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一次予防と二次予防に分け、一次予防は危険因子の数に応じて管理目標を設定 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」発行

カテゴリー: 脳梗塞

 日本動脈硬化学会はこのほど「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」を発表しました。5年前に発表した「動脈硬化性疾患診療ガイドライン2002年版」の内容を、国内外の臨床研究で得られた新たなエビデンスを取り込み、改訂したものです。

診断基準について
 診断基準の数値そものものは変更ありませんが、総コレステロール値は診断に用いないことになりました(表1)。これは、総コレステロールは善玉のHDLコレステロールも含んだ検査値なので、HDLコレステロールが多いために総コレステロールの値が高くなっている場合、(からだの健康にとってそれほど悪い状態ではないのにもかかららず)病気と診断してしまう可能性があるからです。

病名について
 そこで従来「高脂血症」と呼んでいた病態を、「脂質異常症」と呼ぶように提言しています。「高脂血症」だと、善玉のHDLコレステロールが少な過ぎる状態を指す「低HDLコレステロール血症」を含む病名としてはまぎらわしいためです。

治療目標と治療法について
 治療目標については、一次予防(心筋梗塞や狭心症などの動脈硬化性の病気を起こさないための治療)と二次予防(動脈硬化性の病気を再発させないための治療)に大きく二分し、一次予防についてはさらに、危険因子の数によって低リスク、中リスク、高リスクに三分したうえで、それぞれの管理目標が設定されています。

 管理目標値自体は、総コレステロールの項目がなくなった以外、従来のガイドラインと変わりありません(表2)。

 ただし、一次予防においては、まず、「生活習慣の改善を行ったあと、薬物治療の適応を考慮する」とし、食事療法や運動療法の重要性をしっかりとアピールしたかたちになりました。二次予防については、「生活習慣の改善とともに薬物療法を考慮する」ことを、治療方針の原則として掲げています。

脳梗塞の患者さんの場合
 脳梗塞も心筋梗塞や狭心症と同じように、血液が流れにくくなって起こる病気です。血液が流れにくくなる原因の大きな部分を動脈硬化が占めています。つまり、脳梗塞の患者さんは動脈硬化がある程度進行していて、心筋梗塞や狭心症が起きやすい状態と考えられます。このためガイドラインでは、脳梗塞の患者さんはほかの危険因子がなくても‘高リスク’に分類しています。その管理目標は、LDLコレステロールが120mg/dL未満、HDLコレステロールが40mg/dL以上、トリグリセライド(中性脂肪)が150mg/dL未満です。

表1 脂質異常症の診断基準(空腹時採血)
高LDLコレステロール血症LDLコレステロール140mg/dL以上
低HDLコレステロール血症HDLコレステロール40mg/dL未満
高トリグリセライド血症トリグリセライド150mg/dL以上
LDLコレステロール値は直接測定法を用いるかFriedwaldの式(LDLコレステロール=総コレステロール−トリグリセライド÷5)で計算します。
ただし、トリグリセライドが400mg/dL以上の場合は直接測定法でLDLコレステロール値を測定します。
なお、上記の診断基準は薬物療法の開始基準を表記しているのではなく、薬物療法の適応は他の危険因子も考慮して決められます。
〔日本動脈硬化学会「動脈硬化疾患予防ガイドライン2007年版」より、一部改変〕
表2 リスク別脂質仮目標値
治療方針
の原則
カテゴリー脂質管理目標値
(mg/dL)
 LDLコレステロール
以外の主要危険因子
LDL
コレステロール
HDL
コレステロール
トリグリセライド
一次予防
まず生活習慣の改善を行った後、薬物治療の適応を考慮する

低リスク群)
160未満40以上150未満
II
(中リスク群)
1〜2140未満
III
(高リスク群)
3以上120未満
二次予防
生活習慣の改善とともに薬物治療を考慮する
冠動脈疾患の既往100未満
LDLコレステロール以外の主要危険因子
 加齢(男性は45歳以上、女性は55歳以上)、高血圧、糖尿病(耐糖能異常を含む)、喫煙、冠動脈疾患の家族歴、低HDHコレステロール血症(40mg/dL未満)
糖尿病、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症があれば、カテゴリーIIIになります。
なお、脂質管理と同時に他の危険因子(喫煙、高血圧や糖尿病の治療など)を是正する必要があります。
〔日本動脈硬化学会「動脈硬化疾患予防ガイドライン2007年版」より、一部改変〕

●日本動脈硬化学会のホームページへ→トップページ

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