一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

直接レニン阻害薬の多面的効果 透析患者での血管内皮機能を改善

キーワード: 糖尿病 CKD(慢性腎臓病)

 血圧を規定するRAA(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン)系の上流にあたるレニン活性を直接的に阻害して降圧効果を発揮するアリスキレンは、抗炎症作用など降圧以外の作用により血管イベントを抑制する可能性が検討されている。このほど、血管イベント好発しやすい血液透析患者を対象とした検討で、同薬は降圧効果がマイルドであっても、有意な血管内皮機能改善と血小板活性抑制効果が得られるとのデータが、第57回日本透析医学会学術集会(6月22〜24日・札幌)で報告された。湘南鎌倉総合病院腎免疫血液内科・守矢英和氏らの発表。
アリスキレンの降圧以外の作用を、FMDとPDMPで評価
 守矢氏らはアリスキレンの降圧外作用の評価に、血管内皮機能の指標としてのFMD(Flow Mediated Dilation)と、血小板活性の指標としてのPDMP(Platelet Derived Micro Particles)を採用し、同薬の投与前後での変化を検討した。

 FMDは、上腕を圧迫し駆血し、その解除後に生じる血流増大の血管内壁へ与えるずり応力が、血管内皮細胞の一酸化窒素産生を増大させ血管径を拡張させる現象を、超音波で非侵襲的に計測する方法。計測結果は駆血解除後の最大血管径と駆血前値との差を、駆血前値で除した値を百分率で表し、低値であるほど血管内皮機能が低下していると判定される。

 PDMPは、血小板由来の膜小胞体(マイクロパーティクル)で、血小板が刺激を受けた際に活性化反応により遊離する血液凝固能促進物質。白血球と血管内皮細胞との接着物質としての働きもあり、血栓性疾患の新たなマーカーとして臨床応用が期待されている。高値であるほど血小板活性が亢進し、血管イベント易発生状態と判定される。

血圧は変化なくても、FMD・PDMPは有意に改善
 研究の対象は、同院の維持血液透析患者のうち、ドライウエイトを評価し適切に体重管理された状態で、透析前収縮期血圧が150mmHg以上の24名(男性12名、女性12名)。原疾患の内訳は、糖尿病腎症7名、慢性糸球体腎炎6名、多発性嚢胞腎4名、腎硬化症3名、ループス腎炎1名、その他・不明4名。年齢は66.6±11.4歳、透析歴88.3±81.5月、透析前収縮期血圧153.2±8.5mmHg、透析前拡張期血圧82.8±10.3mmHg、家庭早朝収縮期血圧151.4±9.7mmHg、週平均化血圧156.0±8.3mmHg、ヘモグロビン11.2±1.1g/dL。なお、投与開始時点で既にARBが24名中14名に、ACE阻害薬が2名に投与されていた。

 この対象にアリスキレン150mg/日を3カ月間投与。投与量は150mg/日に定め、検討期間中の3カ月間は増量や追加投与しないこととした。

    糖尿病患者で既にACE阻害薬またはARBを投与中の場合、アリスキレンの追加投与は原則禁忌。
 投与開始3カ月後の血圧を投与前と比較すると、透析前血圧、家庭血圧、週平均化血圧等いずれも低下傾向はみられたものの、有意な差は確認されなかった。

 一方、FMDは、投与前が2.54±1.45%、投与後が3.11±1.37%と有意な上昇が認められた(p<0.01)。またPDMPも、投与前13.9±5.85U/mL、投与後10.9±4.5U/mLで、有意な低下が認められた(p<0.01)。


 以上より守矢氏は、「アリスキレンは降圧効果のいかんに関わらずFMDやPDMPを改善し、血管内皮機能改善作用や動脈硬化性疾患抑制作用を有する可能性がある」とまとめた。


関連情報:
DPP-4阻害薬の変更による血管内皮機能改善の上乗せ効果
塩分の多い食事は、食直後から血管内皮機能(FMD)を低下させる
血管内皮機能は血糖変動と逆相関し鋭敏に変化する
大豆イソフラボンがTGを低下させ、FMDを改善
平成24年度診療報酬改定について(厚生労働省)
ミグリトールは冠動脈疾患併発糖尿病患者の血管内皮機能を改善する
FMD低値は糖尿病発症の予測因子。ドックなどでは精密検査を
肥満2型糖尿病では、精神的ストレス軽減が血管内皮機能改善につながる
網膜症のある女性糖尿病患者は血管内皮機能(FMD)低下ハイリスク
HDL-Cの血管内皮機能(FMD)保護作用は糖尿病で相殺される
仮面高血圧合併2型糖尿病では血管障害(FMDやPWV)が高度に進展
DPP-4阻害薬は血管内皮機能(FMD)を改善する
脳や心臓の血管が詰まる前に。血管の若返りがわかる検査指標「FMD<」/a>
動脈硬化が早期にわかるFMD検査装置
血管内皮機能、FMD検査のユネクス
一般向けサイト 動脈硬化の進展を知る「FMD検査.JP」

[mhlab]

関連トピック

疾患 ▶ 糖尿病

2023年10月20日
インスリン・フォー・ライフ(IFL)グローバル
最近の活動と取組みについて(アリシア・ジェンキンス代表)
2023年09月15日
2023年インスリン・フォー・ライフ(IFL)のウクライナ支援(IDAF)
2023年07月12日
日本人の自覚症状のトップは男女とも腰痛。高血圧、糖尿病、脂質異常症での通院が上昇!
~国民の健康、介護、貯蓄に関する「令和4年国民生活基礎調査」(厚労省)~
2023年05月30日
健康日本21で日本人はどのくらい健康になった?
~第二次最終報告書と年次推移を図解~
Part 1 メタボリックシンドローム、糖尿病、脳・心血管疾患の目標達成率
2022年11月18日
重要性を増す街中の「ゆびさきセルフ(検体)測定室」の役割! ~検体測定室連絡協議会「世界糖尿病デー・健康啓発セミナー2022」~

疾患 ▶ CKD(慢性腎臓病)

2019年11月28日
「10月8日は、糖をはかる日2019」講演会レポート & 血糖値アップダウン写真コンテスト優秀作品公開
2019年08月15日
「10月8日は、糖をはかる日」講演会2019 参加者募集開始!
2019年08月15日
「10月8日は、糖をはかる日」2019年写真コンテスト作品募集開始!
2019年06月28日
【PR】
尿酸値が気になる人へ!
尿酸値の上昇を抑える「PA-3乳酸菌」活用のススメ
2019年06月21日
高尿酸血症のリスクは痛風だけではなかった! 中高年だけでなく、若い世代から気をつけたい尿酸値
市民公開講演会参加者募集中!
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート