一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

糖尿病の人は「アルコール」に注意 連休に飲み過ぎないための7つの対策

キーワード: 糖尿病 セルフケア 飲酒

 お酒は適量を飲むと、ストレスを解消できる効果を期待できるが、量が増えると確実に心と体の健康を損なう原因になる。糖尿病のある人は、アルコールの飲み過ぎによるダメージを受けやすいという調査結果が発表された。
 休日が続くと、アルコールを飲み過ぎてしまいがちになる。米国糖尿病学会(ADA)などは、アルコールとの「上手な付き合い方」を紹介している。
つい飲み過ぎてしまうのがお酒
 アルコールに含まれるカロリーは1gあたり7kcalで、脂肪の9kcalに次いで高カロリーだ。カロリーの他に栄養成分はほとんど含まれない(非蒸留酒には糖質が含まれる)。

 はじめは「少し」と思っていても、つい飲み過ぎてしまうのがお酒だ。さらに、アルコールには食欲を高める作用もあり、食べ過ぎて肥満の原因になる。

 アルコールに強い体質かどうかは遺伝によって決まり、日本人は4〜5割程度がお酒に弱い遺伝子をもっているとされる。下戸にとっては宴席で何を飲むかというのは、切実な問題だ。

関連情報
適量であれば血糖コントロールが良好という報告も
 アルコール摂取量と糖尿病などのリスクはJカーブの関係にあるとされる。血糖コントロールは、アルコールの摂取量が適量であると良好で、飲み過ぎると悪化するという、Jカーブ現象が報告されている。

 アルコール摂取と糖尿病の発症リスクを調べた研究でも、純アルコール量で約20〜25g程度の飲酒によりリスクが低下し、それより大量に飲むとその効果は打ち消られるという報告がある。
アルコールを飲むときの注意点
 米国糖尿病学会(ADA)は、糖尿病とともに生きる人がアルコールを飲むときに、下記の注意が必要だとアドバイスしている。

  • 血糖降下薬を飲んでいる人は、食事を十分に摂らずに飲酒すると低血糖になるおそれがある。食事量が低下すると、肝臓のグリコーゲンが減少し、さらにアルコールの代謝にともなう代謝経路の変化により、糖新生(肝臓での糖の産生)が抑制されるからだ。

  • とくにインスリンや、SU薬などの経口血糖降下剤で薬物治療をしている人は、アルコールの急性効果として低血糖を起こしやすくなる。食事をとらずに飲酒するのは避けるべきだ。

  • 2型糖尿病の治療に広く用いられているビグアナイド薬は、アルコールを過度に飲むと、副作用である乳酸アシドーシスが起こりやすくなる。飲み過ぎにはくれぐれも注意したい。

  • SGLT2阻害薬は、血液中の糖を尿中に排出させることで血糖値を下げるタイプの治療薬。過度のアルコールを摂取すると脱水が起こりやすくなるので、このタイプの薬を飲んでいるときには注意をする。

  • アルコールはアルコールそのものの作用やアルコールの代謝により血糖値に影響を与える。アルコールを飲むときでも、食事は3食をきちんととることが大切。アルコールを飲むからといって、食事を抜くのは危険がともなう。

  • お酒を控えていたり、飲めない体質の人は、周囲の人に「自分はお酒を飲めない」ことを事前に伝えておく。

  • 会席やパーティーでは、ビールやウイスキーの水割りの代わりに、色が似ているウーロン茶やノンアルコール飲料を上手に利用する。

  • お酒を飲むときは水も飲む。アルコールには利尿作用がありトイレが近くなる。排出された水分を補わないと脱水状態になりやすい。
純アルコール量で約20〜25gが限度
 厚生労働省の指針では、1日のアルコール摂取量の目安を、純アルコール量で約20g程度だとしている。これをアルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500mL)、日本酒は1合(180mL)、焼酎0.6合(約110mL)、ウイスキーはダブル1杯(60mL)、ワイン1/4本(約180mL)、缶チューハイ1.5缶(約520mL)が目安となる。

 アルコール健康医学協会によると、血液中のアルコール濃度0.02〜0.04%なら「爽快期」で、さわやかな気分になれる。このときはまだ、皮膚が赤くなったり、陽気になったりする程度だ。0.05〜0.10%は「ほろ酔い期」。体温が上がり、脈が速くなったりする。

 一般的に、純アルコール量で約20〜25gを限度とするのが上手なお酒の飲み方といえる。これは、「爽快期」を維持して酒を楽しみ、酒量が増えたとしても「ほろ酔い期」でとどめておける量だ。

 体重約60kgの人が日本酒にして2合のお酒を30分以内に飲んだ場合、アルコールは約3〜4時間体内にとどまる。それより多い量のお酒を飲むと、アルコールが体内から消失するまで約6〜7時間かかる。

 これには個人差があるため、体質的にお酒に弱い人や女性はもっと長い時間がかかる。深夜まで飲んでいると翌朝起床後まで体内にアルコールが残っているため、二日酔いにもなりやすいので注意が必要だ
「糖質ゼロ」でもカロリーは「ゼロ」ではない
 「糖質ゼロ」「カロリーオフ」といった表示をしたビールや発泡酒などの酒類が店頭をにぎわしている。しかし、「糖質ゼロ」と表示してあっても、カロリーは「ゼロ」ではないので注意が必要だ。健康増進法に基づく栄養表示基準では、飲料では100mL当りで糖質0.5g未満であれば「糖質ゼロ」と表示でき、熱量(カロリー)が20kcal以下であれば「カロリーオフ」と表示できる。

 実際には、量を少なくしていても糖質が含まれていたり、カロリーもある場合がある。そもそも酒類のカロリーは、糖質の量よりもアルコール度数の方が影響は大きい。アルコールは栄養表示基準で1g当たり7kcalで計算される。100mLは約100gなので、アルコール分5%であれば100mL当たり35kcal。ビール350mL(レギュラーサイズ)では、糖質も含まれているので、カロリーは140kcalくらいになる。

 オーストラリアでの研究によると、糖質ゼロのビールをよく飲んでいる人は「普通のビールより健康的だ」と思い込み、より多くの量を飲んでしまう傾向があるという。大量に飲むと余ったカロリーが体内に蓄えられ、肥満になりやすくなるので注意が必要だ。
寝る前の飲酒は睡眠の質を下げる
 アルコールは寝つくまでの時間を短縮させるので、寝酒に使っている人は少なくない。しかし就床前に飲んだアルコールは、少量でも睡眠の後半部分を障害することが知られている。つまり、寝つきは良いが夜中に目覚めてその後なかなか眠れない「中途覚醒」が起こりやすくなる。

 睡眠の質を高めたいのなら、就床前にはアルコールを飲まないのが望ましい。アルコールが体内から消失するまでにおよそ6〜7時間がかかる。就床6時間前までに飲まないようにすると、気持ちの良い睡眠を得られる。
飲み過ぎは体にも心にも良くない
 適量の飲酒は気分を良くし、リラックス効果もありストレス解消になるが、飲み過ぎは心にも体にも好ましくない影響を及ぼす。また、強いストレスを感じているときにお酒で解消しようとすると逆効果になることもある。

 糖尿病のある人では、糖尿病のない人に比べ、飲酒による事故や死亡のリスクが高いことが、フィンランドのヘルシンキ大学病院の研究で明らかになった。

 研究チームは、計43万4,629人を対象に平均7.1年間の追跡調査を実施した。うち糖尿病ある人が20万8,148人で、その76%が飲み薬のみで治療を受けていた。

 糖尿病のある人の飲酒に関連する死亡リスクは、糖尿病のない人に比べ、飲み薬を服用している男性で1.71倍に、女性で2.10倍に上昇した。

 インスリン注射を行っている人では、治療がより複雑になる。飲酒に関連する死亡リスクは、インスリン注射を行っている男性で6.92倍に、女性でも10.60倍に上昇した。
糖尿病の人を支える心理的・社会的なサポートが必要
 「糖尿病の自己管理は心に大きな負担をもたらします。毎日インスリンを注射し、血糖値をチェックし、食事や運動も管理し、血糖コントロールを良好に維持するのは大変なことです」と、ヘルシンキ大学病院のレオ ニスカネン教授は言う。

