一般社団法人 日本生活習慣病予防協会 JPALD
生活習慣病とその予防
主な生活習慣病
ニュース

認知症の危険因子は「糖尿病」「高血圧」「肥満」 生活改善でリスクを軽減できる

キーワード: 高血圧 脂質異常症(高脂血症) 糖尿病 心筋梗塞/狭心症 脳梗塞/脳出血 認知症

 認知症の危険因子は「糖尿病」「高血圧」「肥満」「喫煙」であることが、新たな研究で明らかになった。
 運動や食事などの生活スタイルを改善し、肥満を解消することで、認知症の発症リスクを減らすことができる。
血管の老化が認知症のリスクを高める
 「高血糖」「高血圧」「脂質異常症」「肥満」「内臓脂肪の蓄積」「喫煙」などは血管をいためて、動脈硬化が進みやすくする。

 心筋梗塞や脳梗塞は血流が低下したり閉塞することで起こる病気だが、注意しなければならないのはそうしたよく知られた重い病気だけではない。

 不健康な生活による危険因子は、脳の血管にも障害をもたし、認知症のリスクも高めることが、最近の研究で分かったきた。

 英国のエディンバラ大学の抗加齢・認知症疾患医療センターのサイモン コックス氏らは、「英国バイオバンク」に登録された44〜79歳の男女9,772人の脳をMRI(核磁気共鳴画像法)で検査した。

 「英国バイオバンク」は、疾患の発症に遺伝的要因と環境的要因がどのように影響しているかを調査している英国の大規模研究。50万人の英国人を対象に、遺伝子情報を含む生物学的な試料を集めたデータベースを作成している。

関連情報
危険因子が重なると認知症のリスクが相乗的に上昇
 研究チームが、脳の状態と血管性の危険因子の関連について調査した結果、体格指数(BMI)と腹囲周囲径、糖尿病、高血圧、高コレステロールなどを適切にコントロールしないと、脳の血管に障害が起こりやすくなり、アルツハイマー病などの認知症のリスクが高まることが明らかになった。

 これらの危険因子はたがいに関連している。重複して因子をもっていると、認知症のリスクが相乗的に上昇するという。脳が委縮しやすくなり、ニューロン(神経細胞)が集まっている灰白質が少なくなり、脳と脊髄からなり神経線維が集まっている白質にも障害が起こりやすくなる。

 検診で検査される項目の多くは、脳の健康にも関わっていることが分かった。血管性の危険因子を多くもっていると、検査値が正常の人に比べ、脳の血管がダメージを受けやすいことが明らかになった。

 「注意しなければならなのは、こうした障害は中年期にはすでにはじまっていることです」と、コックス氏は言う。
脳のダメージは中年期から積もっていく 若いうちから対策を
 脳の血管がもっともダメージを受けやすいのは「糖尿病」「高血圧」「喫煙」であることも判明した。

 「血管性の危険因子をもっとも多くもっている人では、灰白質のボリュームが平均して3%(18mL)少なく、白質の損傷リスクも1.5倍高いことが分かりました。18mLはティースプーン1杯分とわずかな量ですが、その影響は大きいのです」と、コックス氏は指摘する。

 こうした危険因子をひとつでも多く減らすために、生活スタイルを健康的に変えていくことが必要だ。

 生活スタイルの改善は、もっとも容易に取り組めて、しかも効果的だ。これまで糖尿病や高血圧などの慢性疾患を予防・改善するために指導されることが多かったが、実は脳の健康にとっても重要だという。

 「不健康な生活は心血管疾患のリスクを高めるだけではありません。中年期に入ると脳の委縮はすでにはじまっています。年齢を重ねてからアルツハイマー病などの認知症を発症するのを防ぐために、若いうちに健康的な生活を心がけることが大切です」と、コックス氏は強調する。
たった6ヵ月間のウォーキングで認知機能の低下を逆転できる
 週に3回のウォーキングを続けていれば、心肺機能が向上するだけでなく、脳の老化を抑えられるという研究が発表された。

 「運動により心血管リスクが改善するということは、同時に脳の健康にもつながり、認知機能が向上するということです」と、米デューク大学の臨床心理士であるジェームズ ブルーメンタール氏は言う。

