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「トイレが近い」の原因は塩分のとり過ぎかも 思い当たれば減塩を

キーワード: 高血圧 脂質異常症(高脂血症) 糖尿病 肥満症/メタボリックシンドローム 健診・保健指導 食生活

 トイレが近くなるのは歳のせいで仕方ない――とあきらめるのは早計かもしれない。塩分をとり過ぎるとトイレが近くなり、特に夜間にその影響が強く現れるという研究結果が、このほど発表された。糖尿病で高血糖のときに頻尿になることが古くからよく知られているが、どうやら頻尿の原因は「糖」だけでなく「塩」も関係するらしい。夜のトイレで睡眠が妨げられて困っているなら、試みに減塩生活を始めてみてはいかがだろうか。
同じ食品を食べても血糖値の上昇に大きな個人差

 国内で40歳以上の人を対象とした調査から、排尿の回数が1日に8回以上で尿意切迫感が週1回以上あるという過活動膀胱症状のある人が1,000万人以上いると推定されている。そのうち3〜4割の人が睡眠に影響があるとされていて、夜間のトイレに悩んでいる人は少なくない。

 一般に加齢とともに頻尿の原因が多くなることが知られており、それは仕方ないことと受け止められる傾向がある。しかし中には頻尿の背後に何かしらの病気(例えば泌尿器や腎臓の病気や糖尿病の高血糖状態)が隠れていたり、生活習慣に問題があってそれを改善すれば頻尿もなくなるケースも少なくない。

 今回の研究発表は、後者の生活習慣にかかわる原因の一つで、塩分をとり過ぎることが夜間頻尿の独立した危険因子であるという結論。第22回日本排尿機能学会(9月9〜11日・札幌)で、長崎大学病院泌尿器科の松尾朋博氏が発表した。

塩分摂取量が多いと、排尿回数・排尿量も多い

 研究の対象は、長崎大学病院とその関連施設の患者のうち研究の同意の得られた728名(排尿症状のある患者や重度合併症のある患者は除外)。主な背景は、男性229例、平均年齢62.6歳、高血圧49.3%、糖尿病8.1%、腎機能障害37.0%など。

 随時尿のナトリウム排泄量をクレアチニンで補正し、塩分摂取量を推計。その中央値9.21gを基準とし、塩分高摂取群(平均摂取量11.4g)と低摂取群(7.3g)に二分し、患者記載による排尿日誌の排尿回数・排尿量と比較検討した。

 すると、排尿回数・排尿量ともに昼間・夜間とも、塩分高摂取群が多かった。またCLSS※という症状のスコアが有意に高かったことから、排尿頻度に伴ってQOL(生活の質)が低下していることが示唆された。

※CLSS:主要下部尿路症状スコア(Core Lower Urinary Tract Symptom Score)。下部尿路症状の包括的な評価に用いられるわが国で開発された質問表で、排尿のトラブルの深刻さを客観的に評価できる。

塩分をとり過ぎることは、夜間頻尿の独立した危険因子

 次に、塩分摂取量の多寡による影響を昼間と夜間に別けて検討すると、夜間において塩分摂取量と排尿回数・排尿量の有意な相関が認められた(図1)。

図1 推定食塩摂取量と夜間排尿との関係
図1 推定食塩摂取量と夜間排尿との関係

多変量解析により夜間頻尿と関連する因子を調べると、年齢や腎機能障害、高血圧とともに、塩分摂取量が有意な因子として抽出された(表1)。

表1 夜間頻尿と関連因子
  単変量解析 多変量解析
オッズ比 95%CI P値 オッズ比 95%CI P値
食塩摂取量 3.52 2.58-4.80 <0.001 3.05 2.08-4.52 <0.001
年 齢 1.03 1.02-1.04 <0.001 0.99 0.97-1.00 0.104
性 別 1.96 1.41-2.73 <0.001 1.66 1.10-2.52 0.015
BMI* 1.05 1.01-1.09 0.010 1.03 0.99-1.08 0.100
腎機能障害 2.39 1.74-3.31 <0.001 2.66 1.73-4.13 <0.001
高血圧 11.3 7.93-16.2 <0.001 9.79 6.53-14.9 <0.001
糖尿病 1.36 0.79-2.40 0.272
高脂血症 0.97 0.66-1.45 0.895
*Body Mass Index

 塩分のとり過ぎが過除な水分摂取につながり、それが頻尿を招いた可能性がある。その他、高塩分の食事摂取そのものが交感神経バランスの乱れを介して頻尿を起すメカニズムが推察されている。

 塩分過多は高血圧の原因で、高血圧はメタボリックシンロームの重要な因子の一つだが、一方でメタボリックシンドロームは頻尿の原因の一つと考えられている。また、高塩分食は高血圧を介さない経路でも血管に悪影響を及ぼすという研究報告が増えている。今回の報告では比較的コントロール良好な患者が多かったため、糖尿病と夜間頻尿との関連は見出せなかったとのこと(表1)。しかしながら発症初期あるいはコントロール良好な糖尿病患者であっても、全身性の微小な血管障害は少なからず存在しており、全身合併症の進行抑制および予防面においても、適度な塩分制限は必須であると考えられている。

 塩分をとり過ぎる生活は、さまざまなメカニズムで健康を蝕み、QOLを低下させるようだ。夜のトイレが悩みのタネなら、明日から減塩に取り組むことが、意外な解決策になるかもしれない。

 なお、松尾氏のこの発表は、同学会において学会賞(臨床部門)を受賞した。

関連情報
長崎大学泌尿器科
日本排尿機能学会
[mhlab]

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