2018年10月18日
全身持久力を向上させ高血圧を予防 「身体活動基準2013」で検討

厚生労働省が2013年に策定した「健康づくりのための身体活動基準2013」で設定されている全身持久力の基準を6年間で3回以上達成していると、20年後に高血圧を発症するリスクが低下することが、東北大学の研究で明らかになった。
ウォーキングやジョギングなどで全身持久力を高く保つことが効果的であることがあらためて示された。
ウォーキングやジョギングなどで全身持久力を高く保つことが効果的であることがあらためて示された。
高血圧による社会的負担は大きい
高血圧の総患者数は2014年時点で1,010万人を超える。治療や管理では患者に負担がかかり、高血圧による社会的負担も大きい。高血圧を予防することが重要なポイントだ。
全身持久力とは長時間、一定の強度の運動を続けることができる能力のこと。
高血圧を予防するために、ウォーキングなどの運動によって全身持久力を高く保つことが有効だと考えられている。
厚生労働省が2013年に策定した「健康づくりのための身体活動基準2013」では全身持久力の基準が示されているが、どの程度の全身持久力を、どのくらいの期間、高く保つ必要があるのかは不明だった。
関連情報
全身持久力の基準を達成すると高血圧リスクが21%低下
そこで研究グループは、全身持久力を測定した男性を最大23年間追跡して、厚生労働省が「健康づくりのための身体活動基準2013」で設定している全身持久力の基準の達成回数によって、高血圧の発症リスクがどう異なるかを検討した。
対象となったのは、追跡開始時点およびそれ以前に全身持久力を測定した高血圧ではない男性6,653人。
その結果、追跡開始時に基準を達成していたグループは、達成していなかったグループと比較して、高血圧の発症リスクが21%ほど低下することが示された。
また、追跡開始以前の6年間における基準達成回数(年に1回測定)を算出し、高血圧の発症リスクを比較した(0回〜7回)。
基準の達成回数が多ければ多いほど、高血圧の発症リスクは低い値を示した。さらに、基準を達成した回数が3回以上になると、高血圧の発症リスクに明確な違いが認められるようになったという。

全身持久力は有酸素運動で高められる
「全身持久力」体力を構成する要素のひとつで、持久力やスタミナなどと呼ばれている。ジョギングやウォーキング、サイクリングなどの有酸素運動によって高めることができる。新体力テストではシャトルランニングが全身持久力の測定項目となっている。
「『健康づくりのための身体活動基準2013』を運動指導に役立てるのは効果的だ。この基準でで定められている全身持久力の基準を継続的に達成することが高血圧の予防につながる。具体的には、6年間で3回程度達成するのが目安となる」と、研究グループは述べている。
研究では、高血圧などの生活習慣病を予防するために、運動で全身持久力を向上させることが有効なことがあらためて確かめられた。保健指導などの現場で役立つ重要な成果だ。
研究は、東北大学大学院医学系研究科の門間陽樹講師と同大学院医工学研究の永富良一教授(兼・大学院医学系研究科)が、東京ガスおよび医薬基盤・健康・栄養研究所と共同で行ったもの。詳細は医学誌「Journal of Hypertension」(電子版)に掲載された。
東北大学大学院医学系研究科健康づくりのための身体活動基準2013(厚生労働省)
Frequency of achieving a 'fit' cardiorespiratory fitness level and hypertension: a cohort study(Journal of Hypertension 2018年9月17日)
[Terahata]