2017年11月24日
くるみの食欲抑制効果メカニズム解明 嗜好も健康的に変化
適度にくるみを摂取することが肥満者の減量や2型糖尿病の発症予防・血糖管理に役立つと報告されているが、そのメカニズムは明確でない。
しかし最近、fMRIを用いた検討から、くるみの摂取が中枢神経系に働き脳内の活動を変化させ、食欲を抑制したり、健康に良い食品を選択し摂取するように変わる可能性が明らかになった。ハーバード大医学部の研究グループによる報告で、「Diabetes, obesity & metabolism」誌のオンライン版に掲載された。
くるみ摂取の脳への影響を、くるみ疑似食と比較すると...?
この研究にはBMI30以上の成人肥満者10名が参加。1日に48gのくるみを含むスムージ(以下、くるみ食と省略)、または、カロリー・脂肪含量が同じで外観や味・食感などからは区別のつかない、くるみフレーバーを用いたプラセボ食(くるみ疑似食)のいずれかを、研究施設への入院管理下にて5日間連続で摂取してもらった。 5日間経過後に被験者は施設からいったん退院し、5週間のウオッシュアウト期間(その間は通常の食事摂取)をおいて再度入院してもらい、1回目の試験期間とは別の試験食(例えば、1回目にくるみ食が割り当てられていた場合、2回目はプラセボ食)を5日間摂取してもらった。なお、双方の試験期間中、試験食以外の食事は両群で同じ内容とし、摂取カロリーが同等になるように管理された。 それぞれの5日間の試験の最終日に、被験者は食事イメージの画像を見ながらfMRI検査を受けた。その際に用いられた画像は、好まれやすいが高カロリー・高脂肪で健康に良くないもの(例えばケーキ)と、好まれにくいが低カロリーで健康的なもの(例えば野菜)、および、食べ物以外(例えば花や岩)の三つのカテゴリーに分けられていて、合計約150枚の画像がランダムに表示されるように設定されていた。また、この検査とは別に、被験者自身がビジュアルアナログスケール(VAS)を用いて空腹感・満腹感を主観的に評価した。 被験者10名中男性6名、年齢は51±3歳、BMI 37.0±2.6で、1名(女性)はfMRI検査を完了できなかったため、最終的には9名を解析対象とした。くるみ摂取で空腹感が抑制され、少量の食事で満足
まず、空腹感・満腹感のVASスケールによる評価の結果をみると、くるみ食を摂取後はプラセボ食摂取後に比べて空腹感が有意に低く抑えられていた(くるみ食6.12±1.16 vs プラセボ食7.65±0.99,p<0.05)。同様に、くるみ食を摂取後にはより大きな食欲の低下が観察された(同順に、6.44±1.01 vs 7.55±0.99,p<0.04)。くるみ摂取後は、好まれにくくても健康的な食品を見ると、脳の右島皮質が活性化する
次にfMRIによる検討の結果をみると、くるみ摂取後には、好まれやすいが健康には良くない食品の画像を見た時に比べ、好まれにくいが健康的な食品の画像を見た時のほうが、満足感や満腹感に関与する脳内の右島皮質という部分の活性が高まることがわかった(図)。また、右島皮質の活性レベルがより高まるに従い、空腹感が少なくなり(r =−0.63、p<0.045)、食欲は低下する(r = −0.67、P <0.035)という逆相関の関係も示された。 右島皮質は食行動に関連すると考えられている。肥満や2型糖尿病でこの右島皮質の活性化が観察される一方で、衝動性に逆相関することも示されており、例えば食べてはいけないものを食べるときに反応するとの報告もある。この点について本論文の著者らは、右島皮質が活性化したことは、好まれやすいが不健康な食品の摂取の減少につながる情動抑制を示していると考えられ、それがくるみ摂取による肥満者の食事摂取量減少や代謝パレメータの改善につながるのではないかと考察している。くるみ食またはプラセボ食を摂取した後のfMRIの変化
*Zスコア:画像検査上の変化の程度を表す値。スコアが大きいほどその部位の活性が強く変化していることを表す。〔Diabetes Obes Metab. 2017 Jul 17より引用〕くるみなどのナッツ類は、米国糖尿病学会も推奨
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