 糖尿病とともに生きる人々は、とくに血糖コントロールがうまくいかないときに、大きなストレスを抱え不安に陥りやすい。糖尿病の治療は大きな精神的な負担を強いるので、アルコールを飲むことでストレスを解消しようとする人がいても無理のないことだ。

 「糖尿病とともに生きる人々を支える心理的・社会的なサポートが必要です。医師や医療スタッフは、糖尿病患者のストレスを効果的に軽減しサポートするために何が必要か、よく考えて対策しておく必要があります」と、ニスカネン教授は指摘している。

アルコール(米国糖尿病学会 2017年10月16日)
The relationship between alcohol consumption and glycemic control among patients with diabetes: the Kaiser Permanente Northern California Diabetes Registry(Journal of General Internal Medicine 2008年3月)
Alcohol as a risk factor for type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis(Diabetes Care 2009年11月)
VicHealth National Community Attitudes Survey: awareness and behaviours of low carb beer drinkers(VicHealth 2010年12月)
Diabetic patients are more at risk of death from alcohol, accidents and suicide(欧州内分泌学会 2018年10月12日)
Excess mortality in Finnish diabetic subjects due to alcohol, accidents and suicide: a nationwide study(European Journal of Endocrinology 2018年10月12日)
[Terahata]

関連トピック

疾患 ▶ 糖尿病

2022年07月05日
ウクライナの糖尿病患者さんへの支援に対する御礼(IFL本部)
2022年06月06日
高血圧リスクはタンパク質を多様な食品から摂ると減少 通勤時のウォーキングで糖尿病リスクも低下
2022年06月06日
野菜や果物の抗酸化物質に認知症予防の効果 脳の健康を守るためにどの食べ物が良い?
2022年05月16日
「大麦」を食べている日本人の腸内環境は良好 食物繊維の豊富な大麦が善玉菌を増やす?
2022年05月16日
「運動」と「お酢」を組合わせると体重・高血圧・血糖が改善 保健師監修の「毎日運動プラン」を実施

テーマ ▶ セルフケア

2022年02月28日
体重計はもっていても使わない人が45% 体重測定をしない理由は男性は「面倒くさい」 女性は? 意識調査
2022年02月28日
多様な運動を組合わせた「カクテル運動」で健康に 忙しくて運動の時間をとれない人も大丈夫
2021年05月06日
【健やか21】児童生徒の新型コロナウイルスへの感染状況や学校の感染症対策など感染症の専門家へのインタビュー動画の公開について(文部科学省)
2021年02月26日
【健やか21】学会からの提言「新型コロナ感染症拡大予防のために- 園や学校現場等における 歯みがき・うがい・食べ方について -」の掲載について(日本小児歯科学会)
2020年10月30日
【健やか21】4人に1人は食習慣・運動習慣を「改善するつもりはない」

生活習慣 ▶ 飲酒

2022年06月06日
生活スタイルの改善による寿命延伸 生活習慣病の多い人ほど効果は高い 80歳以降でも有用
2021年12月24日
糖尿病の人は「アルコール」に注意 年末年始に飲み過ぎないための7つの対策
2021年10月08日
11月10日〜16日はアルコ―ル関連問題啓発週間です。飲酒と健康に関する講演会は誰でも視聴可能!
2021年08月05日
【健やか21】「令和3年版厚生労働白書」の公表について(厚生労働省)
2021年08月02日
【新型コロナ】糖尿病の人はアルコールの飲み過ぎにも注意 飲酒で74万人ががんを発症
予防月間2022
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン
新型コロナウイルス関連

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
セルフメディケーション・ネット セルフメディケーションの基礎から薬の知識までさまざまな情報を提供
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート