筝腓上f篋 ユ羇紫g篋峨篌 JPALD
羇紫g篋
筝祉羇紫g
最近の関連情報・ニュース

心血管腎臓病に克つために

キーワード: 糖尿病 CKD(慢性腎臓病) 動脈硬化 心筋梗塞/狭心症

腎機能低下に早期介入して心血管腎臓病を抑制する

 冒頭に述べたように、心血管病と腎臓病はともに生活習慣を起点として密接に関連しながら進行する。その過程において腎臓から出る初期のシグナルとしてアルブミン尿があり、古くからマーカーとして使われている。しかし本日の話題はそのアルブミンよりさらに早期のマーカーであるL型脂肪酸結合蛋白「L-FABPエルファブ」(Liver-type Fatty Acid-Binding Protein)である。

L-FABPはアルブミン尿よりも早く腎機能低下を捉えることが可能

 L-FABPは近位尿細管上皮細胞に存在している蛋白質で、腎尿細管に虚血や酸化ストレスが加わると発現が増強する。この点は腎臓の構造上の変化が生じバリア機能が破綻した結果として出てくるアルブミン尿との違いである。具体的なデータをいくつか紹介する。

 図3は同程度のアルブミン尿を呈している糖尿病性腎症と微小変化型ネフローゼ症候群を比較した結果だ。前者の予後は不良となりやすい一方、後者は急性期を過ぎれば後遺症なく寛解することが多いが、実際に組織障害スコアを比較すると前者が後者より有意に高い。そしてL-FABPも前者が有意に高値であり、尿中アルブミンの多寡では判断できない腎障害をL-FABPで判別可能であることがわかる。

図3 糖尿病性腎症と微小変化型ネフローゼ症候群での組織障害スコアと尿中L-FABPの比較

図3 糖尿病性腎症と微小変化型ネフローゼ症候群での組織障害スコアと尿中L-FABPの比較
〔聖マリアンナ医科大学雑誌 33:301-309,2005〕

 さらにL-FABPを用いることで腎機能正常の時点から予後を予測できることも明らかになっている。図4は尿アルブミン陰性の1型糖尿病患者をL-FABPで四分位に分け経過を追った結果だ。ベースライン時のL-FABPが高い群ほど腎症の新規発症リスクが高いことがわかる。

図4 尿中L-FABPと糖尿病性腎症の進行の関連

図4 尿中L-FABPと糖尿病性腎症の進行の関連
〔Diabetes Care 33:1320-1324,2010〕

AKIの早期診断や発症リスク、重症度判定にもL-FABPが有用

 CKDのみならず急性腎障害(AKI)の予測にもL-FABPが有用との報告が多い。例えば、心血管手術を受けた患者の腎機能マーカーを複数同時測定し経時的に比較してみると、L-FABPはNGAL(Neutrophil Gelatinase-Associated Lipocalin)やNAG(N-Acetyl-β-D-Glucosaminidase)などに比較し、術直後の早期から有意に上昇することが報告されている21)。また造影剤腎症によりAKIを来した群は造影剤投与後にL-FABPが上昇するのみならず、投与前の時点で既にAKI非発症群より有意にL-FABPが高いとの報告もみられる22)

 さらにAKIの予後についても、ICU入室後14日間の死亡率との関連を複数のマーカーで検討したところ、L-FABPのROC曲線下面積は最も高値であったことが報告されている(図5)。

図5 各種マーカーのAKI重症化予測能

図5 各種マーカーのAKI重症化予測能
ICU入室時の検査値と14日間での死亡率のROC解析
〔Crit Care Med 39:2464-2469,2011〕

脳心血管疾患の発症リスクもL-FABPで評価できる

 心血管腎臓病の観点からは腎機能との関連にとどまらず、脳心血管疾患との関連にも着目したい。

 2型糖尿病患者をL-FABPで三分位に分け、透析導入+心血管イベントを複合エンドポイントとして追跡した結果からは、やはりL-FABPが高い群ほどイベント発生率も有意に高いことが示されている23)。さらに同様の結果は糖尿病の有無に関わらず認められており24)、L-FABPが腎障害の原因疾患によらずに広く心血管腎臓病のリスクを把握可能であることがわかる。

ガイドライン上のL-FABPの位置づけと保険適用

 以上のエビデンスにより、L-FABPは既に各種疾患ガイドラインに取り上げられている。CKDにおいては有望なマーカーとして解説されており(表1)、AKIにおいては推奨レベルとエビデンスレベル も示されている(表2)。

表1 CKD診療ガイドラインにおけるL-FABP
1.CKDの診断と意義 CQ6 CKDのフォローアップに有用な尿中バイオマーカーは何か?

推 奨

CKDの予後の指標として、尿蛋白および尿中アルブミンのフォローアップを推奨する。その他の尿中バイオマーカーとしては、α1ミクログロブリン、β2ミクログロブリン、L-FABPが有望である可能性がある。

〔エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013.東京医学社,2013〕
表2 AKI診療ガイドラインにおけるL-FABP
5章 CQ5-1 AKIの早期診断として尿中バイオマーカーを用いるべきか?

推 奨

尿中NGAL、L-FABPはAKIの早期診断に有用な可能性があり測定することを提案する。尿中シスタチンCの有用性は限定的で明確な推奨はできない。

尿中NGAL、尿中L-FABP:
 推奨の強さ 2  エビデンスの強さ B
尿中シスタチンC:
 推奨の強さ なし  エビデンスの強さ C

〔AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016. 東京医学社,2016〕

 もちろん保険適応もあり先生方にすぐにお使いいただける状況だ。具体的に、CKDを念頭におく場合は腎機能が低下する前の早期診断やリスク評価に適用され、薬剤性腎障害や敗血症、多臓器不全などでAKIを疑う場合にも適用される(表3)。

表3 L-FABP診断薬の保険適用条件(中医協答申)
【測定内容】尿中のL-FABPの測定(尿細管機能障害を伴う腎疾患の診断の補助)
【主な対象】 eGFR≧60の、断続的に治療を受けている糖尿病患者、糸球体腎炎などの慢性腎臓病が疑われる患者
急性腎障害が確立されていない、薬剤性腎障害、敗血症または多臓器不全等の患者
【有用性】 腎機能が低下する以前の糖尿病患者に対して、本検査を行うことにより糖尿病性腎症の病期進行リスクを判別し、また治療効果の判定にも使用できる可能性がある。
急性腎障害が確立されていない、敗血症または多臓器不全等の患者対し、治療転帰を含めた重症化リスクを判別することで、血液浄化療法などの適応判断に利用可能性がある。
〔中医協(総-3)23.7.27〕

次は...
Discussion

(mhlab)

関連トピック

疾患 ▶ 糖尿病

2019年11月22日
妊娠中の長時間労働や夜勤が健康リスクに 全国の約10万人の女性を調査 エコチル調査
2019年11月22日
ナッツが肥満や糖尿病のリスクを低下 ジャンクフードをナッツに置き換える食事法
2019年11月22日
保健指導で「食べる順番」に重点をおいた食事指導をすると減量効果が大きい
2019年11月22日
肥満・メタボの増加の原因は小児・若年期にある ユニセフ「世界子供白書2019」
2019年11月12日
11月14日は「世界糖尿病デー」 糖尿病の半分以上は予防できる

疾患 ▶ 心筋梗塞/狭心症

2019年11月12日
魚を中心とした日本食は健康食 魚油のサプリメントについては賛否あり
2019年11月06日
ワカメなどの海藻を食べると心疾患リスクが低下 日本食の新たなメリットを解明
2019年10月17日
体重を3%減らすだけで肥満症を改善 肥満解消のための実践的取組み 【日本肥満症予防協会セミナー・レポート】
2019年09月05日
糖尿病の最新全国ランキング ベストは神奈川県 ワーストは青森県
2019年08月15日
「10月8日は、糖をはかる日」講演会2019 参加者募集開始!

疾患 ▶ CKD(慢性腎臓病)

2019年11月06日
食事の改善で「腎臓病」のリスクを減らせる 高血圧・糖尿病・肥満がCKDの要因
2019年10月17日
体重を3%減らすだけで肥満症を改善 肥満解消のための実践的取組み 【日本肥満症予防協会セミナー・レポート】
2019年10月02日
糖尿病の治療をしないと腎機能が低下 リスクは4年後に8倍超に上昇
2019年09月19日
厚労省が「食事摂取基準2020年版」の要点を公表 脂質異常症と高齢者のフレイルに対策
2019年08月15日
「10月8日は、糖をはかる日」講演会2019 参加者募集開始!

疾患 ▶ 動脈硬化

2019年11月06日
ワカメなどの海藻を食べると心疾患リスクが低下 日本食の新たなメリットを解明
2019年10月17日
体重を3%減らすだけで肥満症を改善 肥満解消のための実践的取組み 【日本肥満症予防協会セミナー・レポート】
2019年08月26日
「不飽和脂肪酸」が糖尿病リスクを打ち消す 悪玉コレステロールを低下
2019年08月15日
「10月8日は、糖をはかる日」講演会2019 参加者募集開始!
2019年08月15日
「10月8日は、糖をはかる日」2019年写真コンテスト作品募集開始!