2022年03月22日
全国生活習慣病予防月間2022講演会レポート【1】 「こころの密を育てる~スマートフォンによるAIセルフカウンセリング~」 ー講演会は継続公開中!
キーワード: 生活習慣 ストレス関連疾患/適応障害 全国生活習慣病予防月間 協会・賛助会員関連ニュース
「こころの密を育てる~スマートフォンによるAIセルフカウンセリング~」
大野 裕 先生 精神科医、一般社団法人 認知行動療法研修開発センター 理事長、他 コロナ禍で人々の三大ネガティブ感情、「不安」「うつ」「怒り」が高まっていると言われる。また、コロナ以前から、非健康的な生活習慣、例えば運動不足や朝食の欠食などによって、うつのリスクが高い状態にある人が増加している。これらの課題の解決策として期待されている認知行動変容アプローチと、そこから誕生したAIチャットボットによる「こころコンディショナー」について、認知行動療法の第一人者である大野先生が解説する。Part 1 ウェルビーイングを高める認知行動変容アプローチ(1)ネガティブ感情を切替える
そもそも人は危険回避のため、環境の変化に対して本能的にネガティブに判断する傾向があるという。危険回避のためにまずは良くない事態を想定し、その後に「何が起きてるのか」と情報収集して、危険かそうでないかを判断するのだという。情報収集の結果、危険でないと判断されれば、ネガティブな思考がポジティブに切り替わる。ところが何らかの理由でネガティブになったままの状態が続くことがある。このような状態に対して、情報収集を手助けすることで適切な判断を促す手法が「認知行動療法」であるとのことだ。
Part 2 ウェルビーイングを高める認知行動変容アプローチ(2)4大感情と認知・行動
人の感情は4つに分類できるという。そのうちの1つは「喜び」というポジティブな感情だが、残りの3つは「不安」「うつ」「怒り」というネガティブな感情である。 これらのうち例えば不安とは、身に迫る危険を実際より過大評価するとともに、自分の能力や、期待できる周囲からの助力を過小評価した結果として生じるのだそうだ。このような誤認に基づき不安が募ると過剰な回避行動が繰り返されて、状況は好転しない。いわゆる破滅的思考に入り込んでしまう。 そのような破滅的思考の是正には、多少の危険を認識したうえで実際にトライしてみること「エクスポージャー」も時には必要とされる。危険度をできるだけ正確に評価して、「正しく恐れる」ということだ。情報を正しく分析することで危険性の過大評価、自分の力の過小評価の誤りに気付ければ、回復のチャンスが到来する。その時、周囲に助けを求めることを躊躇すべきでない。 現在、世界はコロナ禍のためネガティブな感情に支配されやすい傾向がある。しかし、「パンデミックは永遠に続くわけではなく、必ず終わる。脳の報酬系を刺激する楽しいことを生活に採り入れ、期待と現実のギャップを埋める解決策を考えてほしい」と大野先生はメッセージを送る。
Part 3 こころを元気にする4つのステップとAIチャットボット
Part3では、大野先生が始めたICTを活用しセルフケアで認知行動変容を促す、スマホアプリ「こころコンディショナー」の試みが紹介される。AIチャットボットにより、うつや不安、怒りの解決の糸口を教えてくれる仕組みだ。デジタルツールであるため、時間や場所を問わず利用できること、そして人に会わずに済むため、相談をするという行動の第一歩のハードルを大きく下げられるというメリットがある。 「こころコンディショナー」は、すでに世田谷区などの自治体等での活用も始まっているという。これまでに約1万5,000人が利用し、ユーザーアンケートの結果、82.5%が「継続的に利用したい」と回答するほどの高評価を得ているとのことだ。また、このアプリ使用に伴う有害事象は観察されていない。 しかし、当然ながらチャットボットがすべてを解決してくれるわけではない。また、現時点のテクノロジーでは、文脈に沿った的確なアドバイスはまだ難しく、人と話している感覚とは隔たりがある。さらに、中には緊急性があって高度な介入が必要と判断されるケースもあったり、ユーザーから「アプリを使っていたら、実際に人と話してみたくなった」との声も上がってくるという。「こころコンディショナー」ではそのようなニーズに対して、face-to-faceの遠隔相談機能で応じている。
【トークショー】「コロナ禍をきっかけに自分を見つめ直し、自分らしく生きていく!」
司会 海原 純子 先生 心療内科医・産業医、日本医科大学 特任教授、ジャズ歌手、エッセイストコロナ禍でのストレスが怒りの感情となって、職場や家庭の人間関係に影響し、悩みをかかえている方が多い。人間関係の距離の取り方が難しくなり、家庭では距離が短く、会社では距離は離れて、今までは見なくてよかったものが見えてくる。その距離感をいかにコントロールしていくのか?大野先生と海原先生は、自分をほめれるようになることの大切さについて語り、そして、コロナ禍をきっかけに自分を見つめ直し、自分らしく生きていくことを提案する。 〔Special Talkの話題〕コロナ禍でうっ憤が溜っている方が増えている・・/怒りとらわれたとき、どうすれば抜け出せる・・/意外と若い方に悩みが多い・・/デジタルツールを上手に活用するには・・/朝の行動習慣は役に立ちそうですね・・/最近アルコールの量が増えたという方が多い・・/自分の嫌なことをしっかり見て、解決する姿勢が・・/こころコンディショナーを効果的に使うには・・/心を整えるスキルはどのように・・/結果が重視され、自己肯定感が低下する・・
<全国生活習慣病予防月間2022概要> ■共催 一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 NPO法人 セルフメディケーション推進協議会 ■協賛株式会社タニタ、リボン食品株式会社、株式会社明治、サラヤ株式会社、松谷化学工業株式会社
■後援 厚生労働省、公益財団法人 健康・体力づくり事業財団、健康日本21推進全国連絡協議会、公益財団法人 8020推進財団、公益財団法人 循環器病研究振興財団、公益社団法人 アルコール健康医学協会、公益財団法人 日本糖尿病財団、一般社団法人 動脈硬化予防啓発センター、一般社団法人 日本サルコペニア・フレイル学会、一般社団法人 日本肥満学会、一般社団法人 日本肥満症予防協会、一般社団法人 日本くすり教育研究所、一般社団法人 日本産業保健師会、日本保健師活動研究会、特定非営利活動法人 日本人間ドック健診協会、日本健康運動研究所
■生活習慣病予防 お役立ちツール スローガンの川柳を使用したポスター、リーフレットは当協会サイト「生活習慣病予防 お役立ちツール」で自由にダウンロード可能です。ぜひご活用ください。