孤立・孤独
人生の3大不安は、「病気」「孤独・孤立」「貧困」
人生の3大不安は、「病気」「孤独・孤立」「貧困」だと言われます。これらのうち「孤独・孤立」は身体的な病気ではありませんが、社会的な病的状態ともいえ、さまざまな病気の温床となり得ます。
人との繋がりと健康リスクとの関連を調べた数々の研究をまとめた報告によると、孤独・孤立はタバコの害悪に匹敵するくらいの健康リスクがあると見積もられています。孤独・孤立は、生活や生きがい、ストレスなどのプロセスの中で、最終的に健康や命に大きく関わってくることがかなり分かってきているのです1)。
65歳以上の日本人高齢者を対象に調査したところ、友人と月に1〜4回ほど会っている人は、ほとんど会わない人に比べて、血糖コントロールが不良となるリスクが半減するという報告もあります2)。このように孤立している人、家や仕事がなくて社会での役割が感じられない人ほど不健康になりやすく、その影響は、高血圧、アルコール依存症、うつ病、狭心症、糖尿病、認知症など多岐にわたります。
また、65 歳以上の要介護状態でない人たちが5年後に認知症にならない確率は、料理をしている人はしていない人の3.3 倍、趣味がある人はない人の2.2 倍、他人の相談にのる人は乗らない人の2.2 倍で、これらの影響は歩行を30 分以上した、または喫煙しないことによる影響がそれぞれ1.5倍であったのに比べて、より高い結果でした3)。
1) Julianne Holt-Lunstad, et al. PLoS Med. 2010; 7: e10003162) Kenichi Yokobayashi, et al. PLoS One. 2017; Jan 6; 12(1): e0169904
3) 竹田徳則, 他. 日本認知症予防学会誌. 2016; 4(1): 25-35
「孤独・孤立」の解消には“多接”
“多接”は、日本生活習慣病予防協会が提唱する健康スローガン「一無(禁煙)、二少(少食、少酒)、三多(多休、多動、多接)」のひとつです。
“多接”とは、多くの人、事柄、物に接して、創造的な生活を行うことです。
また、「孤独・孤立」は、「孤食」(一人だけの食事)になりがちで、とくに高齢者の場合は、かむ力や呑みこむ機能が低下しているため、やわらかい、食べやすいものばかりを食べる傾向がみられ、糖質過多による肥満や、たんぱく質不足による低栄養に陥りやすくなります。
「孤独・孤立」「孤食」による運動不足、ストレス、肥満や低栄養は、生活習慣病の原因となります。
たくさんの人と接する機会をもつこと、誰かと食事をする機会をもつことも重要です。ボランティアなどの社会活動に参加するのもよいでしょう。何か一つの物事を突き詰める趣味なども効果は期待できます。
生活範囲や交友関係が広がると、心身に刺激を与え活力の源となるような何かと出合うことがあります。そうした出合いを得るためには、好奇心をもってさまざまな物事や人と関わることが大切です。
孤独・孤立を解消するには、“多接”を心がけることが有効です。
数字で見る孤立・孤独
- 50歳代の男性のおよそ10人に2人、女性のおよそ10人に1人が未婚
- 65歳以上の男性のうち8人に1人,65歳以上の女性のうち5人に1人が一人暮らし
- 最も多い家族型は「一人暮らし」(32.6%)
- 習慣的に喫煙している者の割合、歯の本数が20歯未満と回答した者の割合など生活習慣等に関する状況が所得別に有意な差
さらに詳しく
- 一無、二少、三多で生活習慣病を予防
- 2017年 社会保障・人口問題基本調査-生活と支え合いに関する調査結果の概要(国立社会保障・人口問題研究所)
- 平成30年(2018)版高齢社会白書(全体版)ー 内閣府
- 平成28年(2016)国民生活基礎調査の概況
2019年11月 公開
2019年11月 更新