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睡眠を改善するスマホアプリを開発 スマホで「不眠症の認知行動療法」 京都大・沖電気など

キーワード: 高血圧 脂質異常症(高脂血症) 糖尿病 肥満症/メタボリックシンドローム ストレス関連疾患/適応障害 三多(多動・多休・多接) 「多休」休養をしっかりとる 疲労(休養不足)

 京都大学は、スマートフォン向けのアプリ「睡眠プロンプトアプリケーション(SPA)」を開発したと発表した。

 「朝起きたら日光を浴びましょう」といった、睡眠改善のための行動変容を促すショート・メッセージを、利用者が受容しやすいタイミングで送信する。

 睡眠の問題を自覚している労働者116人を対象とした試験では、アプリを利用することで、不眠の重症度をはかる尺度の点数が改善することが確かめられた。

スマホで「不眠症の認知行動療法」を実施

 研究は、京都大学大学院医学研究科の石見拓教授、同大学学生総合支援機構の降籏隆二准教授らと、沖電気工業、ヘルステック研究所との共同で実施したもの。研究成果は、「Journal of Medical Internet Research」にオンライン掲載された。

 睡眠の問題は高い頻度でみられ、労働者の健康を増進するうえで重要な問題となっている。不眠の治療として、「不眠症の認知行動療法(CBT-I)」は有効とされており、諸外国のガイドラインでも推奨されている。

 不眠症の認知行動療法では、睡眠の記録をとり、睡眠を改善するための環境づくりやリラクゼーション法について学び、生活スタイルや睡眠スケジュールを見直し評価することなどが行われる。

 睡眠薬などを使わず、睡眠を妨害するような生活スタイルや悩みごとに焦点をあて、身体に染み付いた「くせ」を見直しながら、適切な睡眠習慣を取り戻すことを目標としている。

 しかし、専門家が不足しており、認知行動療法の提供機会は限られている。そうしたなかで、スマートフォンアプリなどを利用した、インターネットを介したCBT-Iのプログラムを新たに開発した。

 従来のプログラムは、専門家が対面で治療を実施するのと同等の効果が得られることが示されているものの、脱落率が高く、改良の余地があった。また、ヘルスケア領域での使用を想定した、症状が軽度の不眠を含む臨床試験での有効性は十分検討されていなかった。

睡眠改善のための行動変容を促すメッセージを送信 生活スタイルに合わせて最適化

ショート・メッセージを送信し睡眠改善のための行動変容を促す
出典:京都大学、2022年

 研究グループが開発したのは、プロンプトとよばれるショート・メッセージを利用者が受容しやすいタイミングで送信することで、望ましい行動へ誘導する行動変容技術を用いた、CBT-Iを応用したスマートフォン向けの「睡眠プロンプトアプリケーション(SPA)」。

 この行動変容技術は、沖電気工業のもつ独自のもので、IoTによる状況把握と行動科学や健康心理学の知見を活用して、1人ひとりの生活スタイルに応じて最適化した、健康行動を促進するメッセージをタイムリーに提示し、行動変化を促すというもの。

 さらに、睡眠の問題を自覚する労働者を対象に、SPAによる不眠の改善の有効性を検証した。睡眠の問題を自覚している労働者116人(介入群 n=60、対照群 n=56)を対象に、並行群間無作為化対照試験を行った。

 介入群には、SPA上で睡眠を記録できる日誌と、ショート・メッセージを用いた睡眠改善プログラムを提供した。ショート・メッセージは、被験者個人の睡眠データ、ライフサイクルなどに合わせて最適化された内容を、各被験者のSPAに自動送信するもの。

 介入プログラムの期間は4週間。主要評価項目を「不眠重症度質問票(ISI)」を用いて測定し、副次評価項目として「チャルダー疲労スケール(CFS)」を測定した。主要評価項目の解析には線形混合モデルを用い、副次評価項目は独立したサンプルのt検定を用いた。

 ISIは、夜間の睡眠の問題、睡眠への満足度、日中への障害などに関する7項目についての得点をもとに、総合得点を算出し、不眠の重症度を評価する質問票。CFSは、身体的疲労(8項目)と精神的疲労(6項目)の計14項目の得点の合計スコアにより、総合的疲労スコアを算出し、疲労評価を行う質問票。

睡眠の行動変容を促すアプリの有効性を実証 脱落率はわずか3.2%

 その結果、組入時のISIの平均値は両群ともに9.2だったが、4週間後の平均値は、介入群で6.8、対照群で8.0となり、ISIの利用により不眠重症度は有意に改善することが明らかになった(P=0.03)。

 ISI得点が8点以上の不眠症のサブグループ解析では、ISI(P=0.01)、CFSの身体的疲労スコア(P=0.02)となった。また、脱落率は介入群では3.2%と少なかった。

 これらにより、睡眠の問題を自覚する労働者を対象とした臨床試験で、SPAの有効性が実証された。

 「研究成果は、エビデンスにもとづいた良質なPHR(パ―ソナルヘルスレコード)によるヘルスケアサービス提供のロールモデルとなると考えています」と、石見教授は言う。

 「不眠症の認知行動療法は、薬を使わずに睡眠を改善する有用な治療法ですが、日本の医療機関で実施できる施設は限られています。また、不眠による苦痛があっても、医療機関を受診されない方も多くいます。この治療のエッセンスを幅広い方に届け、人々の睡眠に改善をもたらす方法を開発することが研究の目的です」と、降籏准教授は述べている。

京都大学大学院医学研究科
京都大学学生総合支援機構
Providing Brief Personalized Therapies for Insomnia Among Workers Using a Sleep Prompt App: Randomized Controlled Trial (Journal of Medical Internet Research 2022年7月25日)

[Terahata]

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