30.狭心症と心筋梗塞
日本人の3大死因の一つ、心臓病。中でも生活習慣病といわれる『虚血性心疾患』が増えています。その症状について、国立循環器病センターの宮武邦夫副院長に聞きました。虚血性心疾患とは、どんな病気ですか
「心臓は24時間休みなく収縮と拡張を繰り返し、血液を循環し、酸素と栄養素を全身に送っています。心臓が働くためにも、酸素や栄養素が必要ですが、これらを運ぶ冠状動脈にコレステロールがたまって動脈硬化が進むと、内側が狭くなります。すると、心臓は酸素不足の“虚血”状態になり、虚血性心疾患といわれる、狭心症や心筋梗塞が起こります」
狭心症とは?
「冠状動脈が75〜90%ほど狭くなり、心臓に負担がかかると一時的な虚血が起こり、突然胸が痛くなる病気です。心臓への負担が減って、酸素が十分に送られれば、痛みは1〜5分、長くても15分以内には治まります。胸が痛むといっても心臓がある左胸ではなく前胸部の、いわゆるネクタイのあたりが、圧迫されるような、締め付けられるような感じで、胃から頸部、左肩が痛い、あごがだるいという人もいます。痛みの起こり方にはタイプがあり、走る、階段を登る、重い荷物を運ぶ時など心臓に負担がかかるときだけ起こるのが『労作性狭心症』。動いたときは平気で、夜中や明け方に床の中で痛む『安静時狭心症』。また、これらが進行した『不安定狭心症』は、ほんの軽い動きや安静時でも痛むうえ、発作回数も多くなり、心筋梗塞に移行しやすくなります」
では、心筋梗塞は?
「冠状動脈が動脈硬化や血栓で100%塞がって、長時間の虚血が続き、末梢の心筋の壊死や、場合によっては命を落とすこともあつ病気です。狭心症より強い痛みが15分以上、通常は数時間続き、冷や汗をかいたり、死の恐怖を感じるという人もいます。発作が起きて病院に到着するまでに約20〜30%もの人が亡くなりますが、専門病院に到着すれば死亡率が4〜10%に下がります。さらに3〜6時間以内の早期治療だと、障害が軽くて済みます。また、心筋梗塞を起こした人の2〜3割には、1日ほど前に、前触れの狭心症の痛みがあるので、この段階で治療できれば、心筋梗塞を防げます。胸が痛んだら、すぐ治まったからと安心せず、一刻も早く病院に行くように心掛けてください」
2003年11月 公開
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