禁煙指導の専門家から
『紫煙の怖さと生活習慣病予防』
中央内科クリニック院長 村松 弘康 先生
4.禁煙のメリット
タバコの燃え方は、くすぶるような不完全燃焼であり、その煙からは一酸化炭素、活性酸素のみならず、ダイオキシン類を含む60種類以上の発癌性物質が検出されます。喫煙とは、これらの有害物質をダイレクトに肺へ吸い込み、また肺の毛細血管から血液中に取り込む行為です。肺ガンを例にすると、1日1箱吸うと死亡リスクは約5倍。禁煙をすることで、これらの疾患の発病リスクを軽減できるのですから、禁煙のメリットは極めて大きいと言えます。
よく「今さら禁煙しても遅いのでは?」という質問を受けますが、前項で述べた心血管病変のリスクは、禁煙をすると速やかに減少します。禁煙したその日から、活性酸素による血管内皮障害や、ニコチンによる血管収縮作用はなくなるので、何歳からでも禁煙する価値は大いにあるのです。
かく言う私も元喫煙者ですが、その私から見ても喫煙はデメリットばかりでした。タバコ代だけでなく、いちいちタバコを買いに行く手間や、吸う場所を探す手間がかかる。歯だけでなく部屋の壁紙もヤニで汚れる。受動喫煙で他人にも病気のリスクを負わせてしまう等々、考えてみると良くないことばかり。禁煙すれば、これらのデメリットは全てなくなるのです。
完全に禁煙すると、これまでタバコのメリットと感じていたイライラの解消も、実は勘違いであったことが分かります。ニコチン依存に陥ると、血中のニコチン濃度が減少してくる度に、イライラしたり集中力がなくなってくるように感じます。ここでタバコを吸い、ニコチンの血中濃度が回復すると、これらの離脱症状(禁断症状のようなもの)がなくなるため、ホッとする。この感覚が“タバコは美味しい”と勘違いさせているのです。本来ニコチン依存になっていなければ、このようなイライラや集中力低下自体も生じないのです。
忙しく仕事をしていれば、誰もがイライラや疲労を感じるものです。そんな時、席を離れて喫煙所まで行き(あるいは喫煙所を探しまわり)、“一服”休憩することが気晴らしになっているのではないでしょうか。しかし、禁煙に成功すると、疲れてきたら少し離席して休憩するだけで、タバコなどなくてもリフレッシュができることに気づきます。むしろ体調が良くなっていることも実感するのです。