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高尿酸血症と動脈硬化Part 2 高尿酸血症で血管の炎症が引き起こされる可能性を確認
~血管の細胞が死滅する様子を動画で見る~

キーワード: 高尿酸血症/痛風 協会・賛助会員関連ニュース

 高尿酸血症が血管の細胞を死滅させたり、直ちに死滅には至らないまでも、炎症反応が引き起こされることを示唆する研究結果が報告されました。動脈硬化のメカニズムの一端の解明に近づくとして注目されます。
 この研究は、鳥取大学医学部再生医療学部門の經遠智一助教と株式会社明治の研究グループによるもので、2022年12月7日~9日に開催された「第51回 日本免疫学会学術集会」で発表されました。
 同研究グループでは既に、尿酸塩結晶がヒト血管内皮細胞に取り込まれて細胞死を引き起こすことを報告しており、当協会のニュースでも取り上げています。
 今回の新たな研究からは、高尿酸血症の状態でたとえ細胞が生き残ったとしても、血管の細胞に炎症反応が生じてしまうことがわかりました。今回の記事では、株式会社明治のプレスリリースの情報を中心に紹介します。

高尿酸血症と動脈硬化
  ~高尿酸血症が動脈硬化を引き起こす機序が解明されてきた~

高尿酸結晶が動脈硬化を引き起こすメカニズムに迫る

 高尿酸血症は痛風の原因としてよく知られていますが、痛風だけでなく、動脈硬化や、メタボリックシンドローム、心臓病、腎臓病などといった多くの疾患との関連が報告されています。そのため、尿酸値を適切にコントロールすることは、日々の健康維持のために欠かせない重要なポイントであると考えられます。

 ただし、高尿酸血症が直接的に動脈硬化を引き起こすのかどうかという点は、長年、議論の的になってきました。高尿酸血症に伴うことの多い、メタボリックシンドロームが動脈硬化を引き起こしているのであって、高尿酸血症が直接的な影響ではないのではないかという指摘がなされています。

 それに対して今回の研究は、高尿酸血症が直接的に血管の細胞にダメージを与える可能性を示したものと言えます。

 今回の研究の成果は以下の2点にまとめられます。

1. 尿酸値が高い状態が続くと形成される尿酸塩結晶※1が血管の細胞内に取り込まれ、血管の細胞死が促進され得ることが示唆される。

2.尿酸値が高い状態で生きている血管細胞であっても、炎症に関わる遺伝子の発現量が増加し、炎症反応を引き起こす可能性が示唆される。

※1 尿酸塩結晶:血中の尿酸が高濃度になり溶けきれなかった一部が結晶化したもの

研究概要と結果

研究タイトル

Direct effects of monosodium urate crystal on human endothelial cells in hyperuricemia/高尿酸血症における尿酸塩結晶がヒト血管内皮細胞へもたらす直接的な影響

背景と目的

 血中尿酸値が7mg/dL(=70µg/mL)を超えた状態は高尿酸血症と呼ばれ、この状態が持続すると血中に溶けきれなかった尿酸が結晶化し、尿酸塩結晶として関節組織に沈着します。尿酸塩結晶がマクロファージ※2の食作用によって細胞内に取り込まれると、これが引き金となって炎症反応が起こり、痛風と呼ばれる激しい痛みをもたらします。高尿酸血症は他にも動脈硬化、メタボリックシンドロームなどのさまざまな疾患との関連が知られており、近年では尿酸塩結晶が血管にも沈着することが報告されています。

 本研究では、高尿酸血症によって生じる尿酸塩結晶が血管の細胞に及ぼす影響を評価しました。

※2 マクロファージ:白血球の一種で、体内に侵入した細菌等の異物を取り込み消化する作用をもつ細胞免疫機能の制御に重要な役割を有する。

方法

 ヒトの血管細胞の培養系に尿酸塩結晶を125µg/mLまたは500µg/mLの濃度で添加し、1~3日後の細胞の状態を観察しました。また尿酸塩結晶(125µg/mL)を添加して3日後、尿酸塩結晶を細胞内に取り込んだまま生きていると考えられる細胞を取り出し、遺伝子発現を網羅的に解析しました。

結果と考察

 血管細胞に尿酸塩結晶を500µg/mL添加し1日後に観察すると、細胞内部の状態変化(複雑さの上昇)が確認されました。これは細胞内に尿酸塩結晶が取り込まれた可能性を示唆しています。また、血管細胞の約30%が死滅することが示されました(図1)。

fig001.png  図1 血管の細胞への尿酸塩結晶添加時のフローサイトメーターによる解析結果
 (添加1日後)

 尿酸塩結晶を125µg/mL添加した場合では、細胞内部の状態が変化し、尿酸塩結晶を取り込んでいると考えられるものの、500µg/mL添加時に比べると3日後も多くの細胞が生きていました(図2)。

 しかし3日後に生きている細胞であっても、遺伝子発現を網羅的に解析したところ、非添加群に比べ、サイトカイン(特に炎症性サイトカイン※3)やケモカイン※4といった免疫・炎症に関連する遺伝子群の発現量が2倍以上に増加していました。これにより血管細胞での炎症反応が引き起こされる可能性が示唆されました。

※3 炎症性サイトカイン:炎症反応を促進する生理活性物質
※4 ケモカイン:免疫に深く関わる白血球の遊走(目的の場所に移動する)を促す生理活性物質

fig002.png 図 2 尿酸塩結晶添加時(125µg/mL)のフローサイトメーターによる解析結果(添加3日後)および網羅的な遺伝子発現変化の解析
結論

 本研究によって、高尿酸血症のために尿酸塩結晶が血管組織に沈着すると、「血管の細胞死を誘発し血管を損傷させる」、「細胞死を起こさないまでも、免疫や炎症に関わる遺伝子の発現量を増加させ、細胞の炎症反応を引き起こす」という2つの側面から血管に直接的な悪影響をもたらし得ることが示されました。

 なお、尿酸塩結晶を添加した際の血管の細胞の様子をタイムラプス動画※5として撮影した、細胞が次々に死滅していく様子の動画が紹介されています。

※5 タイムラプス動画:一定間隔で撮影した何枚もの静止画をつなぎ合わせ動画形式にしたもの

尿酸塩結晶(500 µg/mL)の添加によって血管の細胞が死滅していく様子

発表者のコメント

 高尿酸血症が病気を引き起こす原因物質は高濃度の可用性尿酸と尿酸が結晶化したもの(尿酸塩結晶)です。新しい技術の開発によって、関節以外にも尿酸塩結晶が蓄積される可能性があることがわかり、実験を始めましたが、新しい現象が見つかって驚いています。
 我々が見つけた現象は培養皿の中での現象で、今後まだ検証が必要です。しかし、尿酸の血中濃度にさらに気をつけなければならないことを示しているのかもしれません。

經遠智一 鳥取大学医学部 医学科 ゲノム再生医学講座 再生医療学部門

[mhlab]

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