一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

「食物繊維」は肥満・メタボ、糖尿病の人にもメリットが大きい 玄米など「全粒穀物」でリスク低下

キーワード: 高血圧 二少(少食・少酒) 脂質異常症(高脂血症) 一無・二少・三多 糖尿病 肥満症/メタボリックシンドローム 「少食」食事は腹7~8分目 食生活

 新型コロナウイルス感染症の拡大が続き、あらためて健康維持の重要性を感じている人が多い。肥満やメタボ、2型糖尿病を予防・改善するために、太り過ぎにならなようにし、ストレスにも負けない心身を保ちたいと願う人も多いだろう。
 新型コロナに負けないようにするために、適度な運動や休息とともに、とくに意識したいのは食生活の改善。しかし、食事や食品についてさまざまな情報があり、どれを信用したら良いのか分からない――そんなときにお勧めできる栄養素が食物繊維だ。
食物繊維は肥満・メタボの人にとってメリットが多い
 食物繊維は消化・吸収されずに、小腸を通って大腸まで達する栄養素。腸の働きをよくしたり、糖質の吸収をゆるやかにするなど、多くの健康効果がある。

 食物繊維が多い食事は、よく噛むために満腹感が得られやすくなり、食べ過ぎを防いで肥満予防につながる。また、脂質やコレステロールなどの吸収を抑えることで、動脈硬化の予防にもつながる。

 穀物繊維を十分に摂取することは、日本人の糖尿病のコントロールにも有用と考えられている。日本糖尿病学会の『糖尿病診療ガイドライン2019』では、「食物繊維は糖尿病状態の改善に有効であり、炭水化物摂取量とは無関係に20g/日以上の摂取を促す」と示されている。

 日本人を対象とした食物繊維の糖尿病への影響を調べたコホート研究でも、1〜2ヵ月の血糖値を反映した指標であるHbA1cは、食物繊維が多いほどレベルが低くなることが示されている。

 日本人の糖尿病患者1,414人を対象としたコホート研究も、食物繊維を十分に摂っている人では、心血管疾患の発症率が低下するという結果になった。糖尿病患者が食物繊維を十分に摂ることで、空腹時血糖が低下するという報告もある。
全粒穀物を食べていると糖尿病リスクが29%低下
 食事で全粒穀物を多く摂ると、精製された穀物の多い食事よりも、肥満や糖尿病、心臓病の人の健康リスクを低く抑えられることは、 世界中の多くの研究で示されている。

 ハーバード公衆衛生大学院などの研究グループは、1984〜2014年に実施された「看護師健康研究」、1991〜2017年に実施された「看護師健康研究II」、1986〜2016年に実施された「医療専門家追跡研究」のデータを解析した。

 対象となったのは、研究開始時点で糖尿病や心臓病、がんを発症していなかった男性3万6,525人と女性15万8,259人。

 その結果、全粒穀物の摂取量がもっとも多いグループでは、もっとも少ないグループに比べ、2型糖尿病の発生率が29%低かった。

 「2型糖尿病を予防するために、野菜、果物、全粒穀物の摂取量を増やすことが勧められます。毎日の食事でこれらの食品を少し増やすだけでも、糖尿病を改善する効果を期待できます」と、研究グループは述べている。
食物繊維が不足している ほとんどの人は1日20g未満
 世界中のほとんどの人は食物繊維を1日あたり20g未満しか摂っていない。英国栄養科学諮問委員会は2015年より、食物繊維の摂取量を1日30gに増やすことを推奨しているが、この目標を達成できている英国成人は9%しかいない。米国でも、成人の食物繊維の平均摂取量は1日15gだ。

 日本人でも食物繊維は不足している。厚生労働省の2019年「国民健康・栄養調査」では、1日の食物繊維の摂取量の平均は18.4gだった。とくに30代で17g、40代で17g、50代で18gと、働き盛りの年代で食物繊維は不足している。

 不足しやすい食物繊維5gを補いやすい食材の目安は、レタス1.5個(約450g)、ゴボウ5分の3本(約90g)、サツマイモ1本弱(約220g)、玄米2.5杯(約360g)、大麦2分の1カップ(乾物、約60g)などだ。
全粒穀物はもっとも食物繊維を摂りやすい
 食物繊維の摂取源となるのは、▼穀類、▼野菜類、▼海藻類、▼豆類、▼キノコ類、▼果物類などだが、もっとも得られやすいのは穀類だという。

 「全粒穀物(ホールグレイン)」とは、精白などの処理で、果皮、種皮、胚、胚乳といった部位を取り除いていない穀物のこと。白米や白パンでは、精白することによって外皮や胚芽などが取り除かれ、これらに含まれる食物繊維やポリフェノール、ミネラルなどの栄養成分が削り取られ、失われてしまう。

 「精製された小麦粉や白米などを食べると、炭水化物の量は同じであっても、食物繊維が少ないため吸収が速く、食後の血糖上昇が起こりやすくなります。血糖値をコントロールする必要のある糖尿病の人にとっては、勧められるのは全粒穀物です」と、ニュージーランドのオタゴ大学栄養学部および医学部のジム マン教授は言う。

 マン教授は、エドガー糖尿病・肥満研究所の所長でもあり、40年以上にわたり糖尿病の研究に携わってきた。国際栄養科学連合(IUNS)や、世界保健機関(WHO)と国際連合食糧農業機関(FAO)の専門家会議などにも参加している。

 米食でいうと玄米、発芽玄米、大麦、大麦などの入った麦ごはんなどがある。それに「五穀米」などとしてパッケージされている黒米、赤米、ソバ、キビ、アワ、ヒエなどの雑穀も全粒穀物だ。

 パン食なら、小麦の外皮や胚乳ごと粉にした全粒粉パン、外皮のふすまを含むブランパン、ライ麦パン。シリアルでは、オールブランや玄米シリアル、オーツ麦(オートミール)など。味も食感もさまざまな全粒穀物があり、幅広い選択肢がある。
全粒穀物を摂ると糖尿病のコントロールが改善
 オタゴ大学の研究では、ニュージーランド人の食物繊維の1日の平均摂取量は19gだが、食物繊維を35gに増やすと、死亡リスクを35%低下できることが示された。

 また、糖尿病予備群、1型糖尿病および2型糖尿病の成人の計1,789人を対象とした42件の試験のデータに解析では、食物繊維や全粒穀物の多い食事を6週間以上続けることで、糖尿病の人の血糖コントロール、コレステロール値、体重などが一貫して改善することが示された。

 さらに研究グループは、2型糖尿病の成人を対象に、全粒穀物がもたらす健康上のベネフィットを調査。参加者に、全粒オーツ麦など加工が最小限の全粒穀物を2週間食べてもらい、持続血糖モニター(CGM)を使用して、2週間の介入期間中の昼と夜の血糖変動を記録した。

 その結果、全粒穀物を摂取した場合、食後血糖値が改善し、1日を通しての血糖変動も減少したことが明らかになった。
ごはんやパンを全粒穀物に置き換える食事スタイル
 オタゴ大学の最新の研究によると、食物繊維の摂取量が多いほど、2型糖尿病や心臓病、がんなどの生活習慣病のリスクは低下する。この研究の詳細は、医学誌「ランセット」に発表された。

 研究グループは、計1億3,500万人年分のデータが含まれる185件の観察研究と、計4,635人の成人を対象とした58件の臨床試験のデータを解析した。

 その結果、1日の食物繊維の摂取量が8g増えるごとに、総死亡リスク、冠状動脈性心疾患(CHD)、2型​​糖尿病、大腸がんの発生リスクが5〜27%減少することが明らかになった。食物繊維には、脳卒中や乳がんに対する保護効果があることも分かった。

 食物繊維の摂取量が多いほど、さらに強力な健康増進の効果を得られ、食物繊維を毎日25〜29gを摂取することで病気からの保護効果を期待できるという。

 全粒穀物については、1日の摂取量が15g増加するごとに、総死亡リスク、CHD、2型​​糖尿病、大腸がんの発生リスクは2〜19%減少した。全粒穀物の摂取量が多いと、生活習慣病のリスクが13〜33%減少した。

 こうした病気が原因になる死亡率は、1,000人あたりの26人減少し、CHDのリスクも1,000人あたりの7人減少した。

 「食物繊維についての研究は、100年以上続けられています。食物繊維を多く含む食品は、よく噛んで食べる必要があり、満腹感を高めやすく、体重管理に役立ちます。脂質と血糖の値にも好ましい影響をもたらすと考えられます。さらには、食物繊維は大腸で常在菌により分解され、肥満予防や免疫の改善にも役立ちます」と、マン教授は言う。

