日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

2023年インスリン・フォー・ライフ(IFL)のウクライナ支援(IDAF)

キーワード: 糖尿病 協会・賛助会員関連ニュース

 2023年7月18日にインスリン・フォー・ライフ(IFL)オーストラリアのメンバーが国際糖尿病支援基金の事務所を訪れました。
 2022年3月から実施しているウクライナの糖尿病患者さんへの支援について、スタッフのニール・ドナラン氏からお話をうかがいましたので、ご紹介します。

 国際糖尿病支援基金はこの活動に賛同し、インスリン・フォー・ライフ(IFL)の活動を支援をしています。

 私は今回で6回目の来日となります。約3年ぶりに日本に来ることができて、とてもうれしく思っています。私は日本が大好きで日本の方々はとても素晴らしいと思っています。
 また、IFLと国際糖尿病支援基金は20年以上にわたって良好な協力関係を築き、多くの共同プロジェクトを行ってきました。日本からは森田会長をはじめ多くの方々が私たちの活動をサポートしてくれています。

ウクライナへの支援について

 IFLが2022年3月から実施している、ウクライナの糖尿病患者さんへの支援についてお話します。ご存知のように2022年2月にウクライナで戦争がはじまりました。
 その直後、ウイーンに住んでいるウクライナ出身の1型糖尿病患者オルグ・ノビコフさんから支援の呼びかけがあったことと、ウクライナ現地からも我々に要請があったため、まずはヨーロッパ圏内にあるインスリン・ツム・レーベン(IZL)ドイツ支部とオーストリア支部が現地の糖尿病患者さんへの支援をはじめました。その後で我々オーストラリアも他の支部と協力して物資の輸送を開始しました。

 写真1にウクライナの地図を示します。赤と紫に色づけられている地域がロシア政府、または軍がウクライナを攻撃しているのが分かります。これは2022年5月時点で作成されたものですが、この戦争を追ってみると侵攻と奪還が繰り返され、決着が付かない状態が続いています。

 ウイーンには、IZLオーストリア支部とウクライナ出身のオルグさんなど献身的なボランティアスタッフがいます。彼らが約10時間かけてトラックを運転しチェコ共和国からポーランドを通ってウクライナ西部・リヴィウへ向かいました。ウクライナ国内にはたくさんのドローンやミサイルが飛んでいて非常に危険なため、入国する際には細心の注意をはらわなければなりません。ロシア軍はこの地域を爆撃しているだけでなく現在もウクライナ西部で軍事活動を続けており、ウクライナ政府はロシア軍の進軍を阻止しようとしているのです。


 写真2はウクライナのリヴィウへ送られる最初の支援物資で、2022年3月6日に発送しました。その後、ボランティアスタッフが自ら運搬しました。これはウクライナ国内の病院に届ける支援物資です。

 その後も我々はウクライナへ向けてインスリンとテストストリップ、血糖測定器の支援を開始しました。写真3は、オーストラリアから最初に支援した物資です。オーストラリアからインスリンが届くまで5日かかります。インスリンは空輸中の凍結を防ぐため品質管理を徹底しなければなりません。発泡スチロールに入れ、それぞれの箱へ保冷剤とともに梱包します。ウィーン到着後、税関を通過し特別な書類へ記入する必要があります。

 現地に到着した我々の支援物資の写真を拡大してみると、インスリンの各箱にはオーストラリアの承認医薬品であることを示す登録番号が記載されていることが確認できます。これは、我が国の医薬品はすべて政府により保険省への登録が義務付けられており、この登録がない医薬品を国外へ輸送することは禁止されています。
 支援物資が確実に支援先へ配布されていることと、支援物資のインスリンに不正がないことをご理解いただけると思います。

 ウクライナ現地にもインスリンポンプを使用している患者さんがいます。我々は普段、インスリンポンプの支援は行っていませんので、IFLアメリカの協力を得てインスリンポンプ用の供給品を提供してもらいました。IFLイギリスからはボランティアスタッフの協力を得て、ヨーロッパの様々な地域からウクライナへインスリンを輸送しました。

 我々は、輸送費用などの資金を調達をする必要があったため、Spare a Rose for Ukraineプロジェクトを立ち上げました。同時に日本の国際糖尿病支援基金にも協力を求め、募金活動を行いました。日本の皆様からはたくさんのご支援をいただきましたことを深く感謝申し上げます。

現地での様子について

 IFLからの支援物資は、ボランティアによってウクライナ国内の医療施設や糖尿病患者さんへ配布し、現地の方々からとても感謝をされました。

32.jpg

※プライバシー保護のため 写真を加工しています。

 国連はのちにIFLがウクライナで必要とされているインスリン等を支援していることを知ることとなりました。当初、国連は私たちの支援活動を知らなかったのです。
 この写真はIFLからの支援物資です。梱包のされかたから、我々が送った荷物であることを認識できます。現地の医療従事者から患者さんへオーストラリアからのインスリンが配布されます。

12.jpg

IFLが2022年3月から2023年8月までにウクライナへ支援した物資総数

  • 7か国(オーストラリア・アメリカ・イギリス・オランダ・ドイツ・クロアチア・ルクセンブルグ)からウクライナへ支援物資を送付
  • 同期間中の企業・団体よる寄附協力
    国際糖尿病支援基金/Dexcom/Diabeloop/Medtronic/Glooko Ink/Ascencia/Insulet
    Facebook、Instagram、Twitter
  • 送付数量:
    発送回数91回、梱包数310箱、インスリン製剤140,000mL超、注射器270,000本、血糖測定試験紙210,000枚超、インスリンペン4,000本超、ペン型注射針160,000超、HbA1cキット1,000個、血糖測定器2,500台超、穿刺針265,000本、アルコール消毒綿33,000パック

 一方、2022年3月から2023年8月までに、IFLオーストラリアがウクライナへ支援した物資は、梱包数138個で50回ににわたり輸送しました。
 ある製薬会社から200,000枚のテストストリップを購入しました。また、募金活動で得た寄付金で血糖測定器や糖尿病療養に必要な資材、輸送費を負担させていただきました。寄付金の中には国際糖尿病支援基金を通じて日本の方々から頂いたご寄付も含まれています。日本の皆様にはあたたかいご支援をいただきまして、ありがとうございました。
 郵送費だけで日本円で約216万円かかりました。

14-2.jpg

 IFLでは、今後も引き続き、ウクライナ現地の糖尿病患者さんへの支援活動を行っていきたいと考えておりますので、日本の皆様のご協力をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。


■ウクライナの糖尿病患者さんへの支援については、下記の中からご希望の方法をお選びいただけます。

(1)国際糖尿病支援基金を通じてIFLへご寄付の場合

振込口座(郵便局):
口座番号:00160−3−82542
加入者名:国際糖尿病支援基金口
※通信欄へ「IFL ウクライナ支援」とお書き頂きますようお願い致します。

 御協力頂きました方は、支援者としてこのホームページ上の「支援者名」のコーナーでお名前を発表させて頂きますが、本名での発表をご希望でない方は、振替用紙(郵便局)の通信欄にご希望のお名前をご記入ください。

(2)Spare a Rose for Ukraineを利用してのご寄付
https://www.insulinforlife.org/spare-a-rose/

「Spare a Rose」については、こちらをご覧ください。


■関連記事
IFLオーストラリア/ウクライナの糖尿病患者さんへの支援について(5)
IFLオーストラリア/ウクライナの糖尿病患者さんへの支援について(4)
IFLオーストラリア/ウクライナの糖尿病患者さんへの支援について(3)
ウクライナの糖尿病患者さんへ緊急支援のお願い(2)
ウクライナの糖尿病患者さんへ緊急支援のお願い(1)
インスリン・フォー・ライフ(IFL)(オーストラリア)
国際糖尿病支援基金

[mhlab]

関連トピック

疾患 ▶ 糖尿病

2023年10月20日
インスリン・フォー・ライフ(IFL)グローバル
最近の活動と取組みについて(アリシア・ジェンキンス代表)
2023年09月15日
2023年インスリン・フォー・ライフ(IFL)のウクライナ支援(IDAF)
2023年07月12日
日本人の自覚症状のトップは男女とも腰痛。高血圧、糖尿病、脂質異常症での通院が上昇!
~国民の健康、介護、貯蓄に関する「令和4年国民生活基礎調査」(厚労省)~
2023年05月30日
健康日本21で日本人はどのくらい健康になった?
~第二次最終報告書と年次推移を図解~
Part 1 メタボリックシンドローム、糖尿病、脳・心血管疾患の目標達成率
2022年11月18日
重要性を増す街中の「ゆびさきセルフ(検体)測定室」の役割! ~検体測定室連絡協議会「世界糖尿病デー・健康啓発セミナー2022」~

 ▶ 協会・賛助会員関連ニュース

2024年09月24日
"くるみ"をはじめとするオメガ3脂肪酸が豊富な食品の摂取は、 アルツハイマー病の予防に大きな役割を果たす可能性が最新研究から示唆されています
2024年09月17日
お酒を飲まない(さほど飲まない)脂肪性肝疾患の患者数は約2000万人以上!ー「脂肪性肝疾患とは?~どのように対応しますか~」市民講演会参加者募集中(参加費無料)
2024年07月18日
運動不足による疾患リスクを抱えている人が世界に18億人 WHO報告 ~無理な目標は立てずに、まずは歩くことからはじめよう!(『一無、二少、三多』-多動より)
2024年07月16日
アルコールと薬物の使用による世界の死亡者数が年間300万人超 WHO報告 ~お酒は少量をたしなみ、ほどほどに(『一無、二少、三多』ー少酒より)~
2024年07月02日
7月28日は「世界肝炎デー」~『一無、二少、三多』で"生活習慣病肝炎"を予防しよう!~
市民公開講演会参加者募集中!
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート