脳出血
どんな病気?
脳の発作、いわゆる「脳卒中」(脳血管疾患)は、血管が詰まるタイプの「脳梗塞」と、血管が破けて出血するタイプの「脳出血(以前は脳溢血と呼んでいました)」の二つに大別できます。かつて日本では脳卒中と言えば脳出血を指すほど脳出血が多数を占めていましたが、徐々に減ってきて今では脳梗塞のほうが多くなっています。
脳出血が減ったのは、高血圧の治療が普及したおかげです。高血圧は血管の壁に強い圧力がかかっている状態なので、当然、血管が破けやすくなるのです。
脳出血が起きると、急に頭痛や吐き気・嘔吐、左右片側の手足の麻痺などが現れます。麻痺は次第に進行し、それとともに意識が低下して昏睡に至ることもあります。
出血そのものは時間がたてば自然に止まるのですが、あふれた血液によって周囲の脳細胞が圧迫されたり、脳の内部の圧力(脳圧)が高くなるために出血箇所から離れた部分の脳にも血流低下などの影響が出ることがあります。こうした脳細胞のダメージにより、出血が止まった後にも麻痺などの後遺症が残ることが多く、最悪の場合には発作から回復せずに死亡に至ります。
なお、脳の内部の出血(脳内出血)のほかに、脳の外側を覆っているクモ膜と脳の間の隙間に出血が起きる「クモ膜下出血」も、脳卒中のタイプの一つです。
●発見・診断の検査検査項目 | 解説 | |
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スクリーニング | 脳CT検査、MR検査 | CTあるいはMRという装置を用いて脳出血の部位、範囲などを調べます。 |
詳しい検査 | 脳血管造影検査 | 破れた血管の部位や状況を調べます。 |
検査は神経内科、脳神経外科で行われます。
数字で見る脳出血
- 脳血管疾患で治療を受けている総患者数は、
174万2,000千人(脳出血20万1,000人) - 脳血管疾患の年間医療費は、1兆8,142億円
- 脳血管疾患による年間死亡者数は、10万7,481人
(脳出血3万3,483人) - 要介護になる原因の第2位、約2割が脳血管疾患
脳出血の予防と治療
病気には、その病気を発病しやすくする要因が明確なものと、そうでないものがあります。例えばアトピー性皮膚炎は発病に関係していると考えられる要素が数多くあり(食べ物やダニなどに対するアレルギー、皮膚のバリア機能の低下など)、その治療には、薬物療法、スキンケア、アレルゲンの除去、かゆみ対策など、さまざまなアプローチが求められます。
しかし脳出血の場合、「最大の危険因子が高血圧」ということがはっきりしています。ですからその予防には血圧管理が最重要事項となり、そのためには塩分摂取を控えること、一方で低コレステロール血症は発症リスクになりますので、肉、牛乳・乳製品、卵等をバランスよくとるように心がけましょう。
なお、血圧が短時間で急に高くなったときに発作が起きやすくなります。具体的には入浴時の脱衣(とくに冬から春)、トイレでのいきみ、飲酒、喫煙などが発作の引き金となります。寒い季節の入浴の前には、脱衣場と浴室を室温に近付けておくことが勧められます。また、湯船の温度は熱くならないにしましょう。そして長湯はさけましょう。また、便秘がちな人は薬局で薬剤師に相談するか、かかりつけの医師に事情を伝えて下剤を処方してもらうのも選択肢となります。
このような対策をしていても脳出血の発作が起きてしまった場合に大切なことは、ためらわずに救急車を呼ぶことです。発作の症状は、初めは軽くても時間とともに進行します。症状が軽いと救急車を呼ぶのがためらわれるかもしれませんが、1分1秒の差が命を左右することになりかねません。
発作の急性期を過ぎたら、リハビリテーションをスタートします。からだが自由にならず辛いこともいろいろでてきますが、希望を失わず、気長にリハビリを続けましょう。
関連する生活習慣病
★の数が多いほど関連が強いことを意味します。
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★★★
- 脳出血の最大の危険因子です。
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★★☆
- 脳出血とともに脳卒中(脳血管疾患)に含まれる病気です。
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★☆☆
- 脳出血の主要原因の一つです。
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2015年12月 公開
2019年11月 更新