 「精白された小麦粉を使った白パンを、食物繊維の豊富な全粒紛を使ったパンに置き換えたり、白米を玄米に置き換えたりする食事スタイルは、糖尿病や肥満のある人にも勧められます。ふだんの食事に缶詰の野菜や豆類を加えるだけでも、食物繊維の摂取量は増やせます」としている。
食物繊維は腸内環境も改善する
 食物繊維は消化・吸収されずに、小腸を通って大腸まで達する。全粒小麦などに豊富に含まれる不溶性食物繊維が、腸内で溶出して水溶性の性質をあらわし、腸内の発酵を高めることも分かってきた。

 腸内で腸内の有用菌がこれら食物繊維をエサにすると、短鎖脂肪酸という物質を生み出す。この短鎖脂肪酸には、満腹感を高めて肥満を抑制する、血糖値の急上昇を抑える、血圧を下げる、免疫機能によい影響を与えるなど、幅広い機能があることが分かってきた。

 全粒穀物というあまりお金のかからない食材で、しかも毎日25〜29gを摂ることで病気のリスクを下げられるというのはうれしいニュースだ。

 食物繊維については、この数年でしっかりとした科学的な根拠(エビデンス)が増えている。毎日の食事で食物繊維が不足しないように心がけたい。

Impact of dietary fiber intake on glycemic control, cardiovascular risk factors and chronic kidney disease in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus:the Fukuoka Diabetes Registry(Nutrition Journal 2013年12月11日)
Intakes of dietary fiber, vegetables,and fruits and incidence of cardiovascular disease in Japanese patients with type 2 diabetes(Diabetes Care 2013年12月)
Dietary fiber for the treatment of type 2 diabetes mellitus:a meta-analysis(Journal of the American Board of Family Medicine 2012年1月)
Association between dietary factors and mortality from heart disease, stroke, and type 2 diabetes in the United States(JAMA 2017年3月7日)
Higher fibre saves lives, but food processing may remove benefits(オタゴ大学 2020年5月19日)
High carb? Low carb? - It's more about the quality of carb!(心臓財団 2019年10月1日)
Dietary fibre and whole grains in diabetes management: Systematic review and meta-analyses(PLOS Medicine 2020年3月6日)
Intake of whole grain foods and risk of type 2 diabetes: results from three prospective cohort studies(BMJ 2020年7月8日)
High intake of dietary fiber and whole grains associated with reduced risk of non-communicable diseases(Lancet 2019年1月10日)
Carbohydrate quality and human health: a series of systematic reviews and meta-analyses(Lancet 2019年2月2日)
[Terahata]

関連トピック

疾患 ▶ 糖尿病

2022年01月26日
【新型コロナ】テレビばかり見ていると血栓症リスクが上昇 糖尿病の人は立ち上がって運動を
2022年01月20日
インターバルトレーニングが糖尿病の人の糖代謝を改善 速歩とゆっくり歩きを交互に 脂肪肝も解消
2022年01月20日
糖尿病は認知症リスクを高める 予備群の段階でリスクは上昇 認知症を防ぐ生活スタイルとは?
2022年01月19日
肉やソーセージを食べ過ぎると糖尿病リスクは上昇 植物性食品に置き換えるとリスクは減少
2022年01月13日
糖尿病の人は血糖値が高いと歯を失いやすい 歯の喪失をこうして防ぐ 予備群の段階からご注意

疾患 ▶ 高血圧

2021年07月12日
コロナ禍での高血圧症患者さんの過ごし方
2021年04月16日
人工知能(AI)により生活習慣病の将来リスクを予測 保健指導での意識・行動の改善に貢献 国際医療研究センターなどが共同研究
2021年04月16日
自分の身体能力を過信している高齢者は体力が低下しやすい コロナ禍でも体を動かし活発な生活を フレイル予防アプリも公開
2021年04月16日
運動をすると睡眠を改善できるのはなぜ? 日中に活発なウォーキングを1時間行うと効果的 睡眠時の脳波を調査
2021年04月16日
オフィスを活動的にすると「座り過ぎ」が減る 肥満やメタボの検査値も改善 オフィス環境づくりは大切

疾患 ▶ 肥満症/メタボリックシンドローム

2021年12月15日
「早食い」は肥満や体重増加につながる ゆっくり味わって食べるとエネルギー消費量を増やせる
2021年12月10日
肥満は糖尿病の人にとって大敵 体重をコントロールして糖尿病を改善 成功するためのコツは?
2021年11月10日
新型コロナウイルス感染拡大の陰で起きている体調変化や生活習慣に関する最新調査
2021年10月19日
【新型コロナ】糖尿病と肥満の人はなぜ重症化しやすい? 感染と重症化を防ぐためにこれが必要
2021年10月01日
肥満の人は日常生活動作(ADL)が低下しやすい 健康寿命も短縮 若い頃から健康な生活で対策を

