32.アルコールは毒? 薬?
たばこは虚血性心疾患の危険因子ですが、アルコールは飲み方しだいで、毒にも薬にもなるといわれています。その理由について、国立循環器病センターの宮武邦夫副院長に聞きました。アルコールは健康を害すると聞きますが…
「確かに、飲み過ぎはさまざまな障害を引き起こします。一般的に1日3合以上を長期間飲み続けると、血圧が上がって高血圧の原因や虚血性心疾患の危険因子になります。また、心臓の筋肉に障害が起こったり、不整脈を誘発し、心肥大や心不全になることもあります。しかもこれらのリスクは、飲酒量が増えるほど高くなります」
量が問題なのですね
「個人差はありますが、アルコールを少量、つまり1日30ml(日本酒1合、ビール大瓶1本)程度たしなむ人は、全く飲まない人より、心筋梗塞や狭心症など虚血性心疾患の発症率が低いことが報告されています。また、心臓や頸部、手足などの動脈硬化の程度も、飲む人の方が軽く、これは、アルコールによって善玉の HDL コレステロールが増えたり、血液が固まりにくくなって、血管が詰まる危険性が少なくなるからとされています」
アルコールの種類で、作用に違いはありますか
「種類にかかわらず虚血性心疾患の予防が認められていますが、赤ワインと心筋梗塞の関係が注目されています。フランスでは、肉や乳製品など動物性脂肪の摂取量が多いにもかかわらず、虚血性心疾患での死亡率が低く、“フレンチ・パラドックス”と呼ばれています。これには、赤ワインの消費量が多いことが影響し、特に赤ワイン中のポリフェノールが、血管内膜の障害を改善したり、酸化ストレスを防いで、動脈硬化を抑制しているのではと考えられています」
日本人の虚血性心疾患発症率は欧米の約5分の1ですが、食生活との関係は?
「日本茶にもポリフェノールの一種、カテキンが含まれています。私たちの研究でも、たばこで血管内皮の機能が低下している患者さんに、茶を飲んでもらったら、症状が改善しました。ほかにも、魚の EPA や DHA 、大豆製品の植物性タンパク質、野菜や海藻、きのこの食物繊維などを多くとれる日本型食生活がプラスに働いているのではないでしょうか。これらの摂取が少なかったり、肉食に偏っている人は、気をつけてください」
2003年11月 公開
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