日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

DPP-4阻害薬の変更による血管内皮機能改善の上乗せ効果

キーワード: 糖尿病 動脈硬化 心筋梗塞/狭心症 脳梗塞/脳出血

 DPP-4阻害薬のシタグリプチンからアログリプタン切り換えにより、HbA1cや血圧、脂質は変化しないものの、血管内皮機能(FMD)が改善する可能性が、第55回日本糖尿病学会年次学術集会(5月17〜19日、横浜)で報告された。武田クリニック(神奈川県伊勢原市)酒井貴子氏による発表。

 複数のDPP-4阻害薬が使用可能となり、各薬剤の血糖降下作用の差を検討した報告もみられ始めている。一方、DPP-4阻害薬は基礎的研究から血糖降下以外の多面的な血管・臓器保護作用が示されており、臨床での効果が期待されている。しかし血管イベントや臓器障害の発生率を比較するには長期にわたる観察が必要なため、各種DPP-4阻害薬の血管・臓器保護効果の差異は、まだ明らかでない。

 酒井氏らは、治療法変更による血管への効果を短期間で把握し得るとされる血管内皮機能(Flow Mediated Dilation.FMD)に着目。シタグリプチンからビルダグリプチンまたはアログリプチンに切り換えた場合の変化を少数例で検討し、いずれの薬剤への変更でも、FMDの有意な変化はみられなかったことを既に報告している。

 そのときの検討でアログリプチンへの切り替えた群では有意ではないもののFMD改善傾向がみられたため、症例数を増やし同様の検討を行い、その結果を今回発表した。

HbA1c、血圧、TG、HDL-Cは変化なし
 検討対象は同院の2型糖尿病患者のうち、シタグリプチンが3カ月以上投与されている18例(年齢65.4±12.2歳、罹病期間12.4±5.6年、HbA1c6.8±0.5%〈JDS〉)。DPP-4阻害薬をアログリプチンに切り替え3カ月以上経過した時点のFMDと各種臨床指標を、切り替え前と比較した。なお、FMDは駆血開放後の血管径を駆血前値を基準に百分率で表す「%FMD」で評価した。併用薬として、BG薬が11例、SU薬が10例、チアゾリジン薬が9例、α-GIが1例に使用されており、試験期間中これらは変更しなかった。

 結果は、HbA1cは切り替え前6.8±0.5%、切り替え後6.5±0.7%(p<0.619)、収縮期血圧は同順に131.9±10.7mmHgが133.4±14.2mmHg(p<0.723)、拡張期血圧は78.3±7.9mmHgが78.5±8.0mmHg(p<0.911)、TGは161.9±81.6mg/dLが157.9±86.2mg/dL(p<0.814)、HDL-Cは59.5±23.8mg/dLが59.2±23.2mg/dL(p<0.842)であり、いずれも有意な変化はみられなかった。

 ただし、随時血糖は177.1±59.5mg/dLから147.2±56.9mg/dL(p<0.037)と有意に低下し、血清クレアチニンは0.82±0.15mg/dLから0.80±0.17mg/dL(p<0.067)と低下傾向を示した。

%FMDは有意に改善
 %FMDは切り替え前3.9±1.7%で切り替え後4.8±1.8%(p<0.014)と、有意に改善していた。

シタグリプチンからアログリプチンへの切り替え後のFMDの変化

 FMDは測定時の血糖によっても変化すると報告されており、今回の結果は前記の随時血糖の変化の影響も否定できない。しかしその一方で、FMDは治療法の変更に短期間で反応する鋭敏な指標としても用いられつつあり、今回報告された有意な改善も、DPP-4阻害薬切り替えによる血糖や血圧、脂質とは独立した血管障害抑制作用を表すものである可能性が考えられる。


