一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

ビールのホップの苦味成分が認知機能を改善 物忘れのある中高年者を対象に臨床試験を実施

キーワード: 二少(少食・少酒) 一無・二少・三多 「少酒」お酒はほどほどに 「少食」食事は腹7~8分目 認知症 食生活

 ビールの苦味成分である「熟成ホップ由来苦味酸」に、認知機能やストレス状態を改善する作用があることを、順天堂大学とキリンの研究グループが臨床試験で明らかにした。食生活を通じた新しい認知症の予防方法を開発できる可能性がある。
ホップ苦味酸に認知機能・気分状態の改善効果がある
 日本でも患者が急増しており大きな社会課題となっている認知症は、根本的な治療方法はまだ見つかっていないが、早期に発見して対策すれば認知機能の低下を改善できると考えられている。食習慣の改善は予防法の1つとして期待されている。

 一方、ホップの酸化熟成により生成する「熟成ホップ由来苦味酸」は、ビールの苦味成分として知られている。これまでの研究で、このホップ苦味酸には、「脳腸相関」を活性化して、脳内炎症を抑制し、アルツハイマー病を予防する効果があることが示されている。

 脳と腸は、自律神経系、ホルモンやサイトカインなどを介して、密接に関連していることが知られており、この双方向的な関係は脳腸相関と呼ばれている。

 しかし、ホップ苦味酸がヒトの認知機能に与える効果は十分に解明されていない。そこで順天堂大学とキリンホールディングスの研究グループは、物忘れの自覚症状のある中高年者を対象に、ホップ苦味酸の摂取が認知機能に与える効果を検証するために、ランダム化二重盲検比較試験を実施した。

 研究は、順天堂大学医学部精神医学講座の大沼徹先任准教授、新井平伊名誉教授(現アルツクリニック東京院長)およびキリンホールディングスの阿野泰久研究員、福田隆文研究員らの共同研究グループによるもの。
ホップ苦味酸により注意機能、ストレス状態や気分状態が改善
 研究グループは、認知機能の低下を自覚している中高年者100人を対象に、ホップ苦味酸もしくはプラセボを含むカプセルを摂取する群に50名ずつに無作為に割り付けた。

 摂取0週目および12週目に神経心理テストを用いて認知機能の評価を行い、注意機能は標準注意検査法(CAT)を用いて、記憶機能はレイ聴覚学習テスト(RAVLT)、および標準言語性対連合学習検査(S-PA)を用いて評価した。

 さらに、気分状態およびストレス状態を、検査当日の唾液中のストレス指標およびメタ記憶質問紙を用いて評価した。

 その結果、摂取12週目のCATの選択的注意機能を評価するSDMTの正答率が、ホップ苦味酸群ではプラセボ群と比較して有意に高値を示した。

 また、神経心理テスト後の唾液中に分泌されたβエンドルフィンの濃度が、ホップ苦味酸群では0週目からの有意に低値を示した。βエンドルフィンはストレスマーカーの1つとして知られている。

 さらに、メタ記憶質問紙における不安感のスコアがホップ苦味酸摂取群ではプラセボ群と比較して低値の傾向を示した。また、SCD質問紙にもとづく層別解析では、注意機能のSDMT以外にも、記憶機能で摂取12週目のRAVLTの数値、S-PAの変化値が、ホップ苦味酸群では有意に高値を示した。
脳と腸は互いに密接に関連している
 これらから、ホップ苦味酸を継続して摂取すると、中高年者の認知機能の中で、とくに注意機能、ストレス状態や気分状態が改善することが明らかになた。

 「ビール由来のホップ苦味酸による認知機能改善は、脳腸相関の活性化による作用機序によるものと考えられます。毎日の食事を通じた新しい認知症予防方法の開発につながる可能性があります」と、研究者は述べている。

 腸の状態や腸内に常在する細菌が、脳の機能にも影響するなど、脳腸相関は注目されている。研究グループは今後、ヒトでの作用機序解明や軽症アルツハイマー病患者対象での効果検証を進めるとしている。

 ホップ苦味酸を活用したサプリメントやノンアルコールビールテイスト飲料などの開発にもつなげる考えだ。

熟成ホップ由来苦味酸による認知機能および気分状態改善
ビール苦味成分でもある熟成ホップ由来苦味酸は摂取後脳腸相関を活性化し、前頭前野に関連した認知機能や気分状態を改善する可能性が示唆された。
出典:順天堂大学医学部精神医学講座、2020年

順天堂大学医学部精神医学講座
Supplementation with matured hop bitter acids improves cognitive performance and mood state in healthy older adults with subjective cognitive decline(Journal of Alzheimer's Disease 2020年5月27日)
[Terahata]

関連トピック

疾患 ▶ 認知症

2021年07月28日
糖尿病はアルツハイマー病の危険因子 脳を活性化して予防 新しいことにもチャレンジ
2021年04月16日
歩く人にやさしい町づくりで認知症リスクを半分に減らす 歩きたくなる町をデザイン クルマ中心からヒト中心の空間に
2021年03月11日
健康寿命を伸ばすための10の方法 こうすれば健康に長生きできる 国立医療研究センター6機関が提言
2021年03月11日
魚を食べる人は認知症になりにくい 魚の摂取量が多いと認知症リスクが61%低下
2021年03月11日
「食と認知機能」についての意識調査 医療従事者の8割が食事による認知機能の改善を期待 8割は「認知症は理解されていない」

一無・二少・三多 ▶ 二少(少食・少酒)

2021年04月16日
自分の身体能力を過信している高齢者は体力が低下しやすい コロナ禍でも体を動かし活発な生活を フレイル予防アプリも公開
2021年04月16日
高齢者の「フレイル」は家電の利用状況を調べれば分かる 電気使用を見える化する「スマートメーター」で高齢者の健康をチェック
2021年04月16日
腎臓病を予防・改善するための「8つの法則」 世界の成人の10人に1人が腎臓病 世界腎臓デー
2021年04月16日
中学生でも肥満だと代謝異常リスクが3倍に上昇 女子中学生では軽度の過体重でも高血圧のリスクが
2021年04月16日
世界肥満デー 世界の20億人が肥満か過体重 2025年までに世界の成人の5人に1人が肥満に

生活習慣 ▶ 食生活

2022年01月28日
夕食はいつ食べると良い? 夜に食べるタイミングが糖尿病リスクに影響 メラトニンと遺伝子が影響
2022年01月19日
肉やソーセージを食べ過ぎると糖尿病リスクは上昇 植物性食品に置き換えるとリスクは減少
2022年01月19日
食後血糖の急激な変動(血糖値スパイク)を抑える健康食事法 「スローカロリー食ライフ」キャンペーン実施中!
―豪華賞品とスローカロリー商品詰合わせをプレゼント。2022年2月16日まで!
2022年01月12日
【世界健康フォーラム2021・静岡 公開中!】
健康寿命はみんなで延ばせる 食生活で日本を元気に!
2021年12月21日
やせていても「少食で運動不足」だと糖尿病リスクが高い 若い女性も気をつけたい糖尿病 順天堂大

一無・二少・三多 ▶ 「少酒」お酒はほどほどに

2021年10月08日
11月10日〜16日はアルコ―ル関連問題啓発週間です。飲酒と健康に関する講演会は誰でも視聴可能!
2021年04月16日
高齢者の「フレイル」は家電の利用状況を調べれば分かる 電気使用を見える化する「スマートメーター」で高齢者の健康をチェック
2021年04月16日
腎臓病を予防・改善するための「8つの法則」 世界の成人の10人に1人が腎臓病 世界腎臓デー
2021年04月16日
女性が多量飲酒をすると乳がんリスクが1.7倍に上昇 女性ホルモンが影響か 日本人女性16万人対象の大規模調査
2021年03月11日
女性が多量飲酒をすると乳がんリスクが1.7倍に上昇 女性ホルモンが影響か 日本人女性16万人対象の大規模調査

一無・二少・三多 ▶ 「少食」食事は腹7~8分目

2021年04月16日
自分の身体能力を過信している高齢者は体力が低下しやすい コロナ禍でも体を動かし活発な生活を フレイル予防アプリも公開
2021年04月16日
高齢者の「フレイル」は家電の利用状況を調べれば分かる 電気使用を見える化する「スマートメーター」で高齢者の健康をチェック
2021年04月16日
腎臓病を予防・改善するための「8つの法則」 世界の成人の10人に1人が腎臓病 世界腎臓デー
2021年04月16日
中学生でも肥満だと代謝異常リスクが3倍に上昇 女子中学生では軽度の過体重でも高血圧のリスクが
2021年04月16日
世界肥満デー 世界の20億人が肥満か過体重 2025年までに世界の成人の5人に1人が肥満に

 ▶ 一無・二少・三多

2022年02月01日
こころの密を育てる―ネガティブになりがちな今だから「多くの人・こと・ものとつながる」
毎年2月は『全国生活習慣病予防月間』―Web講演会公開中!
2022年01月23日
1月23日は『一無、二少、三多の日』!
「一無、二少、三多」ピクトグラム公募結果と全国生活習慣病予防月間2022のご案内
2021年11月17日
全国生活習慣病予防月間2022実施概要決定! 
テーマは多接:多くの人・こと・ものとつながる!
2021年10月13日
昨年より生活満足度は低下、コロナ前後での比較検討も「満足度・生活の質に関する調査報告書2021」より
2021年10月04日
最優秀賞 25万円! 健康スローガン「一無、二少、三多」のピクトグラム公募
予防月間2022
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン
新型コロナウイルス関連

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
セルフメディケーション・ネット セルフメディケーションの基礎から薬の知識までさまざまな情報を提供
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート