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「ストレス反応」は朝と夜で異なる 体内時計をストレスマネジメントに応用

キーワード: 一無・二少・三多 ストレス関連疾患/適応障害 三多(多動・多休・多接) 「多休」休養をしっかりとる

 体内時計がストレスホルモンに影響を与えていることが、北海道大学の研究で分かった。体のストレス反応に関わるコルチゾールは昼間に活性化し夜は低下し、一方で夜は交感神経系が優位になるという。
 ストレスを夜に受けると、心身が対応できなくなるのは、体内時計の働きによるものだ。ストレスをコントロールするために、体内時計の働きを考える必要があることが示された。
体内時計がストレス反応に影響
 人の体に備わっている体内時計は、行動と生理機能を時間的に統合する働きをしている。体内時計が乱れると心身にさまざまな不調が生じ、うつ病や気分障害、2型糖尿病、高血圧といった内分泌・循環器疾患のリスクが増加することが分かっている。

 その体内時計がストレスホルモンに影響を与えていることが、北海道大学の研究で分かった。

 脳内の視床下部から下垂体を経由して副腎へと至る一連のシステム(視床下部―下垂体―副腎皮質系:HPA系)の活性化が、ストレス反応において重要な役割を果たしていると考えられている。ストレスを受けると、副腎皮質からストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が促進される。コルチゾールは短期的なストレスにうまく適応できるように作用する。

 HPA系にはホルモンが分泌され過ぎないように調整するフィードバック機構もある。HPA系のストレス反応は、睡眠習慣や気分状態に影響していると考えられている。

 一方、自律神経は交感神経と副交感神経に分けられ、バランスをとりながら働いている。ストレスを受けると、脳からの指令により副腎皮質から副腎皮質ホルモンが分泌され、同時に交感神経が支配している副腎皮質の中の副腎髄質からアドレナリンなどが分泌される。これらのホルモンには、血糖値上昇、血圧上昇、免疫抑制、胃酸分泌促進、覚醒といったさまざまな作用がある。
コルチゾールの分泌リズムは夜間に低下
 HPA系は、心理的・身体的ストレッサーに適応するために体に備わっている防御システムの代表的なものだと考えられている。HPA系によって分泌が促進されるコルチゾールは、体内時計のコントロールを受ける代表的なホルモンで、朝方に高く、夜間に低いリズムを示す。

 研究グループは、27人の男女を対象に、心理的ストレッサーに対するストレス反応を朝と夜とで比較した。活動量計を使い被験者が規則正しい生活を2週間続けたことを確認した後で、起床から2時間おきに8回唾液を採取し、唾液中コルチゾール濃度リズムを測定した。

 その後、起床時刻の2時間後と10時間後に、HPA系の心理的ストレスの評価に用いられているTSST試験を実施。この試験では、30分間の安静条件をとった後、インタビュー(5分)、スピーチ課題(5分)、暗算課題(5分)を行った。

 TSST試験前およびTSST終了直後から30分後まで10分間隔で唾液を採取し、唾液中コルチゾール濃度を測定した。また、実験中には心電図を計測し、心拍数の変化も調べた。

 その結果、朝方にTSST試験を実施した群では、試験前に比べ試験後20分にコルチゾール濃度が有意に上昇し、正常なストレス反応がみられた。一方、夜間にTSST試験を実施した群ではコルチゾール濃度の有意な上昇はみられなかった。

 両群ともにコルチゾール濃度は朝方に高く、夜間に低いというリズムを示しており、心理的ストレッサーに対するHPA系のストレス反応は体内時計のコントロールを受けることが示された。また、TSST試験中は心拍数が高くなっていた。
夜間にストレスに対して弱くなるメカニズムが判明
 これらから、ストレス反応システムは昼間はHPA系と交感神経系が反応するのに対し、夜間は交感神経系のみが反応することが示された。コルチゾール濃度の低い夜間に心理的ストレッサーにさらされると、HPA系のストレス反応を得られず、生体の防御機構がうまく適応できなくなる。

 つまり、昼間はHPA系と交感神経系の両方が活発に働くため、これらの両方でストレスに対応であるのに対し、夜間は交感神経系のみになるので、多くの人は夜間の方がストレスに対して弱くなる。

 ストレスは少な過ぎても多過ぎても、体や心の不調をまねきやくなる。ストレスの受け方について、体内時計の働きを考慮しながらバランス良く活動することで、ホルモンの作用をコントロールできるようになると考えられる。

 今回の研究は、体のリズムが乱れやすい現代社会におけるストレスマネジメントや、ストレスを原因とする疾患の理解や予防に役立つ可能性がある。

 研究は、北海道大学大学院教育学研究院の山仲勇二郎准教授、よつ葉乳中央研究所の元島英雅研究員、内田健治研究員らの研究グループによるもの。詳細は日本神経精神薬理学会が発行する医学誌「Neuropsychopharmacology Reports」に発表された。
北海道大学大学院教育学研究院
HPA axis differentially responses to morning and evening psychological stress in healthy subjects(Neuropsychopharmacology Reports 2018年11月27日)
[Terahata]

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