2015年11月25日
「メンタルヘルス」をスマホで改善 うつ病や統合失調症の治療効果も
カテゴリー: 三多(多動・多休・多接) ストレス関連疾患/適応障害

職場のメンタルヘルスを改善するためのスマートフォン向けアプリが増えているが、実際に効果がどれだけあるかは未知数だ。「臨床での有効性を報告したエビデンスは増えているが、効果を検証するためにより多くの科学的な研究が必要」との見解を英国の研究者が発表した。
メンタルヘルスを改善するアプリの効果は?
英国ではメンタルヘルスの改善を目的としたスマートフォン向けアプリはいくつか開発されており、中には英国の国民保健サービス(NHS)の承認を得たものもある。「本当に治療に有用であるかは、今後の研究で検証しなければ判断できない」と、リバプール大学のサイモン リー氏(医療経済学)は言う。
「精神医療に特化されたアプリに関するエビデンスは増えています。一方で、多くは作られてから時間が経っておらず、実際に利用れさた実績が少ないものもあります。パイロット研究と症例対照研究を行い、効果を検証する必要があります」と、リー氏は言う。
うつ病治療に用いられ注目が集まる「認知行動療法」
近年職場において問題になっている「うつ病」が働く人にとって辛いのは、休業や休職に結びつきやすいだけでなく、復職後も再発をすることが少なくないからだ。うつ病の治療では、症状を改善すると同時に、再発を予防するための対応も必要となる。
うつ病の発症には、体質や生活環境などの複合的要因に加え、患者が長年かけてつくってきた考え方や捉え方(認知)といった行動や思考のパターンも影響している。欧米を中心に広く行われている「認知行動療法」は、患者自身の行動や思考のパターンを再検討し、修正・改善していく治療法で、うつ病に対する有効性が示されている。
うつ病になったきっかけが仕事のプレッシャーなどである場合、職場での仕事や環境、周囲からの孤立などが負担となっていることが少なくない。認知行動療法では、患者が苦痛を感じているときに自動的に思い浮かぶ「自動思考」に目を向け、現実と食い違っている点を検証し、思考のバランスをとり問題解決を促す。こうした作業が効果を上げるためには、ホームワークを用いて日常生活の中で行うことが必要となる。
患者自身の「考え方・心と身体・行動をどう改善したらいいか」という思考を促すためには、専門スタッフの助けが必要だが、そうした治療環境を整備できないケースが少なくない。
うつ病を改善するスマートフォン向けアプリ

統合失調症による認知機能の低下を改善

脳トレーニングゲームの効果を確認
ケンブリッジ大学の研究チームが開発した脳トレーニングゲームは、難易度を細かく設定できるウィザード式のゲームだ。プレーヤーはゲームの中で、さまざまな部屋に入り、箱の中のアイテムを見つけて、アイテムの置き場所を覚えておくよう指示される。
「このゲームを体験した患者は記憶と脳機能を測るテスト中の誤答数が有意に減少した。現実世界でも通用するほど、回復していることが示唆された」と、ケンブリッジ大学精神科のバーバラ サハキアン教授は言う。
統合失調症の治療は、薬物療法と心理療法の組み合わせが主流ですが、これに効果的なゲームを加えることで、統合失調症をもつ人々が日常生活で病気の影響を最小限に抑えることができるようになることを願っています」と、サハキアン教授は言う。
Psychologists develop App to help people maintain their mental health(リバプール大学 2015年4月16日)'Brain training' app may improve memory and daily functioning in schizophrenia(ケンブリッジ大学 2015年8月3日)
(TERA)