一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

慢性腎臓病(CKD)により体内時計が乱れる 中枢や末梢臓器の時計の乱れが腎機能をさらに悪化

キーワード: 一無・二少・三多 CKD(慢性腎臓病) 三多(多動・多休・多接) 「多休」休養をしっかりとる 疲労(休養不足)

 慢性腎臓病(CKD)により体内時計の乱れが起き、結果として腎機能をさらに悪化させることを、早稲田大学や横浜市立大学などの研究チームが発見した。
 生活習慣を整えることで体内時計の乱れを防ぐことが、腎臓病悪化の予防につながる可能性がある。
体内時計の乱れが睡眠・覚醒パターンや血圧、腎機能の昼夜差をさらに乱す
 早稲田大学や横浜市立大学などの研究グループは、慢性腎臓病(CKD)モデルマウスを用い、CKDにより中枢や末梢臓器の体内時計の乱れが起き、それにより睡眠・覚醒パターンや血圧、腎機能の昼夜差が失われ、結果として腎機能をさらに悪化させることを発見した。

 腎臓病患者は、夜間の中途覚醒、睡眠の質低下、睡眠時間の減少、昼間の過度な眠気といった睡眠障害がしばしばみられ、体内時計(概日時計)の乱れが指摘されている。体内時計つまり時計遺伝子は、腎臓でも24時間の時を刻んでおり、血液からの老廃物の濾過、尿の生成、血圧調節などを制御している。

 一方で、CKDと時計遺伝子の関連、さらには睡眠障害との関連については明らかになっていない。そこで、そこで研究グループは、アデニン誘発性のCKDモデルマウスを用いて、体内時計の変化や睡眠障害について解析を行った。

 研究は、早稲田大学理工学術院の田原優准教授および本橋弘章氏、横浜市立大学医学部の涌井広道講師、University of California Los AngelesのChristopher S. Colwell教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Kidney International」に掲載された。
体内時計の乱れがnon-dipper型を引き起こす
 その結果、CKDモデルマウスでは、活動量の低下、睡眠の断片化(中途覚醒の増加)、飲水行動・尿の増加がみられた。中枢時計では、時計遺伝子Period2(ピリオド2)の発現の日内リズムが減弱していたことから、これらの睡眠・行動の変化は中枢時計の減弱によるものと考えられた。さらに、腎臓の時計遺伝子、時計制御下の遺伝子発現の日内リズムも減弱していた。

 中枢時計は、脳内の視床下部にある視交叉上核と呼ばれる神経核にある。中枢時計はすべての臓器にある"末梢時計"の時刻調節を行う司令塔だ。

 CKD患者では高血圧が起こるが、CKDモデルマウスでも高血圧、かつ低心拍数を示すとともに、睡眠時に血圧が低下しないnon-dipper型の変動を示した。

 健常人では血圧は活動期に高く、夜間は10〜20%低下する日内変動を示すのに対し、non-dipper型は夜間に血圧が低下しない(0〜10%)。non-dipper型の高血圧では、心血管イベントのリスクが高く、CKDの患者ではnon-dipper型の割合がとくに多いという報告がある。

 この結果は、non-dipper型高血圧を再現しているとともに、今回の研究でみられた体内時計の乱れがnon-dipper型、つまり、日内リズムの消失を引き起こしている可能性を示唆している。

体内時計の乱れが腎機能の悪化という負の連鎖につながる
 次に、時計遺伝子のひとつであるClock(クロック)の変異マウスを用いて、同様にアデニン誘発性のCKDモデルマウスを作製し、体内時計の乱れが腎臓病の発症、進行に影響を与えるのかについて検討した。

 その結果、通常のマウス(WT)で作成したCKDモデルマウスに比べ、Clock変異CKDモデルマウスでは腎機能マーカーの悪化(尿中クレアチニン値低下、血清尿素窒素上昇など)、炎症・線維化マーカーの悪化がより顕著だった。

 とくに、Clock変異CKDモデルマウスで、細胞外基質の分解酵素であるMMP-2/9(ゼラチナーゼ)の活性が高く、アデニン代謝物の腎臓内蓄積が多いことが悪化の原因と考えられた。

 以上のことから、中枢時計や末梢臓器の時計の乱れが起きることで、睡眠・覚醒パターンや血圧、腎機能の昼夜差が失われ、さらに乱れた体内時計は腎機能の悪化を促進するという負の連鎖が起きていることが示された。

 研究グループは、「体内時計の乱れが腎臓病悪化の一因であるという今回の研究結果から、ふだんの生活習慣を規則正しく整え、体内時計の健康維持を目指すことが、腎臓病悪化の予防につながる可能性がある。実際に、夜間勤務、シフトワークなどで生活習慣、体内時計が乱れている人は、腎機能が低下しているという疫学調査結果もある」と、指摘している。
早稲田大学理工学術院
The circadian clock is disrupted in mice with adenine-induced tubulointerstitial nephropathy(Kidney International 2020年1月13日)
[Terahata]

関連トピック

一無・二少・三多 ▶ 三多(多動・多休・多接)

2021年04月16日
自分の身体能力を過信している高齢者は体力が低下しやすい コロナ禍でも体を動かし活発な生活を フレイル予防アプリも公開
2021年04月16日
運動をすると睡眠を改善できるのはなぜ? 日中に活発なウォーキングを1時間行うと効果的 睡眠時の脳波を調査
2021年04月16日
高齢者の「フレイル」は家電の利用状況を調べれば分かる 電気使用を見える化する「スマートメーター」で高齢者の健康をチェック
2021年04月16日
オフィスを活動的にすると「座り過ぎ」が減る 肥満やメタボの検査値も改善 オフィス環境づくりは大切
2021年04月16日
腎臓病を予防・改善するための「8つの法則」 世界の成人の10人に1人が腎臓病 世界腎臓デー

疾患 ▶ CKD(慢性腎臓病)

2021年04月16日
人工知能(AI)により生活習慣病の将来リスクを予測 保健指導での意識・行動の改善に貢献 国際医療研究センターなどが共同研究
2021年04月16日
オフィスを活動的にすると「座り過ぎ」が減る 肥満やメタボの検査値も改善 オフィス環境づくりは大切
2021年04月16日
腎臓病を予防・改善するための「8つの法則」 世界の成人の10人に1人が腎臓病 世界腎臓デー
2021年04月16日
野菜3皿、果物2皿を毎日食べるともっとも健康的 食べ過ぎに注意が必要な野菜も判明 10万人を調査
2021年03月11日
健康寿命を伸ばすための10の方法 こうすれば健康に長生きできる 国立医療研究センター6機関が提言

生活習慣 ▶ 疲労(休養不足)

2021年10月07日
良い睡眠は糖尿病のコントロールを良くするために必要 睡眠を改善するための5つの方法
2021年04月16日
運動をすると睡眠を改善できるのはなぜ? 日中に活発なウォーキングを1時間行うと効果的 睡眠時の脳波を調査
2021年04月16日
オフィスを活動的にすると「座り過ぎ」が減る 肥満やメタボの検査値も改善 オフィス環境づくりは大切
2021年03月29日
【新型コロナ】東日本大震災から10年 コロナ禍により被災地で心の状態が悪くなった人が増加 「ソーシャル・キャピタル」の減少が原因?
2021年03月29日
【新型コロナ】「未来の自分」に手紙を書くことでネガティブ感情を軽減 明るい未来を想像することがセルフケアに

一無・二少・三多 ▶ 「多休」休養をしっかりとる

2021年04月16日
運動をすると睡眠を改善できるのはなぜ? 日中に活発なウォーキングを1時間行うと効果的 睡眠時の脳波を調査
2021年04月16日
歩く人にやさしい町づくりで認知症リスクを半分に減らす 歩きたくなる町をデザイン クルマ中心からヒト中心の空間に
2021年03月29日
【新型コロナ】東日本大震災から10年 コロナ禍により被災地で心の状態が悪くなった人が増加 「ソーシャル・キャピタル」の減少が原因?
2021年03月29日
【新型コロナ】「未来の自分」に手紙を書くことでネガティブ感情を軽減 明るい未来を想像することがセルフケアに
2021年03月11日
【新型コロナ】看護職の4割強が「仕事を辞めたい、自信がなくなった」 コロナ禍では看護職の精神健康ケアも必要

 ▶ 一無・二少・三多

2022年02月01日
こころの密を育てる―ネガティブになりがちな今だから「多くの人・こと・ものとつながる」
毎年2月は『全国生活習慣病予防月間』―Web講演会公開中!
2022年01月23日
1月23日は『一無、二少、三多の日』!
「一無、二少、三多」ピクトグラム公募結果と全国生活習慣病予防月間2022のご案内
2021年11月17日
全国生活習慣病予防月間2022実施概要決定! 
テーマは多接:多くの人・こと・ものとつながる!
2021年10月13日
昨年より生活満足度は低下、コロナ前後での比較検討も「満足度・生活の質に関する調査報告書2021」より
2021年10月04日
最優秀賞 25万円! 健康スローガン「一無、二少、三多」のピクトグラム公募
予防月間2022
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン
新型コロナウイルス関連

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
セルフメディケーション・ネット セルフメディケーションの基礎から薬の知識までさまざまな情報を提供
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート