心筋梗塞
どんな病気?
日本人の死亡原因の第2位が心臓の病気なのですが、その多くが心筋梗塞と、心筋梗塞から起きる心臓の病気です。心筋梗塞は、発病が直接命にかかわる非常に怖い病気ですが、予防が有効です。
心筋梗塞は文字どおり、心臓に梗塞が起きる病気です。梗塞とは、ある部分で血液の流れが止まってしまい、必要な血液を得られない箇所の細胞が死んでしまうことです。
心臓は筋肉の塊のような臓器で、人が生きている間、絶えず収縮と拡張を繰り返し、全身に血液を送っています。ですから心臓の筋肉自体の細胞も、その活動のために多量の血液を必要としています。
心臓の筋肉に血液を供給している血管(冠動脈)に動脈硬化が起きていて、そこに血栓ができ血流が妨げられると、心臓の筋肉は途端に血液不足になります。そして激しい胸痛が起こります。これが心筋梗塞の発作です。心筋梗塞をはじめ心疾患で急変した場合は,不整脈が生じることがしばしばありますので、緊急通報して、すぐに救急車を呼んでください。心肺蘇生法をご存知であれば(あるいは周囲の方に呼びかけ)実施し、近くのAEDを活用してください。緊急通報では適切な指示を受けることができます。
発作が治まったあとも、心臓の細胞はほとんど再生しないので、心筋梗塞で失われた範囲は、線維のような組織に置き換わります。その影響で、心臓の収縮・拡張が弱くなったり、心拍のリズムが乱れやすくなったりするなどの後遺症が残ります。
なお、発作の程度が軽くて心臓の筋肉が障害されずに済むのが、狭心症です。狭心症から心筋梗塞に進行するケースもあります。
●発見・診断の検査検査項目 | 解説 | |
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スクリーニング | 心電図 | ベッド上で手足、胸部に電極をつけ、体内に流れている電流を記録します。心筋梗塞により心筋が死んでいると波形が変化します。 |
詳しい検査 | 超音波検査、冠動脈造影検査 | 心筋梗塞によって動かなくなって心筋の部位、造影検査では冠動脈の詰まり具合を調べます。 |
スクリーニングはかかりつけの内科医で行えます。詳しい検査は循環器内科で行います。
数字で見る心筋梗塞
- 心疾患で現在治療を受けている患者数は、305万人
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心疾患の年間医療費は、2兆1,300億円
虚血性心疾患は、6,824億円 - 心疾患の年間死亡数は、23万2,879人
心筋梗塞の予防と治療
心臓の血管(冠動脈)の動脈硬化が進み、その中で血液が固まってしまう発作が、心筋梗塞です。ですから心筋梗塞の予防とは、動脈硬化の進行予防とイコールです。
動脈硬化の進行予防には、その危険因子である脂質異常症(高脂血症)や高血圧、糖尿病などをきちんと治療すること、そして禁煙が欠かせません。血清脂質値や血圧、血糖値をしっかりコントロールすればするほど、心筋梗塞になりにくいということが、日本を含む世界中の研究から証明されています。
そして今は、それらの検査値をしっかりコントロールする方法が十分、確立されています。動脈硬化の危険因子を除去できるということです。心筋梗塞を起きにくくし「命を守る」術がすでにあるということです。それを実践するかしないかは、あなた次第です。
動脈硬化の危険因子である、脂質異常症や高血圧、糖尿病は、しばしば「肥満」という共通の原因から起きてきます。また近年では、見た目は肥満に見えない“隠れ肥満”の怖さが注目されています。みなさんご存じの、メタボリックシンドローム。肥満やメタボリックシンドロームの人は、まず内臓脂肪減少を中心とした減量が第一で、それによって危険因子の多くを改善できます。
なお、もし心筋梗塞が起きてしまった場合は、再発を防ぐために、血清脂質値をより一層厳格にコントロールしていきます。
関連する生活習慣病
★の数が多いほど関連が強いことを意味します。
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★★★
- 心筋梗塞の原因は動脈硬化です。心筋梗塞の一部は狭心症が進行して発症します。
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★★☆
- これらは心筋梗塞の危険因子です。
さらに詳しく
- 心筋梗塞、狭心症−その予防と治療(国立循環器病研究センター)
- 心筋梗塞が起こったら(国立循環器病研究センター)
- 狭心症・心筋梗塞などの心臓病(虚血性心疾患)(e-ヘルスネット、厚生労働省)
- AED(e-ヘルスネット、厚生労働省)
- 喫煙と虚血性心疾患発症との関連について(国立がん研究センター 社会と健康研究センター)
2015年12月 公開
2019年11月 更新