疾患 ▶ 脂質異常症(高脂血症)

2021年07月28日
糖尿病はアルツハイマー病の危険因子 脳を活性化して予防 新しいことにもチャレンジ
2021年04月16日
人工知能(AI)により生活習慣病の将来リスクを予測 保健指導での意識・行動の改善に貢献 国際医療研究センターなどが共同研究
2021年04月16日
自分の身体能力を過信している高齢者は体力が低下しやすい コロナ禍でも体を動かし活発な生活を フレイル予防アプリも公開
2021年04月16日
運動をすると睡眠を改善できるのはなぜ? 日中に活発なウォーキングを1時間行うと効果的 睡眠時の脳波を調査
2021年04月16日
オフィスを活動的にすると「座り過ぎ」が減る 肥満やメタボの検査値も改善 オフィス環境づくりは大切

一無・二少・三多 ▶ 二少(少食・少酒)

2021年04月16日
自分の身体能力を過信している高齢者は体力が低下しやすい コロナ禍でも体を動かし活発な生活を フレイル予防アプリも公開
2021年04月16日
高齢者の「フレイル」は家電の利用状況を調べれば分かる 電気使用を見える化する「スマートメーター」で高齢者の健康をチェック
2021年04月16日
腎臓病を予防・改善するための「8つの法則」 世界の成人の10人に1人が腎臓病 世界腎臓デー
2021年04月16日
中学生でも肥満だと代謝異常リスクが3倍に上昇 女子中学生では軽度の過体重でも高血圧のリスクが
2021年04月16日
世界肥満デー 世界の20億人が肥満か過体重 2025年までに世界の成人の5人に1人が肥満に

生活習慣 ▶ 食生活

2022年01月28日
夕食はいつ食べると良い? 夜に食べるタイミングが糖尿病リスクに影響 メラトニンと遺伝子が影響
2022年01月19日
肉やソーセージを食べ過ぎると糖尿病リスクは上昇 植物性食品に置き換えるとリスクは減少
2022年01月19日
食後血糖の急激な変動(血糖値スパイク)を抑える健康食事法 「スローカロリー食ライフ」キャンペーン実施中!
―豪華賞品とスローカロリー商品詰合わせをプレゼント。2022年2月16日まで!
2022年01月12日
【世界健康フォーラム2021・静岡 公開中!】
健康寿命はみんなで延ばせる 食生活で日本を元気に!
2021年12月21日
やせていても「少食で運動不足」だと糖尿病リスクが高い 若い女性も気をつけたい糖尿病 順天堂大

一無・二少・三多 ▶ 「少食」食事は腹7~8分目

2021年04月16日
自分の身体能力を過信している高齢者は体力が低下しやすい コロナ禍でも体を動かし活発な生活を フレイル予防アプリも公開
2021年04月16日
高齢者の「フレイル」は家電の利用状況を調べれば分かる 電気使用を見える化する「スマートメーター」で高齢者の健康をチェック
2021年04月16日
腎臓病を予防・改善するための「8つの法則」 世界の成人の10人に1人が腎臓病 世界腎臓デー
2021年04月16日
中学生でも肥満だと代謝異常リスクが3倍に上昇 女子中学生では軽度の過体重でも高血圧のリスクが
2021年04月16日
世界肥満デー 世界の20億人が肥満か過体重 2025年までに世界の成人の5人に1人が肥満に

 ▶ 一無・二少・三多

2022年02月01日
こころの密を育てる―ネガティブになりがちな今だから「多くの人・こと・ものとつながる」
毎年2月は『全国生活習慣病予防月間』―Web講演会公開中!
2022年01月23日
1月23日は『一無、二少、三多の日』!
「一無、二少、三多」ピクトグラム公募結果と全国生活習慣病予防月間2022のご案内
2021年11月17日
全国生活習慣病予防月間2022実施概要決定! 
テーマは多接:多くの人・こと・ものとつながる!
2021年10月13日
昨年より生活満足度は低下、コロナ前後での比較検討も「満足度・生活の質に関する調査報告書2021」より
2021年10月04日
最優秀賞 25万円! 健康スローガン「一無、二少、三多」のピクトグラム公募
予防月間2022
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン
新型コロナウイルス関連

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
セルフメディケーション・ネット セルフメディケーションの基礎から薬の知識までさまざまな情報を提供
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート