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16年にわたる「中高年縦断調査」(厚生労働省)からわかる主観的健康感の高さと「一無、二少、三多」

キーワード: 生活習慣 一無・二少・三多 厚生労働省の調査

 厚生労働省では、国民の健康状態に関する調査のひとつとして、「中高年縦断調査」を実施しています。本調査は50~59歳だった対象集団の追跡調査で、先ごろ、調査対象の人たちが66~75歳になった時点に行われた調査結果が発表されています。 その結果をみると、長年にわたって、自分自身の健康状態が良いと感じている人(主観的健康感が高い人)は、「適度な運動をする」という生活習慣のある人が多いことなどが明らかになりました。
 そのほかにも、「食事の量に注意する」、「適度な休養をとる」、「お酒を飲み過ぎない」など、当協会の啓発活動のポイントである『一無、二少、三多』の重要性を見てとれる結果が示されています。

同じ人を長期間、追跡している「縦断調査」からのエビデンス

 人々の健康状態に関する調査、いわゆる疫学研究は、「横断調査」として行われることが多いものです。横断調査は、その調査を行う一時点の全体的な傾向を把握できるものの、調査対象となった人がそれ以前にどのような生活習慣だったのか、および、その後どのような健康状態になったのかはわかりません。

 一方、縦断調査は、特定の集団を対象として定期的に調査を繰り返し行っていき、経時的な変化も把握できる調査方法です。横断調査に比べて手間がかかりますが、病気の原因と発症の因果関係の推測に役立つなどの利点があります。

 厚労省の「中高年縦断調査」は後者の手法による調査で、2005年10月時点で50~59歳だった人を対象として毎年、追跡調査が続けられています。今回発表されたデータは、その調査対象の人たちが66~75歳になった時点に行われた第17回調査の結果であり、その人たちがこの16年間をどのように過ごし、健康状態がどのように変化してきたかがわかります。今回の第17回調査結果は、第1回調査から第17回調査まで集計可能である16,579人を対象に集計されたものです。

 「中高年縦断調査」では、健康状態のほかに就業状況や社会活動への参加状況なども調査されています。ここではそれらのうち、健康との関連が深い項目をピックアップして紹介します。

世帯の状況:独居者や夫婦のみの世帯が増加

 第1回調査(2005年)から16年間での世帯構成の変化をみると、「夫婦のみの世帯」は21.5%から46.9%に、独居は4.8%から12.5%へと増加しました。一方、「三世代世帯」や「親あり子なしの世帯」などは減少しています(図1)。

 「三世代世帯」の内訳は図1には示していませんが、16年間の間に、「親と子の同居」は17.6%から1.8%と減少し、「子と孫の同居」は2.9%から8.5%へ増加していました。「親と子と孫の同居」は1.7%から0.6%とやや減少しています。

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健康の状況:一無、二少、三多の重要性が示唆される

健康状態の変化

 第1回調査から各調査回までの健康状態の変化をみると、「第1回からずっと『よい』」と思っている人の割合は、第13回調査で45.5%、第17回調査では38.3%と、調査回を追うごとに減少しています(表1)。これには、調査対象者の加齢が関係している可能性が考えられます。

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健康維持のために心がけていること

 第1回調査から継続して健康維持のために心がけていることを健康状態の変化別にみると、「第1回からずっと『よい』」と思っている人は、「適度な運動をする」13.8%、「食後の歯磨きをする」13.2%などの習慣のある人の割合が高いことがわかりました(図2)。

 「その他の変化」(第1回から第17回までに「よい」・「わるい」を繰り返している)の人と、「第1回からずっと『よい』」と思っている人との差が最も大きい生活習慣は、「適度な運動をする」であり、6.4ポイントの差でした。

 なお、この質問で把握された、調査に回答した本人による健康状態の評価(主観的健康感)は、BMIや血液検査の値などと同じように、死亡リスクと関連のあることが報告されています。

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社会参加活動の状況:趣味や地域行事などの参加は減少、スポーツ・健康は横ばい

 社会参加活動別の状況をみると、男女ともに「スポーツ・健康」、「趣味・教養」、「地域行事」が高く、「高齢者支援」、「子育て支援・教育・文化」は低いという傾向です。

 ただし、経年的な変化では、「趣味・教養」、「地域行事」などは、第15回調査(2020年)以降減少しています。これには新型コロナウイルス感染症パンデミックに伴う外出自粛が関係しているのかもしれません。一方、「スポーツ・健康」に関しては、パンデミック以降もほぼ横ばいでした(図3)。

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情報通信機器の使用状況

 現代は、情報通信機器の使用は、社会とのつながりの指標といえるかもしれません。第17回では情報通信機器の使用状況の調査が行われました。対象となった66歳から75歳の年齢層での通信機器の使用率は約90%で、そのうち「スマートフォン」 の使用が男性63.0%、女性62.7%と男女とも最も高くなっていました(表2)。

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日頃の心がけが健康状態に長く影響を及ぼす!

 2005年に50~59 歳である全国の男女の方々を登録し、その後毎年調査し続けてきた「中高年者縦断調査」報告が、厚生労働省が発表しています。

 健康状態の回答は6段階(大変よい、よい、どちらかといえば良い、どちらかといえばわるい、わるい、大変わるい)です。本文では前3者をとりまとめて「よい」として集計しその解析結果を紹介しました。

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 健康維持のために心がけていることの設問項目には、本協会が提唱している「一無(無煙)、二少(少食・少酒)、三多(多動・多休・多接)」が含まれています。

・たばこを吸い過ぎない(無煙)*
・食事の量に注意する(少食)
・お酒を飲み過ぎない(少酒)
・適度な運動をする(多動)
・適度な休養をとる(多休)
・ストレスをためない(多接)**
*後述のように喫煙しない人がもっとも健康状態がよい
**多くの人や物に接してストレスを発散する

 すなわち、本調査も『一無、二少、三多』の概念、重要性を考慮して、設問を作成していることがわかります。図2の『ずっと健康状態がよい』と答えた人が実践してきた項目で、『一無、二少、三多』相当の合計値は45.1%にもなりました。

 第1回調査から『ずっとよい』と思っている人について、喫煙の有無との関係は以下のとおりです。男性の非喫煙者は38.4%ともっとも多く、喫煙している人では10本以下(36.5%)、11~20本(36.4%)、21~30本(32.8%)、31本以上(28.8%)と本数に比例して減少していきました。

 一方で、後3者の合計である『ずっとわるい』と答えた人(全体の22.5%)は、どんなことに配慮していなかったかも気になります。

 実践してこなかった上位3項目は「適度な運動をする」「ストレスをためない」「適正体重を維持する」でした。すなわち、『ずっとよい』と答えた人たちが最も多く行ってきたこと、また『ずっとわるい』と答えた人たちがやってこなかったことの第1位も「適度な運動をする」という結果でした。

 日頃の心がけが健康状態に長く影響を及ぼすことが、この長期・大規模調査からも明らかにされました。

和田 高士(東京慈恵会医科大学 客員教授、日本生活習慣病予防協会 副理事長)

出 典

■厚生労働省「中高年横断調査」
■政府の統計の総合窓口e-Stat「中高年横断調査」

参 考

[mhlab]

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