禁煙指導の専門家から
『紫煙の怖さと生活習慣病予防』
中央内科クリニック院長 村松 弘康 先生
2. 副流煙と受動喫煙の弊害
副流煙は主流煙より有害です
紫煙の怖さは主流煙と副流煙によっています。 「副流煙の方が有害」という話をお聞きになったことはないでしょうか。主流煙とはフィルターを通して喫煙者本人が吸い込む煙であり、副流煙とは火のついたタバコの先端から立ち上る煙です。タバコを吸うと、先端の火の部分には酸素が引き寄せられ、燃焼温度が上昇するため赤く光ります。この時の先端の温度は900℃にも達するため、主流煙中の有害物質は多くが分解されてしまいます。さらにフィルターも通すため、主流煙の有害物質はさらに低下します。
一方の副流煙は、ただ手に持っている時に立ち上る燃焼温度の低い煙です。有害物質の多くが分解されずに含まれており、またフィルターも通していないため、非常に危険な煙と言えます。これこそ紫煙の怖さだといっても過言ではないでしょう。厚生労働省の研究でも、副流煙には主流煙の100倍以上もの濃度で含まれる有害物質が、いくつも確認されているのです。このことは、部屋の中で副流煙が100倍に薄まったとしても、同じ部屋にいる人は主流煙を吸ったのと同じ量の有害物質を吸い込むことを意味していて、受動喫煙を決して甘く見てはいけないことがよく分かります。
実際、喫煙者本人だけでなく、受動喫煙によるリスクも近年広く研究が行われています。厚生労働省の研究班が昨年発表した推計によると、受動喫煙が原因となり発症する肺がんや心筋梗塞で、年間約6千800人が死亡しており、そのうち職場での受動喫煙が原因とみられるのは半数以上の約3千600人だったとしています。世界においても昨年、世界保健機関(WHO)の研究チームが他人のたばこの煙を周囲の人が吸い込む受動喫煙による死亡者数が毎年60万人に達するとの推計を学術雑誌ランセットに発表しています。そのうち16万5千人は5歳未満の子どもが占めているとみられています。
このことから、“世界では6秒に1人が喫煙で死亡し、1分に1人が受動喫煙で死亡している”として広く警鐘が鳴らされています。
たばこ煙は副流煙の方が有害
出典:1) 最新たばこ情報「主流煙と副流煙」、2) 厚生労働省たばこ煙の成分分析について、3) 厚生省編喫煙の生理・薬理:喫煙と健康;48:1992