 研究には、高血圧や心血管リスクのリスクがあり、記憶力や思考力に衰えがみられる55歳以上の男女160人が参加した。

 参加者に、ウォーキングや室内サイクリングなどの有酸素運動を週3回、6ヵ月続けてもらった。

 「DASHダイエット」にも取り組んでもらった。DASHとは「高血圧を防ぐ食事方法」のこと。▼塩分を控える、▼飽和脂肪酸を抑え、不飽和脂肪酸を十分に摂る、▼野菜は1日350g以上、▼全粒粉など精製されていない穀類を摂る、▼糖質を摂り過ぎない――といった特徴がある。
脳の健康を改善するために生活スタイルを見直すべき
 その結果、計画的に行動する能力を示す「実行機能」が向上することが判明。運動とDASHダイエットに同時に取り組んだグループでは、脳の実行機能の能力が9歳ほど若返ったという。

 なお、認知機能を向上させるために、運動と食事の改善の両方が必要で、どちらか片方だけでは十分な効果を得られなかった。保健指導だけを受け、運動と食事を改善しなかったグループでは、認知機能はベースラインより低下していた。

 週3回の有酸素運動を続けるのは、それほど大変なことではない。研究で運動に取り組んだグループでは、ドロップアウトした人はほとんどいなかったという。

 生活スタイルを改善することが、アルツハイマー病や脳血管性認知症のリスクを低下させることは、多くの研究で確かめられている。

 「脳の健康を改善するために、今日から食事や運動などの生活スタイルを見直すべきです」と、ブルーメンタール氏は言う。
肥満の解消が認知症の予防につながる
 認知症の危険性を高める因子として重要なのは過体重や肥満だという研究も発表された。しかも、肥満である期間が長いほど、認知症のリスクは上昇するという。

 英国のエクセター大学公衆衛生学部のデイビッド メルツァー教授らは、65〜74歳でがん、心不全など、複数の慢性の健康障害をもたない成人25万7,523人と、何らかの健康障害をもつ16万1,927人を対象に、平均14.9年の追跡調査を行った。

 その結果、肥満である期間が10〜14.9年に及ぶ、つまりずっと肥満だった人では、認知症の発症率が17%上昇することが分かった。

 その一方で、肥満である期間が10年未満であると、認知症の発症率は低下していた。

 長期間の調査で分かったことは、体重をコントロールし、肥満を解消することが、認知症の予防につながる可能性があることだ。

 「適正体重を維持し、体をより活発に動かし、血圧値や血糖値、コレステロール値を良好にコントロールすることで、認知症のリスクを減らせます」と、メルツァー教授は言う。

Smoking, high blood pressure, diabetes and obesity each linked to unhealthy brains(欧州心臓病学会 2019年3月11日)
Associations between vascular risk factors and brain MRI indices in UK Biobank(European Heart Journal 2019年3月11日)
Lifestyle and neurocognition in older adults with cognitive impairments: A randomized trial(Neurology 2019年1月15日)
Obesity and Longer Term Risks of Dementia in 65-74 Year Olds(Age and Ageing 2019年2月6日)
[Terahata]

関連トピック

疾患 ▶ 糖尿病

2022年01月26日
【新型コロナ】テレビばかり見ていると血栓症リスクが上昇 糖尿病の人は立ち上がって運動を
2022年01月20日
インターバルトレーニングが糖尿病の人の糖代謝を改善 速歩とゆっくり歩きを交互に 脂肪肝も解消
2022年01月20日
糖尿病は認知症リスクを高める 予備群の段階でリスクは上昇 認知症を防ぐ生活スタイルとは?
2022年01月19日
肉やソーセージを食べ過ぎると糖尿病リスクは上昇 植物性食品に置き換えるとリスクは減少
2022年01月13日
糖尿病の人は血糖値が高いと歯を失いやすい 歯の喪失をこうして防ぐ 予備群の段階からご注意

疾患 ▶ 高血圧

2021年07月12日
コロナ禍での高血圧症患者さんの過ごし方
2021年04月16日
人工知能(AI)により生活習慣病の将来リスクを予測 保健指導での意識・行動の改善に貢献 国際医療研究センターなどが共同研究
2021年04月16日
自分の身体能力を過信している高齢者は体力が低下しやすい コロナ禍でも体を動かし活発な生活を フレイル予防アプリも公開
2021年04月16日
運動をすると睡眠を改善できるのはなぜ? 日中に活発なウォーキングを1時間行うと効果的 睡眠時の脳波を調査
2021年04月16日
オフィスを活動的にすると「座り過ぎ」が減る 肥満やメタボの検査値も改善 オフィス環境づくりは大切

