一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
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糖尿病は認知症リスクを高める 予備群の段階でリスクは上昇 認知症を防ぐ生活スタイルとは?

キーワード: 生活習慣 糖尿病

 血糖値が高い状態が続くと、認知症のリスクが高まることが知られている。

 九州大学などの研究グループによる大規模なコホート研究で、糖尿病のある人は、糖尿病のない人に比べ、アルツハイマー病の発症が1.46倍高いことが分かった。

 さらに、糖尿病と診断されるほどではないが血糖値が高めの糖尿病予備群でも、アルツハイマー病のリスクは1.30倍に上昇した。

 認知症を防ぐための、12のすぐに実行できる生活スタイルも発表されている。健康的な生活スタイルにより、認知症の40%を予防・遅延できる可能性がある。

血糖値が高いと認知症のリスクが上昇

 糖尿病の人は血糖値が高い状態が続くと、脳卒中や心筋梗塞など、命に関わる合併症を発症する危険が高まる。その原因のひとつは、血液中のブドウ糖が過剰に増えたことで、全身の血管が傷つくことだと考えられている。

 高血糖は認知症のリスクも高める。認知症のなかでも、もっとも多いタイプはアルツハイマー型認知症だ。血糖値が高いと、アルツハイマー病の危険性が高まるという報告がある。

 アルツハイマー病は、脳神経が変性して脳の一部が萎縮していく過程で起きる認知症。その原因のひとつは、アミロイドβという神経細胞の変性に関与するタンパク質が脳にたまることだと考えられている。

 そのアミロイドβの蓄積は、糖尿病によって高まりやすいことが分かってきた。とくに血糖を下げるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性があると、インスリンが過剰に分泌され血液中の濃度が高くなり、アミロイドβを分解する酵素が働きにくくなる。

 高血糖が認知症をきたす原因としては、動脈硬化や、微小血管が傷つきやすいこと、高血糖が慢性的に続いて起こる糖毒性なども原因と考えられている。

認知症を予防するための生活スタイル

 アルツハイマー協会国際会議(AAIC 2020)で、12のすぐに実行できる生活スタイルにより、世界の認知症の最大で40%を、予防・遅延できる可能性が示された。詳細は、医学誌「ランセット」に掲載された。

 認知症を予防するための生活スタイルは、2型糖尿病、心臓病、がんなどの、他の深刻な病気を予防・改善するのにも役立つ。認知症の発症にどのような要素が関連しており、どのような予防策が効果的かを調べる研究は世界中で行われている。

 認知症を予防するための生活スタイルは、主に次のことだ――。


1. 治療を続けて認知症のリスクを減らす
糖尿病・高血圧・脂質異常症など、認知症のリスクを高める病気を治療する。適切な治療を続けて、医師より処方された薬をきちんと服用し、これらの病気をコントロールすることが大切。


2. 運動をする
運動や身体活動を習慣として行うことは、認知症のリスクを減らすための最良の方法のひとつだ。ウォーキングなどの運動を続ければ、血糖値が下がり、心肺機能を良くし、体重コントロールにつながり、うつ予防などメンタルヘルスの改善の効果も期待できる。


3. 健康的な食事
全粒穀物、野菜、果物、豆類、大豆など、栄養バランスの良い食事をとる。肥満も認知症のリスクを高める。腹八分目をこころがけ、食品の種類をなるべく多くし、動物性の脂肪を摂り過ぎないようにする。また、過度のアルコールは認知症のリスクを高めるので、飲み過ぎないようにする。


4. 社会的な活動を保つ
社会的つながりが認知症のリスクを減らすことは十分に確かめられている。社会的なつがりは、認知力を高めたり、有益な行動を促すことにつながる。地域のサークルやグループに参加することは、社会的な活動を続けるための良い方法となる。


5. タバコを吸わない
喫煙は認知症の発症リスクを大幅に高めるだけでなく、2型糖尿病、脳卒中、肺がんなどの他の病気のリスクも高める。タバコを吸っている人は、いますぐ禁煙を。タバコをやめるのがもう手遅れということはない。禁煙をはじめるのが人生の後半であっても、認知症リスクを減らすことはできる。


出典:国際アルツハイマー病協会、2020年

血糖値が高い状態が続くとアルツハイマー病のリスクが上昇

 全国8地域からなる認知症の大規模なコホート研究で、認知症のリスクは血糖値が高めの糖尿病予備群の段階で上昇することが明らかになった。

 研究は、金沢大学や九州大学の研究グループによるもの。血糖値が高い状態が続いている高齢者は、アルツハイマー病のリスクが高いことが明らかになった。

 「健康長寿社会の実現を目指した大規模認知症コホート研究(JPSC-AD)」は、2016年に開始された、全国8地域の高齢者1万人からなる大規模な認知症コホート研究。

 研究グループは、JPSC-AD研究で2016〜2018年に実施した調査に参加した全国の1万214人の高齢者を対象に、HbA1c値やGA値と、アルツハイマー病、血管性認知症との関連を解析した。

 HbA1cは過去の1〜2ヵ月の平均血糖を反映しており、血糖コントロールの指標となる。一方、GA(グリコアルブミン)は、血清アルブミンにブドウ糖が結合したもので、過去の2〜4週間の平均血糖を反映しており、より短期の血糖コントロール状態が分かる。

糖尿病予備群の段階でアルツハイマー病の発症は増える

 その結果、糖尿病の診断、HbA1cの高値、グリコアルブミンの高値は、アルツハイマー病の発症と関連していることが分かった。糖尿病のある人は糖尿病のない人に比べ、アルツハイマー病の発症が1.46倍高かった。

 さらには、HbA1cが5.7〜6.4%で、糖尿病と診断されるほどではないが血糖値が高めの糖尿病予備群(境界型)でも、HbA1cが正常(5.7%未満)の人に比べて、アルツハイマー病罹患のリスクは1.30倍に上昇した。

血糖値が高いとアルツハイマー病のリスクは上昇する
糖尿病予備群の段階でアルツハイマー病の発症は増える

出典:九州大学、2022年

 「今回の研究結果により、認知症を予防するためには、より十分な血糖コントロールが望ましい可能性があることが示されました」と、研究グループでは述べている。

 「糖尿病人口は不健康な食事、運動不足、肥満や高齢化を背景に増加し続けており、糖尿病により認知症をきたすメカニズムを明らかにすることは喫緊の課題です」としている。

 研究グループは、2021〜2023年に、同じ対象者について包括的な認知症スクリーニング調査を実施し、新たな認知症の発症や認知機能の変化を調査する予定としている。

 「今後、縦断研究を行うことで、糖代謝異常がアルツハイマー病をきたす詳細なメカニズムを明らかにし、個々の認知症発症リスクに応じた予防・治療法を確立することを期待しています」。

The Lancet launches important new guidance on dementia risk reduction(国際アルツハイマー病協会 2020年7月30日)
Risk factors and risk reduction(国際アルツハイマー病協会)
Dementia prevention, intervention, and care 2020 (Lancet 2017年7月20日)

健康長寿社会の実現を目指した大規模認知症コホート研究(JPSC-AD)
金沢大学医薬保健研究域医学系脳老化・神経病態学(脳神経内科学)
九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野
Diabetes mellitus, elevated hemoglobin A1c and glycated albumin are associated with the presence of all-cause dementia and Alzheimer's disease: the JPSC-AD Study (Journal of Alzheimer's disease 2022年1月4日)
[mhlab]

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