2013年06月19日
インスリン療法中の糖尿病患者2,650人の調査結果を発表!
キーワード: 糖尿病
現在、糖尿病治療を行っている約890万人※の患者の中で、インスリン療法を行っているのは約100万人と言われている。この治療を行っているのが、膵臓からのインスリン分泌がほとんどない1型糖尿病患者と、血糖コントロールをより安定させるためにインスリン療法が必要な2型糖尿病患者。インスリン療法は、患者数の多い2型患者が多くを占めるが、1型患者は絶対数は少ないものの命をつなぐために欠かせない治療法となっている。
アンケートは、インスリン療法中の糖尿病患者を対象にインターネットで行われ、全国から2,650名(1型患者949名、2型患者1,594名、妊娠糖尿病などその他の患者107名)の有効回答が得られた。質問は大きく分けて、「現在受けているインスリン治療」と「医療費」の2つのテーマで40問余りに及んだが、すべてにおいて丁寧かつ真摯な思いのこもった回答を頂戴することができた。
※2011年国民健康・栄養調査
主治医に相談したことない
糖尿病ネットワークで過去にも何度か聞いたことがある質問であるが、まずは医療費の負担感をうかがったところ、86%が「負担である」と答え、中でも40%は「たいへん負担である」とのことだった。医療費(自己負担額)は「10,000〜15,000円未満」が最も多く約4割。全体で約7割の患者が毎月1万円以上を支払っており、年間20万円を超える人も多くいた。生活保護や人工透析などで医療費助成がない限り、年収が1千万を超える人も200万円以下であっても、負担額は変わらないので、無職の人やパート・アルバイト等、安定した収入がない人は負担感が非常に高い。しかし、インスリンが命綱となっているので、やめたくてもやめられない。だから払えなかったら死ぬしかない、と考える患者も多い。調査でも、医療費を支払うために生活をきりつめ、食費を抑えているという人が45%いた。そして、医療費の支払いが苦しくても、主治医に「相談したことがある」人は1割で、「相談したいけどしたことがない」人は4割にも上った。
現在受けている治療に対する満足感を聞いたところ、約半数は「満足している」と答え、「不満」に感じている人は1割強にとどまった。治療自体への満足感は高いものの、糖尿病治療で不満に感じている点では、約8割が「医療費」と答え、約半数が「長期の治療が必要/治らない」、2割が「治療効果を実感できない」と続き、医療費が重くのしかかっている現状がここでも見受けられた。
さらに、治療をやめたいと考えたことがあるか?について聞いたところ、44%が「ある」と答え、14%は「何度もある」とのことだった。その理由としても、約8割が「医療費負担が重い」が1位。現在日本では、糖尿病の治療中断・未治療者が糖尿病と診断された人の約半数(約400万人)いるとされているが、医療費負担はその大きな理由の1つになっていると考えられる。
視野に入れた治療方針が求められる
現在、沢山のインスリン製剤が発売されており、発現・作用時間、注射回数、価格などはそれぞれ異なる。そこで、インスリン療法を開始する際に、インスリン製剤を誰がどのように決め、患者は選択肢の提示や説明を受けたかを聞いたところ、9割の患者が主治医の勧めに従って使用するインスリン製剤を決め、選択肢の提示を受けた人は4人に1人だった。さらに、同等の効果でもっと価格の安いインスリン製剤があったら使いたいか?との問いには、9割の患者が「使いたい(切り替えたい)」と答えた。今回、医療費を大きなテーマにしていることもあり、とくに“価格”が注視されているが、主治医には、患者ごとの治療方針、コントロール状態はもちろん、ライフスタイルや経済状況なども加味しながら、選択肢を提示してほしいとの思いが垣間見える。
本調査について、弘世貴久先生は(東邦大学医学部内科学講座糖尿病代謝内分泌学分野教授)は、「糖尿病患者さんから治療費についてあまり相談されたことがありませんでしたが、ここまで負担を感じておられるとは、正直想像していませんでした。患者さん方が糖尿病、そしてインスリンと上手に付き合っていけるよう、医師としてきちんと治療選択肢を提示し、患者さんと話し合っていくことが非常に重要であると感じました。ぜひ、患者さんからも躊躇することなく、医療費の問題など治療に関する疑問について、どんどん医師に相談していただきたい」とコメントを寄せている。
調査では、回答者からの膨大なコメントが寄せられ、その一部も紹介している。また今後、クロス集計などの追加データも随時効果時していく予定。 本調査結果が、インスリン療法患者の実情とその思いを広め、医療費負担の深刻さ、治療への理解を深めていただくきっかけになることを心から願いたい。
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糖尿病の医療費・保険・制度
治療内容などいくつかの条件を定めて医療費を試算し、糖尿病ネットワークで実施したアンケート結果と併せてご紹介します。ひとつの目安としてご覧ください。