2021年11月17日
全国生活習慣病予防月間2021講演会レポート【2】「休養でがん予防―その免疫学的根拠―」ー講演会動画は継続公開中!ー
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「休養でがん予防―その免疫学的根拠―」
山岸 久一 先生 京都府立医科大学名誉教授山岸 久一先生のご専門は、消化器外科。とくに、がんの免疫療法に関する研究で著名である。前京都府立医科大学学長。健康な人でも毎日おおよそ3,000〜5,000個の細胞ががん化するが、免疫細胞が排除するため増殖を抑制する。がん細胞と免疫細胞のバランスが崩れ、がん細胞の増殖が上回った時にがんは発症する。山岸先生は、がんを予防するには免疫細胞を増やすことが大切だと指摘する。
Part 1:「がん」と「免疫力」について
がんは、無限に増殖すること、周辺組織へ浸潤すること、そして遠隔転移という三つの特徴をもつ。がんは遺伝子の病気であり、がん増殖のアクセルとなるがん遺伝子と、がん増殖のブレーキとなるがん抑制遺伝子のせめぎあいの中でがんが発症する。
発がんの要因は、食生活が35%を占め、喫煙が30%とされており、その他に環境や化学物質などが関与する。それに対して、がんの予防につながる因子も明らかになっている。
がん予防につながる因子とは、禁煙、脂肪摂取制限、塩分制限、緑黄色野菜や果物、緑茶、運動、感染回避(肝炎ウイルス、パピローマウイルス、ピロリ菌)、節酒、熱い・刺激の強い飲食物を控える、紫外線回避、発癌性食品(古くなったもの、焦げた蛋白質など)を控える、免疫力をつけるといったことだ。
免疫力をつけるためには、ストレスを避ける、休養・睡眠、さらに、がん発症を予防するNK活性(がんを攻撃するナチュラルキラー細胞の働き)を高めるために、笑いや前向きな姿勢が大切であり、乳酸菌も腸管免疫の増強に働く。
Part 2:「免疫力」が「がん」予防につながる
がんは、たった1個のがん細胞から始まる。この新たに発生したがん細胞に対して、免疫細胞の攻撃が行われて排除されることで、がんの発病が防がれる。しかし攻撃に失敗した場合、がん細胞の増殖がスタートする。
免疫は、抗原に対して非特異的な自然免疫と、抗原に対し特異的な獲得免疫に大別される。NK細胞は自然免疫に該当し、がん細胞を攻撃・破壊する。がん細胞に対する傷害の強さをNK活性といい、NK活性の強い人では発がん率が低いことが明らかになっている。 そのNK活性を高める因子として、十分な休養やヨーグルトなどの発酵食品の摂取が挙げられる。
一方、獲得免疫として、樹状細胞、キラーT細胞などがある。これに対して、制御性T細胞(Treg)のような免疫のブレーキとして働いてしまう細胞も存在する。獲得免疫の働きを阻害するように働く免疫チェックポイントという存在も、約20年前に本庶佑先生によって明らかにされ、先生は2018年にノーベル賞を受賞された。
がん遺伝子の研究の立場から、休養による疲労回復、ストレス解消、そしてNK活性増強により免疫力を増加させることが、がんや多くの疾患の予防につながると言える。
<全国生活習慣病予防月間2021概要> ■共催 一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 公益財団法人 がん集学的治療研究財団 NPO法人 セルフメディケーション推進協議会 ■協賛株式会社タニタ、サラヤ株式会社、リボン食品株式会社、森永乳業株式会社、松谷化学工業株式会社、株式会社明治 ■後援 厚生労働省、公益財団法人 健康・体力づくり事業財団、健康日本21推進全国連絡協議会、公益財団法人 8020推進財団、公益財団法人 循環器病研究振興財団、公益社団法人 アルコール健康医学協会、公益財団法人 日本糖尿病財団、一般社団法人 動脈硬化予防啓発センター、一般社団法人 日本サルコペニア・フレイル学会、一般社団法人 日本肥満学会、一般社団法人 日本臨床内科医会、一般社団法人 日本肥満症予防協会、一般社団法人 日本くすり教育研究所、一般社団法人 日本産業保健師会、糖尿病治療研究会、日本健康運動研究所、特定非営利活動法人 日本人間ドック健診協会、九州ヘルスケア産業推進協議会 ■生活習慣病予防 お役立ちツール 2021のスローガンの川柳を使用したポスター、リーフレットは当協会サイト「生活習慣病予防 お役立ちツール」で自由にダウンロード可能です(2月1日より)。これまでのスローガンのポスター、リーフレットも本サイトより無料でダウンロード可能です(非営利目的限定)。ぜひ、ご活用ください。 ■一般社団法人日本生活習慣病予防協会とは 当協会は、生活習慣病の一次予防を中心に、その成因、診断、治療、リハビリテーションに関する知識の普及啓発、生活習慣病に関する調査研究を行うことにより国民の健康の増進に寄与することを目的に、2000年に設立され、2020年で設立20周年を迎えます。2012年より公益性を高めるため一般社団法人化。役員は、医師を中心に構成。