疾患 ▶ 脂質異常症(高脂血症)

2021年07月28日
糖尿病はアルツハイマー病の危険因子 脳を活性化して予防 新しいことにもチャレンジ
2021年04月16日
人工知能(AI)により生活習慣病の将来リスクを予測 保健指導での意識・行動の改善に貢献 国際医療研究センターなどが共同研究
2021年04月16日
自分の身体能力を過信している高齢者は体力が低下しやすい コロナ禍でも体を動かし活発な生活を フレイル予防アプリも公開
2021年04月16日
運動をすると睡眠を改善できるのはなぜ? 日中に活発なウォーキングを1時間行うと効果的 睡眠時の脳波を調査
2021年04月16日
オフィスを活動的にすると「座り過ぎ」が減る 肥満やメタボの検査値も改善 オフィス環境づくりは大切

疾患 ▶ 認知症

2021年07月28日
糖尿病はアルツハイマー病の危険因子 脳を活性化して予防 新しいことにもチャレンジ
2021年04月16日
歩く人にやさしい町づくりで認知症リスクを半分に減らす 歩きたくなる町をデザイン クルマ中心からヒト中心の空間に
2021年03月11日
健康寿命を伸ばすための10の方法 こうすれば健康に長生きできる 国立医療研究センター6機関が提言
2021年03月11日
魚を食べる人は認知症になりにくい 魚の摂取量が多いと認知症リスクが61%低下
2021年03月11日
「食と認知機能」についての意識調査 医療従事者の8割が食事による認知機能の改善を期待 8割は「認知症は理解されていない」

疾患 ▶ 脳梗塞/脳出血

2021年12月20日
牛乳を毎日1杯飲むと脳卒中リスクが低下 認知症リスクも低下 牛乳に血圧を下げる効果が?
2021年09月15日
ピーナッツを食べると脳卒中リスクが低下 不飽和脂肪酸や食物繊維などが豊富 日本人7万人超を調査
2021年09月10日
コーヒーを1日に最大3杯飲むと脳卒中や心臓病のリスクが低下 糖尿病の人にもベネフィットが
2021年03月11日
健康寿命を伸ばすための10の方法 こうすれば健康に長生きできる 国立医療研究センター6機関が提言
2021年02月18日
WHOが「世界の死因トップ10」を発表 心臓病が1位に 糖尿病と認知症も上位に 食事と運動で予防・改善

疾患 ▶ 心筋梗塞/狭心症

2021年09月10日
コーヒーを1日に最大3杯飲むと脳卒中や心臓病のリスクが低下 糖尿病の人にもベネフィットが
2021年03月11日
健康寿命を伸ばすための10の方法 こうすれば健康に長生きできる 国立医療研究センター6機関が提言
2021年02月18日
WHOが「世界の死因トップ10」を発表 心臓病が1位に 糖尿病と認知症も上位に 食事と運動で予防・改善
2021年02月09日
くるみなど植物由来のオメガ3脂肪酸を豊富に含む食生活で心筋梗塞後の死亡リスクが低下
2020年12月24日
【新型コロナ】年末年始は「真剣勝負の3週間」 みんなで危機感を共有しコロナ収束の突破口に
予防月間2022
明治PA3
新着ニュース

トピックス&オピニオン
新型コロナウイルス関連

Dr.純子のメディカルサロン こころがきれいになる医学
保健指導リソースガイド
国際糖尿病支援基金
糖尿病ネットワーク 患者さん・医療スタッフのための糖尿病の総合情報サイト
糖尿病リソースガイド 医師・医療スタッフ向け糖尿病関連製品の情報サイト
日本健康運動研究所 健康づくりに役立つ情報満載。運動理論から基礎、応用を詳細に解説
セルフメディケーション・ネット セルフメディケーションの基礎から薬の知識までさまざまな情報を提供
日本くすり教育研究所 小・中学校で「くすり教育」を担う指導者をサポート