2012年03月04日
ミグリトールは冠動脈疾患併発糖尿病患者の血管内皮機能を改善
対象は同院病の2型糖尿病患者のうち、冠動脈疾患併発している50名。冠動脈疾患の存在は、50%以上の狭窄、心筋梗塞の既往、PCIまたはCABGの施行歴があることで定義した。
対象を無作為に25名ずつ2群に分け、一群にはミグリトール150mg/日を、対照群には別のα-GIであるボグリボースを0.6mg/日を、ともに3カ月間投与した。試験開始1カ月後のHbA1cが7.0%を上回っていてコントロール不良と判断された場合は、他のカテゴリーの血糖降下薬、主にSU薬が処方された。試験開始時における両群患者背景の主要項目に有意差はなかった。
試験開始前と終了時に、血液生化学的検査(総コレステロール、HDL-C、LDL-C、トリグリセライド、空腹時血糖、HbA1c、1,5-AG、クレアチニン、CRP)を施行するとともに、インスリン抵抗性指数(HOMA-R)を算出し評価した。血管内皮機能は非侵襲で測定可能なFMD(Flow Mediated Dilation)により、駆血前値と駆血開放後の最大値の差を駆血前値を基準に百分率で示す「%FMD」により評価した。FMDの測定は2名の熟練した技師があたり、どちらの群に割り付けられた患者かを盲検化したうえで測定した。
なお、1型糖尿病患者、既にα-GIを投与されている患者、血清クレアチニン値2.5mg/dL以上、HbA1c8%以上、FMD7%以上等の患者は対象から除外した。HbA1c8%以上を除外したのは、高度な高血糖が持続している場合、食後高血糖の評価に適している1,5-AGの体内プールが減少し、改善効果の判定が困難になることによる。またFMDの基準値が6%以上であることから、FMD7%以上の患者は血管内皮機能改善効果の評価が困難になるとの同様の理由で除外された。
試験期間中にミグリトール群で1名、ボグリボース群で4名が、副作用またはコンプライアンス不良のためにドロップアウトした。試験期間中にSU薬併用を要したケースはボグリボース群で多かったが、有意な差はなかった。
インスリン抵抗性指数のHOMA-Rと炎症マーカーのCRPは、ボグリボース群では有意な変化はなく、ミグリトール群でのみ有意に改善していた。同様に、血管内皮機能を表す%FMDも、ボグリボース群では有意な変化はなく、ミグリトール群でのみ有意に改善していた。
また、食後高血糖と並ぶ食後代謝異常の表現形として注目されつつあるトリグリセライドについては、試験の全期間を通じてミグリトール群では減少し、ボグリボース群では上昇していた。ただし試験終了時においては両群間に有意差はなかった。
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血糖関連指標と%FMDそれぞれの変化量の相関をみると、HbA1cと%FMDの変化量については有意な相関がみられなかったが、1,5-AGと%FMDの変化量には有意な相関がみられた(r=0.49,p=0.001)。また、重回帰分析により、ミグリトールの使用と1,5-AGが、%FMDの独立した規定因子であることが示された。ミグリトールがHbA1cではとらえにくい食後血糖降下作用を介して、血管内皮機能を改善することを示唆している。
最近、ミグリトールは食後高血糖を改善することで血清インスリンレベルを抑制し、それによってインスリン抵抗性を改善すること、そしてイスンリン抵抗性改善よってICAM-1やVCAM-1などの接着分子を抑制することが報告されている。
これらの報告と本試験の結果より著者らは、ミグリトールが他のα-GIよりも強力に食後高血糖を是正することがインスリン抵抗性改善につながり、抗炎症作用とともに血管内皮機能保護作用をもたらすのではないかと述べ、同薬が2型糖尿病患者の動脈硬化と冠動脈疾患を抑制するかもしれないと考察している。
なお、本試験にいおいて、α-GIという同じカテゴリーに属するボグリボース群では、有意でないもののHOMA-Rが上昇しており、インスリン抵抗性改善が認められなかった。この一見矛盾する結果について、著者らはボグリボース群においてSU薬併用を要する率がミグリトール群よりもやや高かったことが関係している可能性を挙げている。
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