わが国の疾病構造は昭和30年代から大きく変貌し、結核が国民病といわれた感染症時代から、そのトンネルを抜けた後は非感染症時代として悪性新生物(がん)、脳血管疾患、心疾患が三大死因となっています。このような状況の中で、わが国の行政は「成人病」対策と取り組んで参りました。しかし、ここで行なわれた主要な対策は、いわゆる「成人病」の早期発見・早期治療であり、医療費の節減という点でも限界のあることが示され、平成8年12月に「成人病」に変わる新しい疾病概念として「生活習慣病」が提言され今日に至っています。
この間、厚生労働省は毎年2月の第1週を「生活習慣病予防週間」として啓発に尽力されてきましたが、平成20年にこの活動に終止符が打たれたという事情を踏まえて、本協会はこのコンセプトを継承する形でここに「全国生活習慣病予防月間」を主催することと致しました。
「生活習慣病」は「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」として定義されます。この根底には当然のことながら遺伝の重みがあります。しかし遺伝のみでの発症・進展が、そうはたやすくは起こり得ないという疫学的事実を踏まえるとき、喫煙、飽食、大量飲酒、運動不足、不十分な休養、ストレス過多等の生活習慣の改善が強く求められます。その具体策が「一無(禁煙)、二少(少食、少酒)、三多(多動、多休、多接)」に集約されます。
日本生活習慣病予防協会はこの「一無、二少、三多」をスローガンにこれまで積極的な啓発活動を展開して参りましたが、ここに全国生活習慣病予防月間を柱に更なる対応をはかっていくことと致しましたのでご関係各位のご協賛、ご支援、ご協力をお願い致す次第です。これの成果がわが国における医療費の節減に結びつき、「一無、二少、三多」の良い健康習慣が多く実践されることで、健康指標である平均寿命の有意な延伸を期待するものであります。
なお、本年から6年間につきましては主要テーマを「一無、二少、三多」から順次取り上げて参ります。そこで今年のテーマは“「一無」(無煙、禁煙)”と致しましたので、ご理解を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。