2023年12月11日
一無、二少、三多の健康習慣の実践が17年後の健康状態(主観的健康感)につながる
~中高年者縦断調査の概況(厚生労働省)~
キーワード: 生活習慣 一無・二少・三多 協会・賛助会員関連ニュース 厚生労働省の調査
当協会が掲げる健康標語「一無、二少、三多〔一無(禁煙)、少食、少酒(節食)、多動(運動)、多休(休養)、多接(人や物とのかかわり)〕」との関連性を中心に、結果を紹介します。
調査の概要
■調査の目的
「中高年者縦断調査」は、団塊の世代を含む全国の中高年者世代を対象として、その人たちの健康・就業・社会活動などの変化の継続的な調査であり、平成17年(2005年)度に開始されました。厚生労働省はその目的を「(中高年者の)行動の変化や事象間の関連性等を把握し、高齢者対策等厚生労働行政施策の企画立案、実施等のための基礎資料を得ること」としています。
■調査の対象・客体
この調査は、平成17年10月末時点で50~59歳だった全国の男女を対象に続けられています。今回発表された第18回調査の結果は初回から17年経過した時点のものであり、対象者の年齢は67~76歳になっていました。調査客体は、前年(第17回)または前々年(第16回)の調査にも協力していた1万9,241人で、令和4年11月2日に実施されました。
調査概要詳細や昨年までの追跡調査の結果は、以下のニュースを参照ください。
▶16年にわたる「中高年縦断調査」からわかる主観的健康感の高さと
「一無、二少、三多」
調査結果
まず世帯構成の調査結果をみると、今回の第18回調査では「夫婦のみ」の世帯が47.3%とほぼ半数を占め、次いで「親なし子あり」(子から見た祖父母は非同居)の世帯が23.8%と4分の1弱、単独世帯が13.1%、三世代世帯が10.2%などとなっています。
この17年間で、「夫婦のみ」の割合は21.4%から倍以上に増加したのに対して、「三世代世帯」は22.4%から半減し、「親なし子あり」も39.5%から4割低下しました(表1)。
■健康状態の変化
健康状態が、第1回調査からずっと「よい」と回答している人の割合は、当然ですが、対象者の加齢に伴う疾患発症などのために、年々低下してきています。それでも第14回調査では43.7%と4割以上の人が、常に「よい」状態が続いていました。しかし第18回でのその割合は、37.2%に減っていました(表2)。
健康状態が第1回調査からずっと「よい」と回答している人と、そうでない人とで、「健康維持のために心がけていること」を比較すると、「適度な運動をする」の選択率に最も大きな差が認められました。
第1回からずっと「よい」と回答している人では、「適度な運動をする」が13.5%、「食後の歯磨きをする」が13.1%、「バランスを考え多様な食品をとる」が12.5%、「食事の量に注意する」と「適正体重を維持する」がともに11.3%、「適度な休養をとる」5.5%などであり、これらの選択率はすべて、健康状態が「よい」ではなかった年がある人よりも高い値です。つまり、健康維持のために心がけていることが多いほど、実際に長年にわたって健康状態が良好であるということが、縦断研究の結果として確認できます(図1)。
「一無、二少、三多」の観点から結果をみると、「適度な運動をする」(多動)13.5%、「食事の量に注意する」(少食)11.3%、「適度な休養をとる」(多休)5.5%、「お酒を飲みすぎない」(少酒)3.1%、「たばこを吸いすぎない」(無煙)0.7%であり、その合計で34.1%と極めて高い値であり、「一無、二少、三多」の意義が再確認されたといえます。
■社会参加活動の状況
「趣味・教養」や「スポーツ・健康」、「地域行事」に参加している人の割合は、第1回調査から第15回調査までは緩やかに上昇または横ばいの傾向でした。第16回や第17回でそれらの割合が低下したのは、恐らく新型コロナパンデミックの影響によるものでしょう。今回の第18回調査(調査時期は上述のように2022年11月)では、その影響もやや弱まり、それらの活動に参加する人の割合が回復しつつあることがわかります(図2)。
一無・二少・三多の「多接」の健康意識への影響
健康に寄与する健康習慣については、喫煙しないとか体を動かすなどはよく知られているところです。しかし、人や物と多く交流する「多接」の意義はあまり注目されていません。
現在の健康状態が、「大変よい」「よい」「どちらかといえば良い」「どちらかといえばわるい」「わるい」「大変わるい」のどれに該当するか回答してもらいました。前3者を「よい」、後3者を「わるい」の2群に大別し、「多接」の状況をみてみました。
「多接」の内容は「趣味・教養」「スポーツ・健康」「地域事業」「子育て支援・教育・文化」「高齢者支援」「その他の社会参加活動」の各分野です。
第1回の調査から17年間ずっと活動している、最初は活動していなかったが途中からしているという「現在活動群」と、第1回の調査から17年間ずっと活動していない、最初は活動していたが途中からしなくなったという「現在非活動群」では、現在どのような自分で感じる健康状態(主観的健康感)であるかの回答状況であるのかを解析してみました(表3)。
いずれの「多接」形式においても、健康状態が「よい」と答えた人における「多接」の実践状況は現在非活動群(69~78%)に比べて、現在活動群では81~88%と高いことがわかりました。
また、現在活動群において、健康状態が「よい」と答えた人における「多接」の実践状況(81~88%)は、「わるい」と答えた人(11%~18%)に比べて数倍多いことが明らかにされました。
「三多」の一つ「多接」が、健康の維持につながることの、一つのエビデンスと言えるでしょう。
和田 高士(東京慈恵会医科大学 客員教授、日本生活習慣病予防協会 副理事長)
出 典
■厚生労働省「中高年者横断調査」
■政府の統計の総合窓口e-Stat「中高年者横断調査」