19.高脂血症と動脈硬化
高脂血症は動脈硬化につながる危険因子。その危険性について防衛医科大学校名誉教授の中村治雄医学博士に聞きました。高脂血症が怖いといわれるのは、なぜですか
「そのままにしておくと動脈硬化を進行させ、命を脅かすこともあるからです。悪玉LDLコレステロール(LDL−C)値140(mg/dl )以上、中性脂肪値150以上、HDL―コレステロール(HDL−C)値40未満の人は、動脈硬化が促進されるので特に注意が必要です」
動脈硬化とは、どんな状態ですか
「動脈は、心臓から全身に酸素や栄養などを送るとても重要な血管です。普通は、血液がスムーズに流れるように内壁は滑らかですが、コレステロールがたまって、酸化変性されると、厚く盛り上がった病巣ができ、血液の流れが悪くなります。これが動脈硬化です。これまでは病巣が大きくなって、血管内腔が狭くなり、血管が詰まると考えられていましたが、最近、血管が20―60%程度狭くなると、突然病巣が破れて出血し、血栓ができて詰まることが明らかになりました。特に危険なのは、心臓の冠状動脈で起こる心筋梗塞や狭心症、脳血管では脳梗塞。いずれも生命にかかわります」
では、どうすれば予防できますか
「動脈硬化はすでに10代から始まり、自覚症状がないまま静かに進行し、40代後半から症状が現れます。これには高脂血症のほか、さまざまな危険因子が関係して、その数が1、2、3、4、5個と増えると、冠動脈疾患のリスクが2、4、8、15、31倍といわれています。早い内に一つでも減らしていくことが必要です」
ほかの危険因子とは?
「(1)加齢(男性45歳以上、女性55歳以上)(2)高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90以上は要注意。血圧が高ければ高いほど、心臓病や脳卒中が多くなる)(3)糖尿病(単独でも、冠動脈疾患の発症率が2.6倍になる)(4)喫煙(20本で心臓病のリスクが50―60%増え、善玉HDL―Cの低下、悪玉LDL―Cの酸化変性が促進される)(5)家族の病歴(6)低HDL−C血症(7)肥満(中でも内臓脂肪型肥満は、高血圧、高脂血症、糖尿病を併発する)(8)高尿酸血症(9)運動不足(10)ストレス−などがあります。高脂血症とこれらの危険因子を少しでもなくして、動脈硬化の予防を心掛けてください」
2003年08月 公開
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