2015年11月12日
機能性表示食品制度 対象機能性成分の見直しを消費者庁に要望
キーワード: 食生活
安倍晋三首相が「成長戦略の一丁目一番地」と述べる成長戦略の3本の矢の1つが「日本再興戦略」であり、「健康増進機能を有する食品・食材の開発・普及促進を図る」として機能性表示食品制度が策定、施行された。「特定保健用食品(トクホ)」、「栄養機能食品」に続く第3の健康食品となる。
機能性表示食品は、科学的根拠や安全性の確保などについて国の審査がなく、開発費や販売価格をトクホよりも抑えられ開発期間も短縮。トクホと似た機能性表示ができるので食品業界にとって期待度の高い新制度だ。しかし、業界への影響が大きく、消費者の健康に直接関わる制度であるため、管轄となる消費者庁の腰は重く、考査も慎重となっている。
同協会でも、ガイドラインが正式に発表される前は、食の有する健康増進機能の解明・評価や、健康増進機能を有する食材・食品の開発・普及促進を図ることのできる有意義な制度として評価していた。しかしながら、発表されたガイドラインでは、国民の栄養摂取の状況からみて、その過剰摂取が国民の健康の保持増進に影響を与えているものとして健康増進法で定める栄養素(脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、糖類(単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないもの。)、ナトリウム)は、関与成分の対象外としていた。同協会では、「糖類や脂質などの栄養素は食生活改善の核となる。機能性を有している糖類や脂質を対象外に指定することには疑問がある」とし、見直しを求める要望書を提出した。
要望書では、「栄養学や食品素材の開発の進歩に伴い、安全性と機能性に優れる新しい機能性素材が開発されており、特に機能性の糖質は、古来よりある日本の発酵技術や酵素利用技術を利用して発展し、トクホの関与成分としても国民の健康増進に寄与しているものが多数ある。これらの素材の機能性発現に必要な摂取量(摂取目安量)は、食事摂取基準の範囲内で無理なく設定することが可能。健常者の健康増進を目的とした機能性表示食品を開発する場合においても、健康増進法施行規則第11条第2項で定める栄養素(脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、糖類、ナトリウム)の過剰摂取につながる心配のない食品の開発が十分に可能」としている。見直し案として、ガイドラインp.3の「表 対象成分となり得る構成成分等」に糖類及び糖質の栄養素を追加し、必要に応じて適切な限定や条件を設けることを提言している。
機能性表示食品における機能性成分の対象条件見直しに関する要望書 ▶
表 機能性表示制度の制度趣旨に合致しながらも機能性成分として使えない素材
素材名 ※ | 素材の分類 |
L-アラビノース | 単糖(単糖類) |
希少糖含有シロップ (プシコース、ソルボース、タガトース、アロース等) |
糖類(単糖類) |
プシコース | 糖類(単糖類) |
パラチノース(イソマルツロース) | |
トレハロース | 糖類(二糖類) |
ガラクトオリゴ糖 | 糖質(オリゴ糖) |
フラクトオリゴ糖 (ケストース、ニストース、フラクトシルニストース等) |
糖質(オリゴ糖) |
キシロオリゴ糖 | 糖質(オリゴ糖) |
ラクトスクロース | 糖質(オリゴ糖) |
糖アルコール全般 (キシリトール、エリスリトール、マルチトール、還元パラチノース、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、還元水あめ、等) |
糖質 |
- 機能性表示食品の届出等に関するガイドライン(消費者庁)
- 機能性表示食品に関する情報(消費者庁)
- 食品の新たな機能性表示制度に関する検討会(消費者庁)
- 「機能性表示食品」を8割が認知 女性「疲労回復」「免疫強化」に関心