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糖尿病の人は血糖値が高いと歯を失いやすい 歯の喪失をこうして防ぐ 予備群の段階からご注意

キーワード: 生活習慣 糖尿病

 滋賀医科大学などの研究グループは、糖尿病の人は血糖コントロールが不良であると、歯周病やむし歯などになり、歯の本数が減りやすいことを、23万人超のデータの解析で明らかにした。

 糖尿病予備群の段階でも、空腹時血糖が高めだと、歯を失いやすいことも分かった。

 「糖尿病と診断されたり、健康診断で糖尿病予備群と指摘された際には、生活スタイルの改善とともに、早期に歯科検診を受ける必要があります」「血糖値が高い人は、奥歯の歯周病やむし歯の予防や治療を念入りにすることも重要です」と、研究者はアドバイスしている。

糖尿病と歯周病は密接に関係

 研究は、滋賀医科大学の前川聡教授、森野勝太郎准教授の研究グループと、サンスターが共同で行ったもの。研究成果は、「Diabetology international」にオンライン公開された。

 口腔と全身の健康状態には、さまざまな関連があることが分かっている。とくに糖尿病と歯周病は密接に関係し、相互に影響を及ぼすことが知られている。

 糖尿病の人が、血糖コントロールが不良であると、歯周病の発症や重症化が促され、歯の喪失リスクが高まる。しかし、血糖コントロールが悪いほど歯の本数が少ないという連続的な関係性があるのか、またそれがあらわれる年代について大規模に調べた研究はこれまでなかった。

 そこで研究グループは、定期健診の結果と医療機関の診療情報(診療報酬明細書:レセプト)をもとに、血糖コントロール指標と歯の本数の関係を年代ごとに分析した。

血糖コントロールが不良だと失う歯が増える 糖尿病予備群もご注意

 その結果、30代以上の年代で、1〜2ヵ月の血糖値を反映するHbA1c値や、空腹時血糖値が高いほど、歯の本数が少ないこと、糖尿病予備群(空腹時血糖110〜125mg/dL)でも、正常値群(同110mg/dL未満)と比べて歯の数が少ないこと、また高血糖と喫煙の条件が重なると歯の喪失リスクはより高まることを明らかにした。

 研究グループは、2020年10月にWeb開催された第63回秋季日本歯周病学会学術大会でも、HbA1c7.0%以上に該当する血糖コントロール不良の患者は、そうでない人に比べて、多くの部位の歯を失い、とくに奥歯(下顎大臼歯)を失った人の割合に大きな差があることを発表している。

 これらの結果から、「糖尿病と診断されたり、健康診断で糖尿病予備群と指摘された際には、生活スタイルの改善とともに、早期に歯科検診を受ける必要があります」と、研究グループでは述べている。

 また、「血糖値が高い方は、奥歯の歯周病・むし歯(う蝕)の予防や治療を、念入りにすることも重要だと考えられます」としている。

HbA1cが高い人ほど歯の本数が少ない

空腹時血糖値が高い人ほど歯の本数が少ない
糖尿病予備群の段階で歯の本数は減りはじめる

出典:滋賀医科大学、2021年

HbA1cや空腹時血糖値が高いほど歯を失いやすい タバコを吸う人はさらに高リスク

 研究グループは今回の研究で、複数の健康保険組合の定期健診の受診者約70万人のうち、(1)2015年度に歯科受診歴があり、(2)歯の本数とその部位が確認でき、(3)健診におけるHbA1cのデータがある、20〜74歳の男女23万3,567人のデータを解析対象とした。

 対象者をHbA1c値に従い5段階(5.5%未満、5.5〜6.4%、6.5〜7.4%、7.5〜8.4%、8.5%以上)、空腹時血糖値(FPG)に従って3段階(110mg/dL未満、110〜125mg/dL、126mg/dL)に群分けし、10歳階級ごとに歯の本数を比較した。

 さらに、中年期(40〜59歳)の対象者で、高血糖と喫煙条件の組み合わせで4群または6群に分け、両条件が該当しない群を対照とした歯数が24歯未満となる性年齢調整オッズ比を算出した。

 その結果、主に次のことが明らかになった――。

1. HbA1cや空腹時血糖値が高いほど歯を失いやすい 40〜60代では糖尿病予備群も注意が必要

 30代以上の各年代で、HbA1cや空腹時血糖値が高い群ほど、歯の本数が少ないという連続的な関係性が示された。また、40〜60代では、糖尿病型(空腹時血糖値が126mg/dL以上)だけでなく、糖尿病予備群(空腹時血糖が110〜125mg/dL)も、正常血糖群に比べて歯の数が少ないことが示された(分散分析後のDunnett多重比較法による分析)。

2. タバコを吸い血糖の高い人では、歯を失うリスクはさらに高くなる

 中年期(40〜59歳)で、HbA1cや空腹時血糖値が高い高血糖であると、喫煙の条件がそれぞれ単独で該当する群は、両条件とも該当しない群(血糖が正常で喫煙をしない)に比べてオッズ比が高く、歯の本数が24未満になるリスクが高いことが分かった。また、両条件が重なる群(高血糖+喫煙、糖尿病予備群+喫煙、糖尿病型+喫煙)では、リスクがさらに高いことが示された。

HbA1c値が高く喫煙している人は歯の損失リスクがさらに高くなる

空腹時血糖値が高く喫煙している人は歯の損失リスクが高い
糖尿病予備群の段階でリスクは上昇する

出典:滋賀医科大学、2021年

しっかり噛んで食べることが全身の健康につながる

 厚生労働省が推進する「健康日本21(第二次)」の目標項目では、「血糖コントロール指標におけるコントロール不良者の割合の減少」と「60歳で24歯以上の自分の歯を有する者の割合の増加」が掲げられている。

 「今回、診療情報などの実社会を反映するデータをもとに得られた知見から、糖尿病などの全身疾患と同様に、血糖値が上がりはじめた糖尿病予備群の段階でも、歯の喪失の主な原因である歯周病やむし歯についても、積極的な予防や治療が重要であると考えられます」と、研究グループでは述べている。

 また、「歯の喪失を防ぎ、どのような食べ物もしっかり噛んで食べることは、全身の健康の維持増進につながることが期待されます。社会全体の"健康寿命の延伸"を目指し、健康行動につながる科学的根拠の構築や情報発信を継続していきます」としている。

滋賀医科大学糖尿病内分泌・腎臓内科
前川聡教授、森野勝太郎准教授らの研究グループは、"地域社会に還元できる優れた医師"、"将来の治療に役立つ研究のできる科学者"の育成を目標に活動している。とくに、糖尿病・肥満症とその合併症について、さまざまな研究を推進している。

サンスターグループ
サンスターは、「常に人々の健康の増進と生活文化の向上に奉仕する」の社是のもと、オーラルケア製品、化粧品、健康食品などの事業を行うのに加えて、「糖尿病と口腔保健」の研究にも取り組んでいる。糖尿病と歯周病の関係性にはいち早く着目し、国内外の大学、医療機関と連携して研究、新製品の開発および啓発活動に取り組んできた。今後も口内の健康を起点としながら、全身の健康に寄与する情報・サービス・製品を提供し、健康寿命の延伸に寄与したいとしている。

Glycemic control and number of natural teeth: analysis of cross-sectional Japanese employment-based dental insurance claims and medical check-up data(Diabetology International 2021年8月28日)
[mhlab]

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