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20~40代の女性で「運動をしない」割合が高く、とくに40歳代女性の体力が低下傾向
スポーツ庁「体力・運動能力調査」の結果

キーワード: 生活習慣 一無・二少・三多 セルフケア 全国生活習慣病予防月間 身体活動・運動不足

 スポーツ庁は10月13日、「令和5年度 体力・運動能力調査」の結果を公表しました。本調査は昭和39年以来、毎年実施されており、今回は60回目の節目となっています。
 令和5年度の報告書では、例年同様に最新調査年度のデータを示すとともに、60回分(新体力テストになってからは26回分)を活用した解析結果が示されています。それらの中から、全体的な傾向を分析した結果、および生活習慣病との関連が強い項目の結果を紹介します。

日本生活習慣病予防協会

  ■調査対象とテスト項目
 今回の調査対象の標本数は7万4,194人で、回収数は5万9,291人、回収率は79.9%でした。

 テスト項目は、成年(20~64歳)は握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、急歩/20mシャトルラン(いずれかを選択して実施)、立ち幅とび。高齢者(65~79歳)は日常生活活動テスト(ADL)、握力、上体起こし、長座体前屈、開眼片足立ち、10m障害物歩行、6分間歩行。青少年(6~19歳)は握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、20mシャトルラン、50m走、立ち幅とび、ボール投げ。これら個々のテストの結果を評価するとともに、スコア化した合計点数も評価されています。

 なお、これらのテスト項目は、平成10年(1989年)度に大きな変更があり、それ以降を「新体力テスト」と呼んでいます。

全体的な傾向「体力・運動能力の年次推移」

成年(20~64歳):直近10年間で40歳代女子のみ体力低下傾向

 令和5年(2023年)度調査の結果を、新体力テストが施行された平成10年(1998年)と比較すると、男子では、上体起こし、反復横とび、20mシャトルランがいずれの年代でも令和5年度の方が高く、握力、長座体前屈、立ち幅とびはほとんどの年代で令和5年度の方が低い結果となりました。 

 一方、女子では、上体起こしと反復横とびがほとんどの年代で令和5年度の方が高く、握力、長座体前屈、立ち幅とびはほとんどの年代で令和5年度の方が低い結果です。合計点については、男子ではほとんどの年代で令和5年度の方が高い結果です(図1)。

 最近10年間の変化をみると、男女ともに過半数の年代で、握力及び立ち幅とびの低下傾向がみられました。合計点は、多くの年代で男女ともに横ばいでしたが、40歳代女子ではほとんどの項目および合計点が低下傾向を示しています。

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高齢者(65~79歳):平成10年から男女ともに体力向上、直近10年は横ばい

 前記と同様に、令和5年(2023年)度調査の結果を新体力テストが施行された平成10年(1998年)と比較すると、男子では長座体前屈以外の項目でいずれの年代でも令和5年度の方が高く、女子ではすべての項目でいずれの年代でも令和5年度の方が高い結果でした。合計点については、男女ともいずれの年代でも令和5年度の方が高い結果となっています。

 最近10年間では、男女とも多くの年齢で向上傾向を示したのが上体起こし(図2)、10m障害物歩行、開眼片足立ち(65~69歳は令和5年度で低下)で、長座体前屈では男子が低下傾向を示しています。女子ではすべての項目で向上傾向を示しています。合計点は、いずれの年代でも男女ともに横ばいでした。

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青少年(6~19歳):直近10年で男子は過半数の年代で体力低下傾向

 平成10年(1998年)と比較すると、令和5年(2023年)度は男女ともに、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、20mシャトルラン、50m走がほとんどの年代で高く、握力とボール投げはいずれの年代でも令和5年度の方が低い結果でした。合計点については、男女ともいずれの年代でも令和5年度の方が高いという結果です。

 最近10年間では、過半数の年代で向上傾向がみられたのは、男子の長座体前屈のみでした。一方、低下傾向を示したのは、男子では上体起こし、20mシャトルラン、持久走、ボール投げで、女子では20mシャトルランのみでした。合計点については、男子のみ過半数の年代で低下傾向を示しています。

各年代における運動・スポーツ実施率

 各年代の運動・スポーツ実施状況において「週1日以上」と回答した者の割合を、平成10 年度(1998年)、平成 22 年度(2010年)、令和5年度(2023年)で比較すると(図3)、男子、は20~64 歳と 65~79 歳で実施率が高くなっています。女子は、20~64 歳では低い結果を示しており、とくに30~49 歳の女子の令和5年度の低下は顕著でした。

 第3期スポーツ基本計画〔令和4年度(2022年度)~8年度(2026年度)〕では、「成人の週1回以上のスポーツ実施率が70%になること」が目標とされています。令和5年度の結果をみると、男子では、20~64歳(おおよそ50~60%)では目標に届いていないものの、65~79 歳では70~80%と、おおよそ目標を達成しています。

 女子では20~64 歳(おおよそ30~50%)、65~79 歳(おおよそ50~60%)と幅広い年齢層で目標に到達していません。

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 では、運動・スポーツを「しない」と回答した者の割合をみると(図4)、男子では、各年次であまり大きな違いはみられませんが、女子では12~19歳、65~79歳で「しない」という回答が高くなっています。とくに20~40 歳代の女子では、令和5年度の運動・スポーツを「しない」という回答が顕著に高くなっています。

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運動・スポーツの実施状況と体力

運動・スポーツの実施頻度が高いほどテスト合計点数が高い

 運動・スポーツの実施頻度と新体力テストの合計点との関係を年齢段階別にみると(図5)、男女ともにほとんどの年代において、運動・スポーツを実施する頻度が高いほど、合計点は高い傾向を示しています。

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1日の運動・スポーツ実施時間が長いほどテスト合計点数が高い

 運動・スポーツを行う際の1日の実施時間と新体力テストの合計点との関係を、年齢段階別にみると(図6)、男女子ともにほとんどの年代において、1日の運動・スポーツ実施時間が長いほど、合計点は高い傾向を示しています。

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高齢者の体力

 ADL(Activities of Daily Living;日常生活活動)の質問(図7)による、高齢者のADLテストの総合判定では、男女ともに加齢に伴い体力は減少する傾向を示していますが、女子は男子に比べその低下の程度がやや大きいという結果でした。

 図8は、ADLテストの結果より、最も体力水準が高い『3』と回答した者の割合を高い順に並べて示したものです。

 男子は、65~69 歳で80%以上が、『3』と回答した項目は、「10kg程度の荷物を10m運べる(問11)」「布団の上げ下ろしができる(問10)」 「立ったままでズボンやスカートがはける(問8)」「50cm程度の幅の溝だったら、とび越えられる(問3)」でした。『3』の割合が25%と最も低かったのは、75~79歳の「10分以上走れる(問2)」という結果でした。

 女子では、全般的に男子よりも低く、65~69歳で『3』と回答した項目が60%を超えるのは、「立ったままでズボンやスカートがはける(問8)」「布団の上げ下ろしができる(問10)」「正座の姿勢から手を使わずに立ち上がれる(問5)」でした。「50cm程度の幅の溝だったら、とび越えられる(問3)」「バスや電車に乗ったとき、発車や停車のとき以外は何にもつかまらずに立っていられる(問7)」「仰向けに寝た姿勢から、手を使わないで、上体だけを3~4回以上起こせる(問12)」「片手でもシャツの前ボタンを、掛けたり外したりできる(問9)」では50%を割り、「10分以上走れる(問2)」では20%以下となりました。

 女子で、『3』の割合が最も低かったのは、男子と同じ75~79歳における「10分以上走れる(問2)」で、その割合は約15% という結果でした。

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生活の中に運動・スポーツを!

 今回の結果に基づき報告書には、今後の対応として以下のような方針が総括されています。

 一つは、20~59歳の世代においてスポーツの実施率が低くなっていて、とくに女性の30~40代において、体力・スポーツの実施率ともに低下傾向にあることに着目。企業、スポーツ団体、地方公共団体等と連携して、働く世代・子育て世代を重点としつつ、運動・スポーツの実施を促すための取り組みを進めるとしています。

 その具体策として、(1)生活の中にスポーツを取り込む「Sport in Life」に賛同する企業、団体、地方公共団体等の加盟を募り、相互の情報共有、連携を促すことで、働く世代を中心にスポーツを楽しむ人を増やすことを狙いとする「Sport in Lifeコンソーシアム」の拡大、(2)従業員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取り組みを行っている企業・地方公共団体を認定する「スポーツエールカンパニー」の拡大――などを掲げています。

 このほかにも、オリンピック・パラリンピックによるスポーツの機運向上を契機とし、誰もがスポーツに参画できるような機会の創出・意識の醸成を進めるなどの方針が述べられています。

生活の中に「一無、二少、三多」を!

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  日本生活習慣病予防協会では、生活習慣病を予防するための健康スローガン「一無、二少、三多」(一無:禁煙・無煙、二少:少食、少酒、三多:多休、多動、多接)を提唱しています。運動・身体活動は、「多動」(今より10分多くからだを動かそう!)です。

 今回の結果の図5(1日の運動・スポーツ実施頻度)と図6(1日の運動・スポーツ実施時間)をみると、生活習慣病が顕在化してくる40歳以降についてみると、運動を「しない」40~44歳の人は55~59歳のほとんど「毎日している」人と同じレベルを示しています。運動を「しない」人は、男子は15歳、女子では20歳、1日の運動・スポーツを行う実施時間が、30分未満の男子は5歳、女子は10-15歳分の老化が進でいるともいえます。

 生活習慣病の多くは、肥満による内臓脂肪の蓄積から起こりますが、自覚症状がないまま長い時間をかけて進行し、中高年になって重篤な病気となって現れることもあります。それを防ぐには、運動をはじめとした適正な生活習慣を若い時から獲得し、維持することが大切です。

 スポーツというと、時間・経済的にも少しハードルが高く感じる人がいるかもしれませんが、運動とは身体活動を活発にすることです。無理な目標を立てる必要はなく、まずは座りっぱなしを避け、よく歩くことです。

 「一無、二少、三多」(Quite ONE,Reduce TWO,Enhance THREE)「1つを辞め、2つを減らし、3つを多くする」、シンプルな健康のためのステップ「1、2、3」を意識したライフスタイルを身に付け、スマートな人生を目指しましょう。

日本生活習慣病予防協会

一無、二少、三多とは

出典

スポーツ庁令和5年度体力・運動能力調査の結果について

[mhlab]

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