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運動は「魔法の薬」 健康なエイジングのために運動が必要 食事を改善でき腎臓にも効果

キーワード: 一無・二少・三多 糖尿病 CKD(慢性腎臓病) 三多(多動・多休・多接) 「多動」身体を活発に動かす 身体活動・運動不足 食生活

 運動は「マジック ピル(魔法の薬)」とも呼ばれ、高血圧や糖尿病、脂質異常症など、生活習慣病の予防・改善のために欠かせない。
 最近の研究では、運動をしている人では食事スタイルも健康的になることが分かった。運動は慢性腎臓病の改善にも役立つという。
運動がHbA1cを下げる
 ウォーキングなどの運動には「血糖が下がる」「血圧が下がる」「悪玉のLDLコレステロールが下がる」「中性脂肪が下がる」など、さまざまなメリットがある。また、運動をすると、善玉のHDLコレステロールが血液中に増える。HDLコレステロールは血管の壁にたまった悪玉コレステロールを回収して、動脈硬化の進展を抑えてくれる。

 血糖値の高い人が運動を行うと、ブドウ糖がすぐに消費され血糖値が下がる。運動を続けていると血中のブドウ糖を調整するインスリンが効きやすい体質になる。

 ハーバード大学公衆衛生大学院の研究によると、糖尿病の治療を受けている人が運動をはじめると、HbA1cが0.7ポイント改善するという。
週に4時間以上のウォーキングで心臓病リスクが大幅低下
 カナダのマックマスター大学の研究によると、運動不足がわずか2週間続いただけで、2型糖尿病の発症リスクは上昇する。

 カナダ糖尿病協会の助成を得て行われたこの研究では、肥満があり糖尿病予備群と判定された22人の男女(平均年齢69歳)を対象に、2週間運動量を減らしてもらい、血糖値などの変化を調べた。

 1日の歩数を1,000歩減らしただけでも運動不足に陥る。運動不足が2週間続くと、その後で通常の生活に戻っても検査値はもとに戻らず、血糖値やインスリン値が上昇し、骨格筋量は減少し、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が亢進した。

 「仕事が忙しいなど運動不足が予想される場合、血糖値を正常に保つために、体を積極的に動かす対策が必要となります。たとえば病気などで入院し、身体的不活動の期間を過ごした高齢者などでも、健康に有害な影響が全体的にあらわれる可能性があります」と、マックマスター大学運動生理学部のクリス マクグローリー氏は言う。

 とくに高齢者では、運動不足の期間が長引くのを防ぐために、積極的な運動指導やリハビリテーションなどが必要だという。

 日本人約7万人を10年間追跡した研究でも、毎日1時間以上歩く人は30分歩く人に比べ、脳梗塞で死亡するリスクが3割近く減少し、心筋梗塞を含む心血管疾患で死亡するリスクが2割近く減少することが示されている。
運動でモビリティを維持することが健康に年齢を重ねるためのカギとなる
マックマスター大学のサイトで公開されているビデオ
運動をすると食事も改善できる
 糖尿病の治療で効果をとくに期待できるのは、ウォーキングのような有酸素運動と筋力トレーニングだ。有酸素運動の目標は1週間当たり150分以上で、スクワットなどの筋力トレーニング週に3日程度含めるのが目標だ。

 米国のテキサス大学の研究で、運動をする習慣のない人が運動を始めると、食生活も改善できる傾向があることが示された。

 研究チームは、運動習慣をもたず、食事療法も行っていない2,680人の18〜35歳の男女に、15週間の運動プログラムに取り組んでもらった。

 運動は5分間のウォームアップからはじまり、ウォーキングなどの有酸素運動を、最大心拍数の65〜85%の強度になるよう調整し30分行い、5分間のクールダウンで終わった。

 その結果、参加者は運動をはじめる前は、高カロリーの揚げ物や炭酸飲料、お菓子などを好んで食べていたのが、プログラムの終了時には低脂肪の肉、野菜、果物などの健康的な食品を選ぶ頻度が高まることが分かった。

関連情報
運動により脳内の神経伝達物資が活発に
 研究者は、運動を習慣として行うことで、脳内のドーパミンなどの神経伝達物資の活動が活発になり、高脂肪の食品や動物性食品への嗜好が減ったのではないかと指摘している。運動はレプチンなどの食欲を調節するホルモンの分泌にも影響する。

 「運動をすることで、食事などの運動以外の領域にも好ましい効果があらわれることが分かりました。運動と食事の組合せは強力で、健康な生活スタイルを実現するために欠かせません」と、テキサス大学栄養科学部のモーリー ブレイ氏は言う。
腎臓病の人にも運動は勧められる
 運動は腎臓の健康のためにも有用だ。運動が慢性腎臓病(CKD)の患者の症状を軽減することが、英国のレスター大学の研究で明らかになった。

 これまで慢性腎臓病の患者は、運動をすると腎臓に負担がかかるので、運動が制限されるのが一般的だった。しかし最近の研究では、適度な運動は腎臓の血管を広げて、腎臓への負担を軽減することが分かってきた。

 研究チームは、36人の患者を2つのグループに分け、1つめのグループにはウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動を行ってもらい、もう1つのグループには有酸素運動に加えて足を中心とした筋力トレーニングに取り組んでもらった。プログラムは12週間続けられた。

 慢性腎臓病は病気がかなり進行してはじめて症状があらわれる。いろいろな症状があらわれるのは、腎臓の働きが低下することで体内にさまざまな有害物質がたまってしまうからだ。主な症状は疲労、息切れ・むくみ・けいれん、高血圧、かゆみ、食欲不振、頭痛、吐き気、骨が弱くなるなどだ。
運動は慢性腎臓病(CKD)の症状も軽減する
 運動プログラムの結果、症状は全体に17%減少し、疲労は10〜16%減少した。有酸素運動だけだと、息切れが40%、かゆみが35%減少したが、筋力トレーニングを追加すると、さらに筋力が41%向上し、筋肉のけいれんやこわばりといった症状も軽減された。

 「運動は腎臓の状態を良くし、生活の質にも有意なプラスの影響を与えます。運動は、体力の改善と症状の軽減に加えて、糖尿病の管理や、血圧やコレステロールなどの管理も改善します」と、レスター大学のトム ウィルキンソン氏は言う。

 ただし、運動は慢性腎臓病の病態が安定している人に限り勧められるという。運動を開始するときには医師に相談し、自分の腎臓の状態を知っておくことが大切だ。
インスリン治療を行っている患者は低血糖に注意
 ハーバード大学公衆衛生大学院によると、2型糖尿病の人が運動をするのに最適な時間帯は食後1〜3時間だという。インスリン治療を行っている患者は、運動する前に血糖自己測定を行うと、低血糖が起きていないかを知ることができる。

 運動前に血糖値が100mg/dL未満の場合は、果物を1カップ食べるか、軽食をとることが、低血糖を防ぐのに役立つ。30分後にもう一度測定すれば、血糖値が安定しているかどうかが分かる。とくに激しい運動や活動をした後に血糖値をチェックすることを勧めている。インスリン治療を行っている場合は、一般的に低血糖を発症するリスクの高い時間帯は運動後6〜12時間だ。

Just two weeks' inactivity can trigger diabetic symptoms in vulnerable patients: Research(マックマスター大学 2018年7月31日)
Failed Recovery of Glycemic Control and Myofibrillar Protein Synthesis With 2 wk of Physical Inactivity in Overweight, Prediabetic Older Adults(Journals of Gerontology 2017年10月31日)
Want healthier eating habits? Start with a workout(テキサス大学 2019年1月30日)
The influence of 15-week exercise training on dietary patterns among young adults(International Journal of Obesity 2019年1月18日)
Exercise shown to improve symptoms of patients with chronic kidney disease(レスター大学 2018年8月16日)
Twelve weeks of supervised exercise improves self-reported symptom burden and fatigue in chronic kidney disease: a secondary analysis of the ‘ExTra CKD’ trial(Clinical Kidney Journal 2018年8月14日)
The importance of exercise when you have diabetes(ハーバード大学公衆衛生大学院)
多目的コホート研究(JPHC Study) 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ
[Terahata]

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