2022年07月13日
熱中症? いや、脳梗塞かもしれない! Part 2 脳梗塞予防の決め手は血管力のアップと牛乳パワー
キーワード: 生活習慣 脳梗塞/脳出血 協会・賛助会員関連ニュース
脳梗塞予防には血管力のアップが必要
「脳梗塞予防には血管力のアップが必要」と話すのは、池谷医院院長の池谷敏郎氏です。「血管力」とは、血管を拡張する作用のある一酸化窒素(NO)が、血管内皮細胞で産生されやすい状態のことです。
血管内皮細胞の一酸化窒素(NO)産生作用を高めるポイントは、「禁煙」「節酒」「歯周病ケア」「健康的な食事」「適正体重の維持」「運動」「質の良い睡眠」など。同氏はこれら、血管力アップのための生活習慣を勧めます。
さらに、池谷氏によると、「イライラして交感神経が刺激された状態では、アドレナリンなどのストレスホルモンの分泌が高まり、血圧が上昇して脳卒中のリスクが高くなる。怒っているときは、なんと、タバコを3本同時に吸っているのと同じくらい、体に悪い」とストレス解消も重要だと語ります。
同氏はまた、「血管力の低下は動脈硬化の進行を意味し、脳梗塞のリスクとなります。血管力は加齢とともに低下しますが、悪しき生活習慣や生活習慣病などによってその進行が早まります。自分の危険度を知り、脳梗塞の発症予防に役立つ生活習慣を身につけましょう!」と自ら監修した『血管力セルフチェック』を紹介しています。
血管力を高めるための健康的な食事
池谷氏が勧める血管力を高める「健康的な食事」のポイントは3つあります。
① プチ糖質制限 昨今、糖質制限がブームですが、「過度に行うのは良くない」と池谷氏は説明します。むしろ、1日3食の中の1食だけ糖質を半分にする程度の「プチ制限」がお勧めで、それによって内臓脂肪が抑制され、糖・脂質代謝が改善される可能性があるとのことです。
② 血管力を上げる食材 魚油に含まれる多価不飽和脂肪酸(EPAやDHA)、大豆製品、食物繊維、ビタミン、ミネラルは、血管力を高めてくれるということです。
③ 牛乳 牛乳にはカリウムやカルシウム、マグネシウムが豊富に含まれていて、これらは血管をしなやかにして血圧を下げるように働きます。そして、「脱水」の予防にも役立ちます。同氏は、「1日1杯は牛乳を」と呼びかけています。
1日1杯の牛乳パワーで脳梗塞予防
牛乳のメリットについては、岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座 教授 丹野高三氏に解説いただきました。
岩手県北地域コホート研究グループが実施した、10年間の追跡データをもとに、研究に参加した14,121人について牛乳の摂取頻度と脳梗塞の関連を解析しました。この研究は2002年に開始し、今も続いています。
その結果、女性において、牛乳摂取頻度が、週にコップ2杯未満のグループに比べて、週7杯以上12杯未満(1日1杯程度)のグループは脳梗塞のリスクが47%低下することが明らかになりました。
残念ながら男性には有意差(明らかな差)が出ていません。これは性差というよりも、男性の方が脳卒中の危険因子である大量飲酒や喫煙の習慣がある人が多く、牛乳の摂取による影響が見出しにくかったのではないかと考えられます。
牛乳が脳梗塞のリスクを低下させる理由
丹野氏は、牛乳が脳梗塞のリスクを低下させる理由として、2つの可能性があるとしています。
① 牛乳を飲む人の健康的な生活習慣・食習慣による影響 牛乳を習慣的に飲む人は、飲まない人に比べて、喫煙や大量飲酒が少なく、運動習慣があり、魚、大豆タンパク、野菜、果実を多く摂る傾向にあり、このような健康的な生活が脳梗塞のリスク低下に影響した可能性があります。
② 牛乳に含まれる栄養素による降圧作用等の影響 牛乳に含まれるミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム)は血圧を下げる効果があることが知られていますが、本研究でも牛乳を飲まない人に比べて、飲む人は血圧が低い傾向が見られました。高血圧は脳梗塞の最大のリスクであるため、牛乳摂取がリスク低下に影響したと考えています。
丹野氏は飲む量としては、「毎日コップ1杯(150~200mL)を目安にすると良いのでは」と勧めています。
熱中症、生活習慣病、認知症予防における牛乳摂取のメリットを示すデータも
牛乳摂取と健康との関連は多くの研究がなされていて、これまでに、牛乳の摂取が、熱中症、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症)、認知症などのリスクの低さと関連していることを示すデータが報告されています。
それらのうち、例えば熱中症については、ややきつい運動の後に牛乳を飲むことで、血液中のアルブミンが増え、体温調節能力が高まることが複数の研究から示されているとのことです。
例年より早い猛暑がスタートした今年は、少し牛乳を多く飲むようにしてはいかがでしょう? 脱水症や脳梗塞のリスクを少しでも遠ざけることができるかもしれません。
※内容監修:池谷敏郎先生、丹野高三先生 Part 1 症状の見分け方と対策