2017年05月10日
若い男性の気分UPにくるみが有効 無作為化二重盲検試験の結果
キーワード: ストレス関連疾患/適応障害 食生活
ナッツの中でもくるみは特に、ポリフェノールやオメガ3脂肪酸を極めて多く含み葉酸やビタミンEの含有量も多いという点で、他のナッツ類と異なる特徴をもつ。これら、くるみに多い含有成分はセロトニンやドパミンといった神経伝達物質の濃度調節や抗酸化作用に関わっており、神経保護的に働く可能性が指摘されている。
最近、これらの知見を、ヒトを対象に検証した研究の結果が、海外の栄養関連雑誌「Nutrients」に報告された。
介入の前後にPOMS (Profile of Mood States)を用いて被験者の気分・精神状態の変化を評価した。POMS は、緊張・不安、抑うつ・落胆、怒り・敵意、活力・行動性、疲労・不活発、混乱・当惑という6項目の因子をカバーしている。このうちの'活力・行動性'を除く5項目のスコアを加算し、'活力・行動性'スコアを減算してTMD(Total Mood Disturbance)得点を計算した。
結果解析の一次アウトカムとしてTMD、二次アウトカムとしてPOMS の6項目が、研究開始前に設定されていた。また、測定・分析を行う研究員には被験者の割付が盲検化されていた。
結果をみると、男女を合計した全数での解析や女子学生のみでの解析では、一次アウトカムのTMD、二次アウトカムとしてPOMSともに有意な群間差が認められなかった。 一方、男子学生のみで解析してみると、一次アウトカムのTMDは試験食(くるみを含むパン)の方がプラセボより低値であり、群間に有意差が認められた。また二次アウトカムのうち'怒り・敵意'が、試験食群で有意に低値だった(表)。
この結果は、若い男性がくるみを摂取した場合、気分が改善することを示唆するものと言える。
くるみにはポリフェノールやオメガ3脂肪酸、ビタミンE、葉酸の含有量も多く、それらは抗酸化作用、抗炎症作用を介して、あるいは直接的に脳に働いて、情動の制御にも影響を及ぼすことが示されつつある。例えばオメガ3脂肪酸はEPAやDHAの前駆体であり、DHAはセロトニンやドパミンという気分や睡眠に影響する神経伝達物質の濃度調節に関わる。
また、くるみはメラトニンも多く含むが、メラトニンは生体リズムや睡眠の調節因子であり、良質な睡眠が気分や精神状態の安定にもつながるという経路も考えられる。
厚生労働省の『平成25年 国民生活基礎調査』では、調査対象となって人に日々の健康状態を質問の結果が公表されている。その中に「悩みやストレスの状況」を調査した項目があり、それによると20代男性の43.3%が「悩みやストレスがある」と回答しており、決して少なくない(図)。
ただ、年齢別にみた場合、20代よりも30~50代ではより「悩みやストレスがある」と答えた人の割合が高いことも事実だ。今回の研究は対象が大学生だが、今後、他の世代の男性または女性を対象にした介入試験などが行われ、くるみの摂取と気分・精神状態の関係がより明確になることを期待したい。
関連ページ:
Effects of Walnut Consumption on Mood in Young Adults-A Randomized Controlled Trial 〔Nutrients 8 (11):668, 2016〕 厚生労働省『平成25年 国民生活基礎調査の概況』