」と定義されます。ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ、和名:運動器症候群)という概念は2007年に日本整形外科学会により提唱されました。

 ロコモは筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、「立つ」「歩く」といった自分一人で移動することに何かしら支障が起きている状態のことです。片脚立ちで靴下を履けない、家の中でつまずくことがある、階段を上るのに手すりが必要、などが当てはまる場合はロコモの可能性があり、そのままでは将来的に介護の必要性が高くなることが予想されます。なお、骨粗鬆症もロコモが関係している病気です。

 ただし、ロコモティブシンドロームは、主に日本国内で使われる用語です。

●サルコペニア

 サルコペニアという単語は、ギリシャ語で筋肉を表す「sarco(サルコ)」と喪失を表す「penia(ぺニア)」からの造語です。日本語では「筋肉減弱症」と訳されることもあります。サルコペニアは、1989 年に提唱され、その後、2010年にヨーロッパの研究チームによって、「筋肉量と筋力の減少に特徴づけられる症候群で、身体機能障害、QOL低下、死亡リスクを伴う」と定義されました。

 サルコペニアとは、加齢や疾患により筋肉量が減少し、全身の筋力低下および身体機能の低下が生じる状態です。食事の量やバランスが悪くて栄養が十分でないことや、からだを動かさずに運動量が少ない生活習慣などを背景として筋肉の量が減り、そのためにさらに運動量が減るという悪循環の結果、サルコペニアはより進行してしまいます。

 サルコペニアは、ロコモと同様に、将来的に介護が必要になる可能性が高くなります。痩せている人が該当することが多いのですが、太っていれば安心というわけではありません。筋肉太りでなく、脂肪太り(運動量が少ない肥満の人に多い)場合は、太っているのにもかかわらずサルコペニアに当てはまることがあります。

●フレイル

 65歳以上が要介護になる原因の第3位は「高齢による衰弱」です。「高齢による衰弱」というのはあいまいな概念ですが、最近では、日本老年医学会より提唱された「フレイル」という用語がよく使われています。

 フレイルは、米国で用いられている「frailty」に由来しますが、日本老年医学会では、日本語訳として「虚弱」を使わずに、あえて「フレイル」という言葉を提唱しました。これは、「虚弱」という単語には、もう健康な状態には戻れない、というイメージを伴うためです。これに対して、frailty には、しかるべき介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が包含されています。

 すなわち、フレイルとは、加齢に伴って身体機能や予備能力が低下した状態であり、健康な状態と要介護となる状態の間に位置しています。したがって、フレイルの状態であれば、早期に適切な介入を行い、栄養状態や運動を改善することで、再び健康な高齢者の状態に戻ることができます。

●フレイルの多面的な側面
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 フレイルには、身体的側面、精神的側面、社会的側面の3つの側面があります。
初期の段階では、口腔機能の低下を指すオーラルフレイルという状態も注目されています。これらのフレイルの各側面は、互いに影響することから、フレイルの予防や改善には多面的な介入が必要です。また、身体的フレイルに関連した状態にサルコペニアがあり、フレイル対策による健康寿命の延伸には、サルコペニアの予防や改善が必要です。

●発見・診断の検査
 検査項目解説
スクリーニング 握力、歩行速度、BMI、下腿囲ロコモティブシンドロームは7つの自己チェックで行います。サルコペニアは左記の検査で診断します。
詳しい検査筋肉量 筋肉量は、二重エネルギーX 線吸収測定法(DXA)や生体インピーダンス解析(BIA)法により測定します。

65歳以上の高齢者で、歩行速度が1m/秒未満、もしくは握力が男性25kg未満、女性20kg未満である場合で、さらにBMI値が18.5未満、もしくは下腿囲が30cm未満の場合にサルコペニアと診断されます。
実施機関は保健所、かかりつけ医にご相談ください。

ロコモティブシンドローム/サルコペニア/フレイル

  • ロコモティブシンドロームの国内の推計患者数は、
    予備軍を含めて 4,700万人 詳しく見る ▶
  • 「要介護」になる原因の第3位は骨折・転倒、「要支援」になる原因の第1位は関節疾患、第2位は高齢による衰弱、
    第3位は転倒・骨折
    詳しく見る ▶
  • フレイルの有病率は、65歳以上の高齢者全体の約10%詳しく見る ▶
  • 65歳以上の高齢者の低栄養傾向の人は、
    男性12.2%、女性22.4% 詳しく見る ▶

ロコモティブシンドローム/サルコペニア/フレイルの
予防と治療

 ロコモティブシンドローム、サルコペニアや身体的フレイルの予防についてはほぼ同一です。食事の面では、十分なエネルギー摂取に加え、タンパク質の適切な摂取が必要です。予防には、体重1kg当たり1〜1.2gのタンパク質の摂取が推奨されています。改善のためには、1.2〜1.5gのタンパク質が必要とされています。

 タンパク質のもとはアミノ酸というもので、体で十分な量が合成できず食事からとらなくてはならない必須アミノ酸、その中でも筋肉の3〜4割を構成している分子鎖アミノ酸(BCAA)が必要となります。タンパク質とともにビタミンDの摂取も重要です。ビタミンDは、日光により皮膚でも生合成されますし、食事からも摂ることができます。一方、毎日確実にビタミンDを摂る方法として、市販のビタミンDサプリメントを上手に利用する、という選択肢もあります。

 身体活動・運動では、タンパク質合成を直接促進させるレジスタンス運動(「さらに詳しく」参照)と階段あるいは傾斜のある道の歩行が勧められます。なかでもスクワット(「さらに詳しく」参照)は家の中でもできるため、毎日行うことができる運動です。

関連する生活習慣病

の数が多いほど関連が強いことを意味します。

★★☆
骨粗鬆症は、ロコモティブシンドローム,サルコペニア,フレイルの原因疾患です。糖尿病は骨粗鬆症のリスクを高めます。

さらに詳しく

2019年11月 公開
2022年08月 更新

「ロコモティブシンドローム/サルコペニア/フレイル」の調査・統計

2024年12月02日
65歳以上の高齢者の低栄養傾向の人は、男性12.2%、女性22.4% 令和5年(2023)「国民健康・栄養調査」の結果より
2024年11月28日
フレイルの有病率は、65歳以上の高齢者全体の約10%
2024年11月28日
ロコモティブシンドロームの国内の推計患者数は、 予備軍を含めて 4,700万人
2024年11月26日
骨粗鬆症の推計患者数(40歳以上)は、1,590万人(男性410万人,女性1,180万人)
2024年10月10日
脂質異常症で治療を受けている総患者数は、401万人 令和2年(2020) 「患者調査の概況」より
2024年09月06日
65 歳以上の高齢者の低栄養傾向の人は、男性12.9%、女性22.0% 令和4年(2022)「国民健康・栄養調査」の結果より
2023年01月05日
最新の患者調査(厚生労働省)より、国民の健康状態について分析
2020年12月10日
通院者数の上位は、男性は高血圧症、糖尿病、歯の病気。女性は高血圧症、脂質異常症、目の病気 令和1年(2019)「国民生活基礎調査」より
2019年11月27日
骨の骨密度及び構造の障害の年間医療費は1,621億円 平成29年度(2017) 「国民医療費の概況」より
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