 同氏は今後、症例数をさらに増やし、各臨床指標との相関をプロスペクティブに検討していく予定という。


関連情報:
塩分の多い食事は、食直後から血管内皮機能(FMD)を低下させる
血管内皮機能は血糖変動と逆相関し鋭敏に変化する
大豆イソフラボンがTGを低下させ、FMDを改善
平成24年度診療報酬改定について(厚生労働省)
ミグリトールは冠動脈疾患併発糖尿病患者の血管内皮機能を改善する
FMD低値は糖尿病発症の予測因子。ドックなどでは精密検査を
肥満2型糖尿病では、精神的ストレス軽減が血管内皮機能改善につながる
網膜症のある女性糖尿病患者は血管内皮機能(FMD)低下ハイリスク
HDL-Cの血管内皮機能(FMD)保護作用は糖尿病で相殺される
仮面高血圧合併2型糖尿病では血管障害(FMDやPWV)が高度に進展
DPP-4阻害薬は血管内皮機能(FMD)を改善する
脳や心臓の血管が詰まる前に。血管の若返りがわかる検査指標「FMD」
動脈硬化が早期にわかるFMD検査装置
血管内皮機能、FMD検査のユネクス
一般向けサイト 動脈硬化の進展を知る「FMD検査.JP」

[mhlab]

関連トピック

疾患 ▶ 糖尿病

2023年10月20日
インスリン・フォー・ライフ(IFL)グローバル
最近の活動と取組みについて(アリシア・ジェンキンス代表)
2023年09月15日
2023年インスリン・フォー・ライフ(IFL)のウクライナ支援(IDAF)
2023年07月12日
日本人の自覚症状のトップは男女とも腰痛。高血圧、糖尿病、脂質異常症での通院が上昇!
~国民の健康、介護、貯蓄に関する「令和4年国民生活基礎調査」(厚労省)~
2023年05月30日
健康日本21で日本人はどのくらい健康になった?
~第二次最終報告書と年次推移を図解~
Part 1 メタボリックシンドローム、糖尿病、脳・心血管疾患の目標達成率
2022年11月18日
重要性を増す街中の「ゆびさきセルフ(検体)測定室」の役割! ~検体測定室連絡協議会「世界糖尿病デー・健康啓発セミナー2022」~

疾患 ▶ 脳梗塞/脳出血

2023年05月30日
健康日本21で日本人はどのくらい健康になった?
~第二次最終報告書と年次推移を図解~
Part 1 メタボリックシンドローム、糖尿病、脳・心血管疾患の目標達成率
2022年10月07日
10月8日は、糖をはかる日です。
血糖のことを知り、はかって、血管を守ろう!
2022年07月13日
熱中症? いや、脳梗塞かもしれない! Part 2
脳梗塞予防の決め手は血管力のアップと牛乳パワー
2022年07月13日
熱中症? いや、脳梗塞かもしれない! Part 1
症状の見分け方と対策
2021年09月15日
ピーナッツを食べると脳卒中リスクが低下 不飽和脂肪酸や食物繊維などが豊富 日本人7万人超を調査

疾患 ▶ 心筋梗塞/狭心症

2023年05月30日
健康日本21で日本人はどのくらい健康になった?
~第二次最終報告書と年次推移を図解~
Part 1 メタボリックシンドローム、糖尿病、脳・心血管疾患の目標達成率
2022年10月07日
10月8日は、糖をはかる日です。
血糖のことを知り、はかって、血管を守ろう!
2021年02月09日
くるみなど植物由来のオメガ3脂肪酸を豊富に含む食生活で心筋梗塞後の死亡リスクが低下
2020年09月29日
新型コロナウイルス感染症対策としてのステイホームやリモートワークが高尿酸血症や痛風の有病率および受診率に及ぼす影響 ―医師338名への緊急アンケートから見えてきた現状―
2019年11月28日
「10月8日は、糖をはかる日2019」講演会レポート & 血糖値アップダウン写真コンテスト優秀作品公開

疾患 ▶ 動脈硬化

2023年05月30日
健康日本21で日本人はどのくらい健康になった?
~第二次最終報告書と年次推移を図解~
Part 1 メタボリックシンドローム、糖尿病、脳・心血管疾患の目標達成率
2022年10月07日
10月8日は、糖をはかる日です。
血糖のことを知り、はかって、血管を守ろう!
2019年11月28日
「10月8日は、糖をはかる日2019」講演会レポート & 血糖値アップダウン写真コンテスト優秀作品公開
2019年08月15日
「10月8日は、糖をはかる日」講演会2019 参加者募集開始!
2019年08月15日
「10月8日は、糖をはかる日」2019年写真コンテスト作品募集開始!
市民公開講演会参加者募集中!
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート