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高齢者の難聴は「外出活動制限」「心理的苦痛」「もの忘れ」を増やす 13万人強を調査

キーワード: 一無・二少・三多 ストレス関連疾患/適応障害 三多(多動・多休・多接) 「多接」多様なつながり

 筑波大学などの研究グループは、「聴こえにくさ」を感じている高齢者は、外出活動の制限、心理的な苦痛、もの忘れが多いことを、13万人強を対象とした大規模調査で明らかにした。
高齢者の「聴こえにくさ」は重要な機能障害
 「聴こえにくさ」を感じている高齢者は、そうでない人に比べ、外出活動制限、心理的苦痛、もの忘れの割合が多く、難聴による相対リスクは外出活動制限で2.0倍、心理的苦痛で2.1倍、もの忘れで7.1倍に上昇することが、13万人以上を対象とした大規模調査で明らかになった。

 研究は、筑波大学医学医療系のヘルスサービスリサーチ分野/ヘルスサービス開発研究センターや、筑波技術大学などの共同研究チームによるもの。研究成果は、日本老年医学会が発行する「Geriatrics & Gerontology International」に掲載された。

 日本および世界では、高齢化にともない難聴(聴こえにくさ)の有病率が増加している。2015年の「世界の疾病負担研究」によると、難聴は「生活の不自由さをもって生きる年数の第4位に位置付けられる重要な機能障害だ。

 難聴をもつ高齢者は、家族や友人とのコミュニケーションが難しくなり、買い物や旅行などの外出活動に困難を感じるようになる。また、難聴は抑うつや不安などの精神症状と関連することが知られている。

 難聴が健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)に影響を及ぼすメカニズムはいくつか考えられ、具体的には「外出活動制限」、「心理的苦痛」、認知症の初期症状の可能性がある「もの忘れ」などが経路となる因子として考えられる。

 さらに、認知症のリスク因子である可能性が指摘されており、「認知症予防、介入、ケアに関するランセット委員会報告」によると、介入できる可能性がある認知症のリスク因子(教育レベルの低さ、高血圧、肥満、難聴、喫煙、うつ病、運動不足、社会的孤立、糖尿病)のひとつとして難聴が挙げられる。
「聴こえにくさ」があるともの忘れのリスクが7倍に上昇
 これまで米国や英国などの諸外国では、高齢者の難聴と様々な指標との関連が大規模に検討されてきたが、日本で国全体の規模でこうした検討は行われていなかった。

 そこで研究グループは、厚生労働省の2016年の「国民生活基礎調査」の回答データをもとに、22万4,641世帯のうち自宅で生活する65歳以上の高齢者13万7,723人(平均年齢74.5歳、男性割合45.1%)を対象に調査した。

 調査票(健康票)の中で、現在の自覚症状として「聴こえにくい」に〇をつけた人を難聴がある人と判定。難聴との評価項目として、外出活動制限(外出時間や作業量などが制限される)、心理的苦痛(6つの質問から計算される「ケスラー心理的苦痛スケール」[K6]の合計点が5点以上)、もの忘れの3つを設定した。

 「聴こえにくい」と回答した高齢者とそうでない高齢者を比較し、多変量ロジスティック回帰分析を用いて解析。年齢・性別・喫煙・飲酒・社会経済的因子・通院中の疾患の影響を調整した上で、難聴の各項目に対する相対リスク(調整後オッズ比)を算出した。

 その結果、1万2,389人(9.0%)が「聴こえにくい」と回答。年齢とともにその割合は上昇し、85歳以上の人々においては約20%が「聴こえにくい」と回答した。

 「聴こえにくい」と回答した人は、そうでない人に比べ、外出活動制限(28.9%対9.5%)、心理的苦痛(39.7%対19.3%)、もの忘れ(37.7%対5.2%)といった項目の割合が有意に高かった。

 多変量ロジスティック回帰分析の結果、難聴の各項目に対する相対リスク(調整後オッズ比)は、外出活動制限に対し2.0(95%信頼区間1.9〜2.1)、心理的苦痛に対し2.1(95%信頼区間2.0〜2.1)、もの忘れに対し7.1(95%信頼区間6.8〜7.4)となった。
加齢にともなう難聴には早期から介入を
 これらから、高齢者の難聴(聴こえにくさ)は外出活動制限、心理的苦痛、もの忘れと関連があり、とくにもの忘れと強い関連があることが示された。

 研究は横断的調査であり、時間的な前後関係は検討できていないので、逆の因果関係の可能性(もの忘れが難聴につながっている可能性)を否定できない。また今回の調査は自己申告によるもので、標準純音聴力検査などの客観的な検査による難聴の有病率よりも低いと考えられる。

 それを差し引いても、高齢者の難聴が健康寿命のさまざまな指標に影響を与えている可能性が大規模調査から示唆された。

 「加齢にともなう難聴に対して、早期から適切な介入を行うことで、外出活動制限・心理的苦痛・もの忘れの一部が予防・軽減できる可能性がある。難聴を訴える高齢者への医療・社会的な対策が健康増進対策のひとつとして求められる」と、研究者は述べている。

筑波大学医学医療系ヘルスサービス開発研究センター
Associations between self-reported hearing loss and outdoor activity limitations, psychological distress, and self-reported memory loss among older people: Analysis of 2016 Comprehensive Survey of Living Conditions in Japan(Geriatrics & Gerontology International 2019年6月24日)
[Terahata]

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