2024年07月16日
アルコールと薬物の使用による世界の死亡者数が年間300万人超 WHO報告 ~お酒は少量をたしなみ、ほどほどに(『一無、二少、三多』ー少酒より)~
キーワード: 生活習慣 一無・二少・三多 「少酒」お酒はほどほどに 全国生活習慣病予防月間 協会・賛助会員関連ニュース 厚生労働省の調査 飲酒
また、世界で60万人が薬物(向精神薬)の使用によって亡くなっていることも明らかにされています。
WHOは、「注視すべきこととして、アルコールに起因する死亡者のうち200万人および薬物に起因する死亡者のうち40万人は、男性であることが指摘される」と強調しています。
日本生活習慣病予防協会(監修:代表 和田 高士)
アルコールに起因する死亡者数のうち、非感染性疾患(NCD)によるものが160万人
WHOの報告書では、2019年にアルコールに起因する死亡者数のうち、非感染性疾患(Non Communicable Diseases、NCD)によるものが160万人で、そのうち47万4,000人が心血管死、40万1,000人ががんによる死亡でした。
NCDとは、WHOが定義する不健康な食事や喫煙などの生活習慣によって引き起こされる予防可能な疾患のことで、生活習慣に生活環境(大気汚染による肺疾患、メンタルヘルス)を加えた概念です。
NCD以外では72万4,000人が交通事故・自傷・対人暴力の傷害死、28万4,000人が感染症死であり、感染症死の中にはHIVや結核が含まれます。
人口1人あたりに換算した場合の飲酒量は、2010年の5.7Lから2019年には5.5Lとわずかに減少し、地域別では2019年時点で欧州(9.2L)と米大陸(7.5L)で高値を示しています。一方、習慣的飲酒者1人あたりに換算した場合、1日に平均27gの純アルコール(例えば、ビール500mLの純アルコール量は約20g)が摂取されていました。また、習慣的飲酒者の38%は、1カ月に1回以上の頻度で大量飲酒(1機会に純アルコール60g以上の摂取)を行っていることも報告されています。
さらに、未成年や若年者の飲酒の問題も明らかにされており、世界全体で15~19歳の23.5%が飲酒をしていて、欧州(45.9%)や米大陸(43.9%)でとくに顕著な値が示されています。
わが国におけるアルコール対策
健康日本21第二次(2013~2023年)では、「⽣活習慣病のリスクを⾼める量を飲酒している人の割合の減少」という目標が、男性13%、女性6.4%と設定されていました。それに対して、2019年度時点の最終報告は、同順に14.9%、9.1%であり、男性・女性ともに目標が達成されておらず、評価は「D.悪化している」となりました2)。未成年の飲酒については、最終評価では「B.改善傾向にある」とされ、我が国では減少傾向を示しています3)。
また、健康日本21第二期では個⼈の特性に応じた「飲酒ガイドライン」を作成することが基本計画に含まれており、2024年2月、国民それぞれの状況に応じた適切な飲酒量・飲酒行動の判断の基準となる「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」4)が公開されました。
厚生労働省は、本ガイドラインは、「国民一人ひとりがアルコールに関連する問題への関心と理解を深め、自らの予防に必要な注意を払って不適切な飲酒を減らすために活用されることを目指している」としています。飲酒量については、純アルコール量で自分にあった飲酒量を決めて、健康に配慮した飲酒を心がけることが大切であると指摘しています。
純アルコールに換算した飲酒量の目安は、飲酒ガイドラインや当協会サイト5)を参照してください。
一無、二少、三多によるアルコール対策
日本生活習慣病予防協会では、生活習慣病予防のために健康標語『一無、二少、三多』(無煙・禁煙、少食、少酒、多動、多休、多接)を提唱しています。飲酒に関しては少酒(お酒は少量をたしなみ、ほどほどに!)を推奨していますが、6つの健康習慣はすべて関連しています。
とくに、喫煙と多量飲酒は単独でも死亡に至る病気のリスクが高くなりますが、喫煙・飲酒・BMI(肥満)の組み合わせでがん・循環器系疾患の発症割合がどれくらい変わるかについて、男女約96,000人を10年間追跡した日本の研究があります。
最も不健康な組み合わせ(喫煙 40本/日以上・飲酒 300g純アルコール/週以上・BMI 30kg/m2以上)と最も健康的な組み合わせ(喫煙 なし・飲酒 時々・BMI 25-27kg/ m2)を比較分析した結果、最も不健康なグループでは、最も健康的なグループに比べ、10年間にがんになる人の割合が50-54歳の男性で5.4ポイント(8.4%対3.0%)、60-64歳の男性で12.1ポイント(20.1%対8.0%)、循環器系疾患になる人は50-54歳の男性で6.4ポイント(8.1%対1.7%)、60-64歳の男性で12.1ポイント(20.1%対8.0%)、13.6ポイント(17.8%対4.2%)高いという結果が示されています6)。
不適切な生活習慣は複合的に生活習慣病のリスクを高めます。『一無、二少、三多』は、6つの健康習慣のどれかを推奨しているのではなく、『一無、二少、三多』というライフスタイルを目指すことで、メリハリのある健康的な人生を送っていただけることを願っているものです。
一無、二少、三多とは参考情報
1) WHO News / Over 3 million annual deaths due to alcohol and drug use, majority among menReport:Global status report on alcohol and health and treatment of substance use disorders
2) 健康日本21で日本人はどのくらい健康になった?(日本生活習慣病予防協会)
3) 健康日本21(第二次)最終評価報告書(厚生労働省)
4) みんなに知ってほしい飲酒のこと(厚生労働省)
5)生活習慣病とその予防―飲酒(日本生活習慣病予防協会)
6) 多目的コホート研究(JPHC Study)-喫煙・飲酒・肥満度の組み合わせとがん発生・循環器系疾患発症について