2015年10月01日
小児1型糖尿病患児の学校生活に関する調査結果を公開
キーワード: 糖尿病
小学校に通う1型糖尿病患児をとりまく環境は?
現在、1型糖尿病患者さん、特に小児の患者さんをとりまく生活環境についてまとめた調査は少なく、現場の声が社会に届けられる機会がなかなかありません。また、患者数の少なさから、同じ境遇のお子さんとそのご家族との出会いが少なく、情報交流の機会創出が強く求められています。
そこで、学校生活と治療の両立がどのように行われているかを患者さんご本人(小学生、あるいは小学生時代の記憶から)、そして患者さんをサポートするご家族や学校の先生、主治医・医療スタッフそれぞれにアンケート調査を行いました。
調査結果によると、患児本人の頑張りに委ねられている現状とともに、学校側は学校全体の支援というよりも、担任の先生の理解、支援に頼っている一面があることが浮き彫りになりました。
以下に、調査結果の一部を紹介します。
患者さんの回答から
- 83%の患者さんが「担任の先生」へ糖尿病のことを知らせている。45%が「クラス全員」にも知らせている。
- 4割の患者さんが、糖尿病があることでクラスメイトにからかわれたり、いじめられた経験がある。
- からかわれるきっかけは、「糖尿病という名称」と感じている人が47%。
- 学校生活では、担任の先生や養護教諭が「必要な時は助けてくれた」(37%)、「いつも助けてくれた」(27%)、そして「こちらが助けを求めた時のみ助けてくれた」(17%)。
- 学校生活の中で、人の助けが必要になるような低血糖になったことがある人。「何度かある」19%、「1度ある」3%、「頻繁にあった」1%。
- 学校で低血糖になっても、対処できるのは「患者本人のみ」という状況が伺える。
患者さんのご家族の回答から
- 98%の家族(親)が、お子さんの糖尿病について「担任の先生」に知らせている。
- 学校でのお子さんの状況は、「親の方から聞き出せる範囲で把握している」人が53%と最も多い。
- 学校からの報告や学校関係者との接触は、生活の変化があった時や緊急時のみという場合が多い。
- 学校関係者、医療従事者(主治医など)、家族の3者面談は27%が入学時に実施。行ったことがない、必要ないとの回答が35%。
- お子さんが低血糖になった際、「本人自身による応急処置を見守ってほしい」と学校へ伝えている親が76%。
糖尿病内科/小児科の医療従事者の回答から
- 90%の医療従事者が「糖尿病のことを学校関係者へ知らせるよう家族へ指導」している。
- 学校関係者と接触する機会は33%が年1回程度。半数以上がほとんど接触なし。
- 患児の成長による小児科から糖尿病内科への転科は、3割が「概ねうまくいっている」が、3割が「うまくいかないことが多い」。
- 20歳過ぎても小児科へ通院する患者さんは「いる」と半数が答え、15%は「沢山いる」とのこと。
養護教諭など学校関係者の回答から
- 96%の養護教諭が「1型糖尿病」を知っている。
- 1型患児の受け持ち経験は37%。
- 生徒の病気については「親御さんからの連絡」による情報が最も多く78%。
- 生徒の親御さんから学校側へ医療的ケアや配慮を依頼された際、4割が「引き受けるかどうかはその都度検討」、3割が「できる限り対応」。
- 81%が、保健室で「インスリン注射や血糖測定を行う場所の提供」が可能。
- 生徒が低血糖を起こした際の対処方法を、52%が「知っており、対応経験ある」、41%が「知っているが、対応経験はない」。
- 校内でグルカゴン注射を使える人は7割が「いない、わからない」。
調査概要
- テーマ:小児1型糖尿病患児の治療環境に関する4者対象アンケート調査
- アンケート対象者:
1)15歳位までの糖尿病患者さんとご家族
2)糖尿病内科/小児科の医療従事者
3)養護教諭(保健の先生) - アンケート回答方法:インターネット
1)糖尿病ネットワークメルマガ登録者(患者さん向け13,900名)
2)糖尿病リソースガイドメルマガ登録者(医療従事者向け12,500名)
3)日本くすり教育研究所の協力
*養護教諭の登録約200名
(小学校132名、中学校52名、高校5名、大学21名)へ - アンケート実施期間:平成27年4月28日〜6月10日(44日間 )
- 有効回答数:患者さん212名(ご本人115名、家族97名)
糖尿病内科/小児科の医療従事者52名
養護教諭27名 - 主催:糖尿病ネットワーク(日本医療・健康情報研究所)
- 協力:日本メドトロニック株式会社
[mhlab]