2017年09月25日
急性心腎症候群の管理 〜虚血ストレスマーカー L-FABPの可能性〜
キーワード: 糖尿病 CKD(慢性腎臓病)
新規バイオマーカーを用いて、AKIを“aborted AKI”にできないか?
かつて、急性心筋梗塞を超早期に検出しCKが上がる前の治療をめざす“aborted AMI”という概念が提唱されたことがあるが、AKIについても何らかのバイオマーカーで検出し的確に介入すれば、血清クレアチニンを上昇させない予防的治療も可能であろう。いわば“aborted AKI”である(図2)。このような中、KDIGOのAKIガイドラインでは注目のマーカーの一つとしてL-FABPを取り上げている11)。
図2 バイオマーカーによる早期診断でAKIの‘abort’を目指す
L-FABPは、虚血や低灌流の影響を最も受けやすいとされる腎尿細管のストレスマーカーだ。東大の土井先生らの報告からは、数種のAKI新規バイオマーカーの中でL-FABPは比較的有用性が高いことが見てとれる(図3)。
〔Crit Care Med 39:2464-2469,2011〕
図3 ICU患者を対象とした各種バイオマーカーによるAKI診断能
L-FABPと他のマーカーとの違いが何かというと、β2MGやNAGなどのマーカーは尿細管“障害”マーカーであるのに対し、L-FABPは虚血や低灌流により発生する過酸化脂質を尿中に排泄する役目を担う“ストレス”マーカーであるという点である。つまり、尿細管障害が起きる前にL-FABPを下げるような治療を行えば、AKIをabortできるかもしれないわけだ。
幸い日本ではANP、カルペリチドという薬剤を使用できる。急性心不全に対するカルペリチドの有用性を評価した我々の検討からは、同薬が対照の硝酸薬に比し有意にL-FABPを抑制することが示された(図4)。また我々は心不全治療では使われるもののAKI領域では否定的に扱われているドパミンについて、腎臓に対しても保護的に作用する可能性があることを、L-FABPを用いた検討から報告している12)。
〔Circ J 71(Suppl 1):384-385,2007〕
図4 急性心不全に対するANP投与によるL-FABPの改善
(mhlab)