2005年04月10日
内臓脂肪型肥満を基盤とした動脈硬化性疾患のマルチプルリスクファクター症候群「メタボリックシンドローム」の診断基準が設定される
カテゴリー: 肥満症/メタボリックシンドローム
動脈硬化性疾患の危険因子である糖尿病、高脂血症、高血圧といった生活習慣病が、一人に重複して発症し、各々の危険因子はしばしば軽症であるにもかかわらず、心血管イベントの発生率が極めて高くなる病態‘マルチプルリスクファクター症候群’の新たな定義が「メタボリックシンドローム」とされ、その診断基準が発表されました。マルチプルリスクファクター症候群は、従来、さまざまな医学的な学説を基に「シンドロームΧ」「死の四重奏」「インスリン抵抗性症候群」などと表現されてきました。しかし近年の医学的研究の進歩の結果、これらの病態の基本は腹腔内(内臓の周囲)に脂肪が過剰に蓄積した状態「内臓脂肪型肥満」であることが明らかになってきました。今回の新しい定義と診断基準は、日本国内において関連8学会の合同委員会によって、これまで蓄積された研究結果を整理し、内臓脂肪の蓄積をベースとした考え方にまとめられています。
血清脂質値(中性脂肪やコレステロール)、血圧、血糖値の異常が重複した際に、動脈硬化が促進され心血管系の病気が高頻度に起きることを示した研究結果は、国内外に多数あります。国内では、地域住民を対象に長年継続調査を続けている久山町研究、端野・壮瞥研究、多数の勤労者を対象とした労働省(現、厚生労働省省)の研究などが知られており、とくに旧労働省の研究では、これらの検査値の異常が三つ重なると、検査値がすべて基準値内の人に比べて30倍以上も心血管系の病気の危険性が高くなることが示されています。
そのような状態に該当する人の多くは、血清脂質、血圧、血糖を個別に見た場合、必ずしもすぐに治療が必要なほどの悪い検査値ではないため、見過ごされてしまうことが少なくありませんでした。今回、新たにメタボリックシンドロームの診断基準が設けられたことで、こうした人たちに対しても、内臓脂肪型肥満の解消(ウエストサイズの縮小)を基本とした、積極的な治療が行われることになります。
新たに設けられた診断基準は、右記のとおりです。
メタボリックシンドロームの診断基準
1.ウエスト周囲計を測定し、内臓脂肪(腹腔内脂肪)の蓄積を確認
メタボリックシンドロームと診断する
HDL-コレステロールが40mg/dL未満 イ.収縮期血圧が130mmHg以上か、拡張期血圧が85mHg以上 ウ.空腹時血糖値が110mg/dL以上 |
『日本内科学会雑誌』第94巻第4号「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」
(メタボリックシンドローム診断基準検討委員会)