日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

インスリン療法中の糖尿病患者2,650人の調査結果を発表!

キーワード: 糖尿病

 今年3月に、糖尿病ネットワークで実施した「インスリン療法と医療費に関するアンケート」(委託者:日本イーライリリー株式会社)の調査結果を公表した。長期間にわたる医療費負担を求められる糖尿病のインスリン療法患者を対象に、現在の治療と医療費に対する考えを聞き、安心して治療を継続するためにどのようなことを求めているかを探った。

インスリン療法と医療費に関するアンケート
インスリン療法と医療費に関するアンケート

 現在、糖尿病治療を行っている約890万人の患者の中で、インスリン療法を行っているのは約100万人と言われている。この治療を行っているのが、膵臓からのインスリン分泌がほとんどない1型糖尿病患者と、血糖コントロールをより安定させるためにインスリン療法が必要な2型糖尿病患者。インスリン療法は、患者数の多い2型患者が多くを占めるが、1型患者は絶対数は少ないものの命をつなぐために欠かせない治療法となっている。

 アンケートは、インスリン療法中の糖尿病患者を対象にインターネットで行われ、全国から2,650名(1型患者949名、2型患者1,594名、妊娠糖尿病などその他の患者107名)の有効回答が得られた。質問は大きく分けて、「現在受けているインスリン治療」と「医療費」の2つのテーマで40問余りに及んだが、すべてにおいて丁寧かつ真摯な思いのこもった回答を頂戴することができた。

2011年国民健康・栄養調査

9割の患者が「医療費の負担」感じるも
主治医に相談したことない

 糖尿病ネットワークで過去にも何度か聞いたことがある質問であるが、まずは医療費の負担感をうかがったところ、86%が「負担である」と答え、中でも40%は「たいへん負担である」とのことだった。医療費(自己負担額)は「10,000〜15,000円未満」が最も多く約4割。全体で約7割の患者が毎月1万円以上を支払っており、年間20万円を超える人も多くいた。生活保護や人工透析などで医療費助成がない限り、年収が1千万を超える人も200万円以下であっても、負担額は変わらないので、無職の人やパート・アルバイト等、安定した収入がない人は負担感が非常に高い。しかし、インスリンが命綱となっているので、やめたくてもやめられない。だから払えなかったら死ぬしかない、と考える患者も多い。調査でも、医療費を支払うために生活をきりつめ、食費を抑えているという人が45%いた。そして、医療費の支払いが苦しくても、主治医に「相談したことがある」人は1割で、「相談したいけどしたことがない」人は4割にも上った。


 現在受けている治療に対する満足感を聞いたところ、約半数は「満足している」と答え、「不満」に感じている人は1割強にとどまった。治療自体への満足感は高いものの、糖尿病治療で不満に感じている点では、約8割が「医療費」と答え、約半数が「長期の治療が必要/治らない」、2割が「治療効果を実感できない」と続き、医療費が重くのしかかっている現状がここでも見受けられた。

 さらに、治療をやめたいと考えたことがあるか?について聞いたところ、44%が「ある」と答え、14%は「何度もある」とのことだった。その理由としても、約8割が「医療費負担が重い」が1位。現在日本では、糖尿病の治療中断・未治療者が糖尿病と診断された人の約半数(約400万人)いるとされているが、医療費負担はその大きな理由の1つになっていると考えられる。

患者のライフスタイルや経済状況を
視野に入れた治療方針が求められる


 現在、沢山のインスリン製剤が発売されており、発現・作用時間、注射回数、価格などはそれぞれ異なる。そこで、インスリン療法を開始する際に、インスリン製剤を誰がどのように決め、患者は選択肢の提示や説明を受けたかを聞いたところ、9割の患者が主治医の勧めに従って使用するインスリン製剤を決め、選択肢の提示を受けた人は4人に1人だった。さらに、同等の効果でもっと価格の安いインスリン製剤があったら使いたいか?との問いには、9割の患者が「使いたい(切り替えたい)」と答えた。今回、医療費を大きなテーマにしていることもあり、とくに“価格”が注視されているが、主治医には、患者ごとの治療方針、コントロール状態はもちろん、ライフスタイルや経済状況なども加味しながら、選択肢を提示してほしいとの思いが垣間見える。

 本調査について、弘世貴久先生は(東邦大学医学部内科学講座糖尿病代謝内分泌学分野教授)は、「糖尿病患者さんから治療費についてあまり相談されたことがありませんでしたが、ここまで負担を感じておられるとは、正直想像していませんでした。患者さん方が糖尿病、そしてインスリンと上手に付き合っていけるよう、医師としてきちんと治療選択肢を提示し、患者さんと話し合っていくことが非常に重要であると感じました。ぜひ、患者さんからも躊躇することなく、医療費の問題など治療に関する疑問について、どんどん医師に相談していただきたい」とコメントを寄せている。

 調査では、回答者からの膨大なコメントが寄せられ、その一部も紹介している。また今後、クロス集計などの追加データも随時効果時していく予定。  本調査結果が、インスリン療法患者の実情とその思いを広め、医療費負担の深刻さ、治療への理解を深めていただくきっかけになることを心から願いたい。

「インスリン療法と医療費に関するアンケート」調査結果

関連情報

糖尿病の医療費・保険・制度
治療内容などいくつかの条件を定めて医療費を試算し、糖尿病ネットワークで実施したアンケート結果と併せてご紹介します。ひとつの目安としてご覧ください。

[mhlab]

関連トピック

疾患 ▶ 糖尿病

2023年10月20日
インスリン・フォー・ライフ(IFL)グローバル
最近の活動と取組みについて(アリシア・ジェンキンス代表)
2023年09月15日
2023年インスリン・フォー・ライフ(IFL)のウクライナ支援(IDAF)
2023年07月12日
日本人の自覚症状のトップは男女とも腰痛。高血圧、糖尿病、脂質異常症での通院が上昇!
~国民の健康、介護、貯蓄に関する「令和4年国民生活基礎調査」(厚労省)~
2023年05月30日
健康日本21で日本人はどのくらい健康になった?
~第二次最終報告書と年次推移を図解~
Part 1 メタボリックシンドローム、糖尿病、脳・心血管疾患の目標達成率
2022年11月18日
重要性を増す街中の「ゆびさきセルフ(検体)測定室」の役割! ~検体測定室連絡協議会「世界糖尿病デー・健康啓発セミナー2022」~
市民公開講演会参加者募集中!
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート