一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

糖尿病の人が「高血圧」の治療を積極的に行うと合併症リスクが減少

キーワード: 高血圧 糖尿病 動脈硬化 心筋梗塞/狭心症

 2型糖尿病の人が高血圧の治療を受けることで、心血管疾患を含むあらゆる合併症による死亡リスクが減少するという研究が発表された。
 血圧値を130/80mmHg以下にコントロールすることを目標に、食事や運動などの生活習慣の改善を含め、積極的な治療を行うことが推奨されている。
糖尿病と高血圧は血管を痛める
 糖尿病も高血圧も、どちらも症状のないまま進行し、さまざまな合併症を引き起こす。日本人でも、死因の上位を占める脳卒中や心筋梗塞などの要因は、糖尿病や高血圧が互いに影響しあって血管を痛め、動脈硬化が進行することだ。また、高血圧により糖尿病腎症が急速に進んでしまう。

 脳梗塞や心筋梗塞は突然起こり、命を奪うこともある恐い病気だ。たとえ命は助かっても、しばしば麻痺などのために、不自由な生活を強いられてしまう。

 脳梗塞も心筋梗塞も、動脈硬化のために血液が流れにくくなって起こる病気であり、糖尿病はその動脈硬化の進行を早めてしまう。糖尿病に高血圧が加わると、血管の伸張能力が低下し、血管壁の細胞が傷つき、動脈硬化がさらに進みやすくなる。

 また、糖尿病腎症が進行し腎不全になってしまうと、機能を補うために透析治療が必要になる場合がある。

関連情報
10人中8人が血圧コントロールが不十分
 米国立衛生研究所(NIH)によると、血圧は「血液が流れる際に血管の内側にかかる圧力」のこと。「血管に対するこの圧力が大き過ぎる」と高血圧が起こる。

 高血圧を判定するために、血圧測定が必要となる。血圧の測定は別の日にも行い、数回の測定結果をもとに、医師が高血圧であるかどうかを判定する。

 日本高血圧学会のガイドラインによると、診察室で測った血圧が、収縮期血圧/拡張期血圧のどちらか一方、あるいは両方が140/90mmHg以上であれば、高血圧と診断される。

 日本では、高血圧有病者の数は4,300万人に上ると推計されているが、うち3,400万人は治療を受けていなかったりコントロールが不十分だ。米国でも高血圧有病者は7,500万人に上り、うち血圧をコントロールしているのは半分に過ぎない。
糖尿病のある人の血圧コントールの目標は130/80mmHg
 米国心臓学会(AHA)が発行する医学誌「Hypertension」に発表された新しい研究で、血圧値を130/80mmHg以下にコントロールするために積極的な治療を受けた2型糖尿病患者は、心臓発作、脳卒中、全死亡のリスクが低下することが明らかになった。

 「血圧コントロールの目標を130/80mmHgとし、積極的な治療を行うことで、さまざまな合併症のリスクが大きく低下することが分かりました。血圧コントロールの指標については多くの議論がありますが、今回の研究はその混乱の解決に役立ちます」と、アイルランド国立大学の予防循環器学部のビル マックヴォイ教授は言う。

 マックヴォイ教授らは、2型糖尿病患者約1万1,000人を対象に、20ヵ国の215ヵ所の医療機関で4年間にわたり追跡調査を行った。血圧コントロールの集中的な治療を受けた患者とそうでない患者を比較し、合併症の発症にどれだけ差が出るかを調べた。

 研究は、2型糖尿病患者1万人以上を対象に、血糖コントロールを強化することで心血管疾患をどれだけ減らせるかを調べている大規模臨床研究「ADVANCE」の一部として行われた。
高血圧の治療を行うと合併症リスクは減少
 期間中に、心臓発作、脳卒中、糖尿病尋常、糖尿病網膜症を含む、837件の死亡と966件を超える主要な血管イベントが確認された。解析した結果、血圧コントロールの積極的な治療ほ受けた患者は、そうでない患者に比べ、死亡リスクが14%減少し、血管イベントが9%減少することが明らかになった。

 これまでの研究では、血圧値が140/90mmHg以上であると、血圧コントロールが有益できることが明らかされているが、それ未満の患者ではどうかは不明だった。

 「2回の血圧測定を行い、血圧値が連続して130/80mmHgを超えている場合は、より低い値にするために、どんな治療が必要となるかを医師と話し合うべきです」と、マックヴォイ教授はアドバイスしている。
糖尿病患者の3人に1人が高血圧も併発
 糖尿病をもつ人の多くは高血圧を併発している。米国の調査によると、糖尿病患者の3人に1人が高血圧も発症している。

 糖尿病と高血圧は、一方が他方の状態を悪化させるため、致命的な組み合わせになるおそれがある。

 なぜ、糖尿病と高血圧とは合併しやすいのだろうか? それは糖尿病で多くみられる次のような背景が影響するためだ。

● インスリン感受性の低下
 インスリンの作用を受ける細胞の感受性が低下している(インスリン抵抗性がある)ため、血糖を下げようとより多くのインスリンが分泌される。その結果、インスリンが交感神経を刺激して、血圧が上昇する。

● 肥満
 肥満になると、インスリンの働きを抑えるホルモンが増えて、インスリン抵抗性が強まり、血圧も上昇しやすくなる。

● 腎機能の低下
 糖尿病で腎機能が低下していると、腎臓からナトリウムをうまく排泄できないため、体内の水分量が増えて血圧が上昇する。

 高血圧と診断されると、血圧がかなり高い人や心血管病の危険性が高い人、糖尿病や腎臓病がある人は、すぐに薬による治療を開始する場合もあるが、いずれにしても食事や運動などの生活習慣の改善は欠かせない。

 減塩、運動、肥満の改善などは、治療法の基本となり、糖尿病の治療と高血圧の治療は一致する点が多い。

More intensive blood pressure therapy helps patients with type 2 diabetes regardless of cardiovascular risk(米国心臓学会 2019年4月29日)
Effects of Blood Pressure Lowering on Clinical Outcomes According to Baseline Blood Pressure and Cardiovascular Risk in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus: The ADVANCE Trial(Hypertension 2019年6月1日)
Know Diabetes by Heart(米国心臓学会)
[Terahata]

関連トピック

疾患 ▶ 糖尿病

2022年07月05日
ウクライナの糖尿病患者さんへの支援に対する御礼(IFL本部)
2022年06月06日
高血圧リスクはタンパク質を多様な食品から摂ると減少 通勤時のウォーキングで糖尿病リスクも低下
2022年06月06日
野菜や果物の抗酸化物質に認知症予防の効果 脳の健康を守るためにどの食べ物が良い?
2022年05月16日
「大麦」を食べている日本人の腸内環境は良好 食物繊維の豊富な大麦が善玉菌を増やす?
2022年05月16日
「運動」と「お酢」を組合わせると体重・高血圧・血糖が改善 保健師監修の「毎日運動プラン」を実施

疾患 ▶ 高血圧

2022年06月06日
高血圧リスクはタンパク質を多様な食品から摂ると減少 通勤時のウォーキングで糖尿病リスクも低下
2022年06月06日
生活スタイルの改善による寿命延伸 生活習慣病の多い人ほど効果は高い 80歳以降でも有用
2022年05月16日
「運動」と「お酢」を組合わせると体重・高血圧・血糖が改善 保健師監修の「毎日運動プラン」を実施
2022年04月13日
奥歯の噛み合わせが悪い高齢者は、高血圧リスクが1.7倍に上昇 口の健康が身体機能の維持に関連
2022年02月28日
体重計はもっていても使わない人が45% 体重測定をしない理由は男性は「面倒くさい」 女性は? 意識調査

疾患 ▶ 心筋梗塞/狭心症

2022年07月12日
女性の「心臓発作」の症状は男性とどう違う? 女性でも胸痛・発汗・息切れが多い 「性差医療」が必要
2022年03月10日
「筋トレ」の実施時間が長いほど糖尿病リスクは低下 家庭や職場で簡単にできる筋トレ
2021年09月10日
コーヒーを1日に最大3杯飲むと脳卒中や心臓病のリスクが低下 糖尿病の人にもベネフィットが
2021年03月11日
健康寿命を伸ばすための10の方法 こうすれば健康に長生きできる 国立医療研究センター6機関が提言
2021年02月18日
WHOが「世界の死因トップ10」を発表 心臓病が1位に 糖尿病と認知症も上位に 食事と運動で予防・改善

疾患 ▶ 動脈硬化

2022年07月12日
女性の「心臓発作」の症状は男性とどう違う? 女性でも胸痛・発汗・息切れが多い 「性差医療」が必要
2021年03月11日
健康寿命を伸ばすための10の方法 こうすれば健康に長生きできる 国立医療研究センター6機関が提言
2021年02月18日
WHOが「世界の死因トップ10」を発表 心臓病が1位に 糖尿病と認知症も上位に 食事と運動で予防・改善
2021年02月18日
ウォーキングなどの運動は「1日にわずか12分」でも効果がある 運動など生活スタイル改善の指導を容易に
2020年12月14日
肥満や糖尿病に「コーヒー・緑茶・アルコール」は良い・悪い? どれくらい飲むと健康効果を期待できる?
予防月間2022
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン
新型コロナウイルス関連

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
セルフメディケーション・ネット セルフメディケーションの基礎から薬の知識までさまざまな情報を提供
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート