2023年06月01日
健康日本21で日本人はどのくらい健康になった?
~第二次最終報告書と年次推移を図解~
Part 2 喫煙、食生活、飲酒、運動、睡眠、心の健康など「一無、二少、三多」関連項目の目標達成率
カテゴリー: 生活習慣で見る 睡眠障害 患者数 国民健康・栄養調査(厚生労働省) 喫煙 孤立・孤独 疲労(休養不足) 身体活動・運動不足 食生活 飲酒
Part 2では、喫煙、栄養・食生活、飲酒、運動、睡眠、高齢者の健康など、当協会の健康スローガン「一無、二少、三多」にかかわる項目を取り上げます。
なお、Part 1では、「健康日本21」の背景と全体的な結果の概要、メタボリックシンドロームや糖尿病、脳心血管疾患などにかかわる目標達成率について解説しましたので、あわせてご覧ください。
「一無(無縁・禁煙)」にかかわる目標の達成状況
「一無、二少、三多」の「一無(禁煙・無煙)」は、たばこを吸わないことです。喫煙に関しては、いくつかの目標が掲げられていましたが、そのうちの成人の喫煙率については12%という数値が設定されていました。
それに対して2019年度で16.7%。この結果を最終評価では、「有意に改善しているが、ベースラインから直近までに2.8%しか減少しておらず、⽬標年度までの⽬標到達が危ぶまれる」とし、評価は「B(現時点で⽬標値に達していないが、改善傾向にある)」とされています。
その他、未成年者や妊婦の喫煙をなくすこと、受動喫煙を減らすことについても「B」判定でした。
「二少(少食、少酒)」にかかわる目標の達成状況
「一無、二少、三多」の「二少」は「少食」と「少酒」です。「少食」とは、食べ過ぎないこと(食事は腹八分目に!)と3つの白(白米・白パン、食塩、砂糖)は摂りすぎないことです。「少酒」とは、飲み過ぎないこと(アルコールは少量をたしなみほどほどに!)です。
このうち、まず「少食」に関連することとして、「適切な量と質の食事をとっている人の割合」という目標の達成度をみてみましょう。この目標については、より細かく以下の目標が掲げられていました。「主⾷・主菜・副菜を組み合わせた⾷事が1⽇2回以上の⽇がほぼ毎⽇の人の割合」を80%、⾷塩摂取量の平均を8g/日、野菜摂取量を350g/日、果物摂取量が100g/日未満の人の割合を30%にすることです。
結果は以下のグラフのとおり、いずれも未到達で、評価はすべて「C(変わらない)」とされています。
次に、少酒については、「⽣活習慣病のリスクを⾼める量を飲酒している人(1⽇当たりの純アルコール摂取量=ビール500mL相当など)が男性40g以上、⼥性20g以上の者)の割合の減少」という目標が設定されており、その数値は、男性が13%、女性は6.4%とされていました。それに対して2019年度時点の割合は、同順に14.9%、9.1%であり、男性・女性ともに目標が達成されておらず、男性はほぼ横ばい、女性についてはむしろ上昇しています。したがって評価は「D(悪化している)」となりました。
「三多(多動、多休、多接)」にかかわる目標の達成状況
「一無、二少、三多」の「三多」は「多動」「多休」「多接」です。「多動」は、からだを多く動かすこと(今より10分多くからだを動かそう!)、「多休」は、睡眠などの休息で疲れをためないこと(しっかり休養~こころとからだのリフレッシュ!)、「多接」は、人との出会いを大切にすること(多くの人、事、物に接してイキイキした生活を!)です。
多動に関連する目標として、「日常生活における歩数の増加」と「運動習慣者(1回3 分以上の運動を週2回以上実施し、年以上継続している人)の割合の増加」が掲げられていています。歩数では、20~64歳は男性が9,000歩、女性が8500歩、65歳以上については同順に7,000歩、6,500歩、運動習慣者の割合は20~64歳は男性が36%、女性が33%、65歳以上については同順に58%、48%という数値が設定されていました。
結果は以下のグラフのとおりで、第二次を通して、どのカテゴリーもあまり変化がないか、やや低下している傾向がみられます。判定は「C(変化なし)」でした。
運動習慣に関しては、次世代の健康増進への取り組みとして、「運動やスポーツを習慣的に⾏っていない⼦どもの割合の減少」が調査されています。運動などの生活習慣は、⼦どもの頃からの健全な⽣活習慣の獲得が重要です。調査の結果をみると、ベースラインの2010年より2014年ごろまでは割合の急激な低下傾向がみられますが、以降は運動習慣のない子供が徐々に増えている傾向を示しています。最新の調査は、コロナ禍も影響している可能性も考えられます。次に「多休」に関連することとして、「睡眠による休養を⼗分とれていない人の割合」(20歳以上)が評価されていました。目標ではこの数値を15.0%にすることとなっていましたが、2018年度*に21.7%であって、⽬標値に達しておらず、かえってベースライン値の18.4%から有意に増加していました。よって、評価結果は「D(悪化している)」とされています。
*2019年度は質問内容が異なるため2018年までの評価「多接」に関する目標として、何らかの地域活動に参加している高齢者が80%以上となることが設定されていました。この目標は、コロナ禍による外出自粛が直接的に影響を及ぼしたことから、評価は「E(評価困難)」と判定されています。
ただし、最終報告書には「内閣府の『高齢者の経済生活に関する調査』『高齢者の経済・生活環境に関する調査』において、高齢者が現在行っている社会的な活動を調査しており、特に活動をしていない高齢者が69.9%(2016年度)から63.3%(2019年度)に減少していることから、社会的な活動を行っている高齢者は男女をあわせてみると増加していると考えることができる」として、評価は「E」ながらも、「参考B(現時点で目標値に達していないが、改善傾向にある)」と付記されています。
その他の栄養関連調査
最後に、栄養・食生活に関する調査結果について紹介します。
肥満は、がん、循環器疾患、糖尿病などの⽣活習慣病と強く関連します。適正体重の増加については、肥満者の割合としてBMI(≧25)が、男性28%、女性19%との目標が設定されていました。最終評価では、男性は、ベースラインの31.2%(2010年)と⽐較して35.1%(2019年)と悪化し、評価は「D(悪化している)」でした。
女性(40 歳~60 歳代)の肥満者の割合は、ベースライン22.2%(2010年)と比較して22.5%(2019年)で目標値に達していないものの、経年的な推移の分析でも有意な増減はなく、最終評価は、「C(変わらない)」となりましたが、第一次(2000年)から2019年までの20 年間でみると、有意に増加していると報告されています。
なお、次世代の健康として子供の肥満傾向の減少に目標が設定されています。⼩学5年⽣の肥満傾向児の割合は、ベースラインの8.59%から2019年には9.57%に増加しており、ベースラインからの相対的変化率が11.4%であることから、「D 悪化している」と判定されました。
適正体重では、若年女性のやせ(BMI18.5 未満)や、高齢者の低栄養傾向(BMI20以下)も目標が設定されています。
若年⼥性のやせは⾻量減少のリスクは将来的な骨粗しょう症、骨折、フレイルと関わります。また、低出⽣体重児出産のリスクなどとも深く関連がありますが、我が国の成⼈⼥性のやせの者の割合は、主な先進国の中でも最も多い状態が続いています。20 歳代⼥性のやせの者の割合は、ベースラインの2010年29.0%と⽐較して、20.7%と有意な変化はなく、⽬標値に達していませんが、経年的な推移の分析では減少傾向がみられ、判定は「C(変わらない)」となっています。
「低栄養傾向(BMI20 以下)の⾼齢者の割合の増加の抑制」についても目標が設定されています。65 歳以上を対象として低栄養傾向の⾼齢者の割合が、後期⾼齢者の増加による⾃然増により⾒込まれる割合(2023年22.2%)を上回らないことを⽬標として、⽬標値22%(2022)が設定され、現時点での最終評価時である2019年では⽬標を達成している「A(増加を抑制している)」と評価されています。
Part 1 メタボリックシンドローム、糖尿病、脳・心血管疾患の目標達成率そのほか、健康日本21の様々な項目に関する解析結果が公表されています。詳細は「健康日本21(第二次)」最終評価報告(下記出典)のサイトでご確認下さい。
出 典
■厚生労働省「健康日本21(第二次)」最終評価報告■国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所「健康日本21(第二次)